(2017年7月1日)
前回(9回目6月20日)ではボロロ族Kejara村落の集合屋と個々の家屋の配置を述べた。集合屋が中心に置かれ、その周囲を円周状に26の家族屋が取り囲む。この配置が彼らの社会階層を表しているのだが、この村自体はかつて栄光のボロロ村落を再構築した結果である。その栄光期にはボロロ村落は人口1000人を越していた。支族集団、階層はレビストロースがKejaraで観察した以上に複雑であると思われる。悲しき熱帯の記述をとおして人口1000人をモデルケースにしてボロロ村落を再現すると;
写真はKejaraの集合屋。平面は方形で屋根の流れが直線。これはサレジア会がボロロを改宗させようと村落を破壊して後に、ボロロ社会の再構築作業で再建されたための簡易屋(Neo-Brasilian形式と著者は皮肉る)。本来は楕円形の屋で、その屋根の流れは放射状にカーブして地に接するという手の込んだ大型建造物だった。=LeCrutetleCuitからデジカメ化)
村落を川側と山側に2分割する。中央に集合屋を置くのは変わらず周辺の家族屋は3重の円で取り囲む。川・山側の半円をそれぞれ放射状に4分割する。分割された開きかけの扇状の地区を4のクラン(支族)のうち1が占拠するが、3重の家屋群から中心に近い側から上流、中流、下流の階層が住み着く。4のどの支族も川側(Tugare),と山側(Cera)に住み分けるから8の支族集団となる。住み分け分割でどの家族(すなわち個人)も24の支族と階層で規定される。TugareにすむA支族(色の名で分けられている)の上流、Ceraに住むD支族の中流などと。結婚の相手は同じ氏族階層の別の地区(TugareはCeraに、あるいはその逆)から選ぶ。人口が1000人であれば一つの集団は約50人の構成となる。家族屋は5人ほどの収容なので一集団に10の家族屋が集合する事になる。家族屋に住むのは日本で言う核家族に近い。夫婦と子供、前世代。すると子供は二人程か(住むとしたが夫と年長の男子は集合屋に寝泊まりする)。すなわち20人の(0歳から20歳位まで)集団が20人の集団から配偶を選ぶ。これは必ずしも年頃の配偶者を選べない場合が多い。となると1000人のケースでは不安定で1500~2000がかつて、マトグロッソに白人入植者が入り込まなかった時期のボロロ村落といえるか。
これを日本と比較すると183の村があって最大人口39500から最小18までに分布する。その中央値の帯域(90~110位)が2000人の構成であるのは興味深い。
この村落はボロロ族の社会自然信仰をそのままに形態化しているとレヴィストロースは語る。その信仰とは(270~272頁から)
1 細分割された社会構成は永遠
2 その中をうごめき、往来する(人、動物、植物など)
3 人は魚から生まれ、死の後は鳥(Arara,野生のオウム)に生まれ変わる。人としてはその生の一形態である。すなわち川側(魚)のTugareで生まれて山側のCeraで死ぬ(オウム)。
4 人として生きる間は個人として特定されているが、死の後は個人としての特性は消える。
5 この世界のすぐ脇に死者の世界がある。天候宇宙、精霊、超自然、そして集団としての死者(オウムに形を変えた)が住む。
ここでの人とは男のみ。女には生まれの由来と死後がない。女は死ねば空気に蒸発するのみ。
この世での(男の)個性とはその生まれの場所、支族、階層に起源を持つ個性。日本語での「あの男は個性的だ」と語られるその「個性」とは異なり「Tugare生まれのA支族の上流の出身のあいつ(誰しも個人名を持つが、それは秘密で日常は使われない)出自の良さ通りに勇敢だ」と語られるから、出自に関連させた個性である。レヴィストロースはこれを「持って生まれた財産」と伝えている。
猿でも構造、悲しき熱帯を読む 10の了 (次回は7月6日を予定)
前回(9回目6月20日)ではボロロ族Kejara村落の集合屋と個々の家屋の配置を述べた。集合屋が中心に置かれ、その周囲を円周状に26の家族屋が取り囲む。この配置が彼らの社会階層を表しているのだが、この村自体はかつて栄光のボロロ村落を再構築した結果である。その栄光期にはボロロ村落は人口1000人を越していた。支族集団、階層はレビストロースがKejaraで観察した以上に複雑であると思われる。悲しき熱帯の記述をとおして人口1000人をモデルケースにしてボロロ村落を再現すると;
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/f4/82c3383906311411fea3f58a07c31272.jpg)
村落を川側と山側に2分割する。中央に集合屋を置くのは変わらず周辺の家族屋は3重の円で取り囲む。川・山側の半円をそれぞれ放射状に4分割する。分割された開きかけの扇状の地区を4のクラン(支族)のうち1が占拠するが、3重の家屋群から中心に近い側から上流、中流、下流の階層が住み着く。4のどの支族も川側(Tugare),と山側(Cera)に住み分けるから8の支族集団となる。住み分け分割でどの家族(すなわち個人)も24の支族と階層で規定される。TugareにすむA支族(色の名で分けられている)の上流、Ceraに住むD支族の中流などと。結婚の相手は同じ氏族階層の別の地区(TugareはCeraに、あるいはその逆)から選ぶ。人口が1000人であれば一つの集団は約50人の構成となる。家族屋は5人ほどの収容なので一集団に10の家族屋が集合する事になる。家族屋に住むのは日本で言う核家族に近い。夫婦と子供、前世代。すると子供は二人程か(住むとしたが夫と年長の男子は集合屋に寝泊まりする)。すなわち20人の(0歳から20歳位まで)集団が20人の集団から配偶を選ぶ。これは必ずしも年頃の配偶者を選べない場合が多い。となると1000人のケースでは不安定で1500~2000がかつて、マトグロッソに白人入植者が入り込まなかった時期のボロロ村落といえるか。
これを日本と比較すると183の村があって最大人口39500から最小18までに分布する。その中央値の帯域(90~110位)が2000人の構成であるのは興味深い。
この村落はボロロ族の社会自然信仰をそのままに形態化しているとレヴィストロースは語る。その信仰とは(270~272頁から)
1 細分割された社会構成は永遠
2 その中をうごめき、往来する(人、動物、植物など)
3 人は魚から生まれ、死の後は鳥(Arara,野生のオウム)に生まれ変わる。人としてはその生の一形態である。すなわち川側(魚)のTugareで生まれて山側のCeraで死ぬ(オウム)。
4 人として生きる間は個人として特定されているが、死の後は個人としての特性は消える。
5 この世界のすぐ脇に死者の世界がある。天候宇宙、精霊、超自然、そして集団としての死者(オウムに形を変えた)が住む。
ここでの人とは男のみ。女には生まれの由来と死後がない。女は死ねば空気に蒸発するのみ。
この世での(男の)個性とはその生まれの場所、支族、階層に起源を持つ個性。日本語での「あの男は個性的だ」と語られるその「個性」とは異なり「Tugare生まれのA支族の上流の出身のあいつ(誰しも個人名を持つが、それは秘密で日常は使われない)出自の良さ通りに勇敢だ」と語られるから、出自に関連させた個性である。レヴィストロースはこれを「持って生まれた財産」と伝えている。
猿でも構造、悲しき熱帯を読む 10の了 (次回は7月6日を予定)