(2020年2月12日)
日蝕月蝕や帚星などの天文異変に遭遇した先住民が、カネや太鼓を打ち鳴らし大騒ぎする土着行為は、民族誌などで世界各地の風習として報告されている。
日本書記にある「天の岩戸」伝説はアメノウズメが扇情的舞踊を披露し、神々の大笑いを誘って岩戸に隠れていた太陽(天照神)を引き出す伝承を語る。これも日蝕と人々の大騒ぎを伝えた一神話に分類するに無理はない。この風習を伝える文書資料では世界で一級である。
レヴィストロース著LeCruetleCuit生と料理の293頁に
>Chine, Birmanie, Inde, Malisie….シナビルマインドマレーシアに続けて南北アメリカを(こうした大騒ぎがあった)と挙げている<(日本書紀には言及していないが)
ヨーロッパに関してTite-Live(ティトウス、ローマ歴史家AD17年死亡)を引用し「つい近年まで大騒ぎの風習はヨーロッパ全域に残っていた。信心では狼が太陽(月)に食らいつくから追いはらうための騒ぎである」伝承分布の広範さを示している。
騒ぐ理由は怖れから来る。族民は太陽(月)が消えた後の地上の不毛を怖れている。
さらには、怖れも含む感情、それを喜怒哀楽と日本語は教えるが、基本的な精神のぶれを表す文言は民族言語に永く記憶される。そして、
言い伝えを残す文言として、レヴィストロースはフランス語から例証を引く。
Vacarme、およびCharivariは「大騒ぎ」の意味であるが、そもそもは天変地異に向き合った族民の混乱、怖れから発せられたと伝わる。Diderot百科事典ではcharivariを>Ce mot signifie le bruit de derision qu’on fait la nuit avec des poeles, des bassins…<ボウルや金だらいを叩いて一晩中、大騒ぎする風習と説明する(LeCruetleCuit生と料理292頁から孫引き)。
Vacarmeとcharivariは音韻が異なるから別系統の語源と見当をつけLeRobertを温ねると、vacarmeは北方に語源をもち「大騒ぎ」の意味。一過性ながら「集団としての意思表示」に騒音を立てるをと解釈した。
一方、charivariはラテン語carivaria(頭痛)を語源とし、頭が痛むほどの騒音の意。個人の一過性(かなきり声)をそもそもとしている。
(先のDidrot事典と意義付けに差が窺える。ネット事典などで調べるとcharivariの個人かなきり声の性格は薄れ、集団、継続性=一晩中=の意味として強いようだ)
いずれも予期もしない天文異変に遭遇した人々の怖れが源である。
「怖れ」は怒りに通じる。
地上の不毛の怖れ他ならない(前述)。こうした心情がヨーロッパ全域にかつて、紀元前後のローマ期の「少し前」まで、広まっていた。北方ガリア語系統と南方ラテン語が融合したフランス語に、由来は南北を異にしながらも相似した2の語が並んでいる。まさに言語の出自を伝えるようだ。2000年前のヨーロッパでは北も南を同じ風習があったと、この2語が教えてくれる。
日食月蝕の大騒ぎは古代、せいぜいローマ期までのしきたりで、今は廃れている。
時代が中世に移ってこのcharivari、vacarme大騒ぎは実行されていた。
原因は天体の異変からは離れ、社会風俗となった。期待されない「規定外の婚姻」に住民が大騒で囃し立てた。

図は広辞苑(無料引用ネットから拝借)ウワナリ打ち
Didrot百科事典に戻ると>aux portes des personnes qui convolent en segondes , en troisiemes noces, et meme de celles qui epousent des personnes d’un age fort inegal au leur>(同)
訳:再婚、再々婚する人物の戸に向かって一晩中軽蔑の騒音を立てていた。歳の差の激しい婚姻にも同じ仕打ち。
蝕に対しての大騒ぎの含意を踏襲しながら中世、近世には歓迎されない婚姻への囃し立てに移行した。
歓迎されないとは再婚以外に、歳の差の離れた婚姻、妊婦の花嫁ながら白い結婚(別人の夫)、少年(少女)の金のための身売り婚が上げられる(同293頁、VanGennep(フランス民族学者1873~1957年の著から孫引き)
また、
今風の用法として、交通麻痺で渋滞車が一斉に警笛を鳴らすなどがvacarme大騒ぎ例として使われる。渋滞に巻き込まれた運転者の群は一斉に「何とかしろよ」の共同意思が沸き立つのだろう。先住民の日蝕騒ぎと発生の原理が似通うから、この語を適用したと解釈する。
この現象にしてサルトル弁証法理性批判の用語を借りてSerialte「感情露出の連続性」と呼ぶを許してくれ。(レヴィストロースはこの用語を批判したが、社会現象を説明するに便利なので、このサルトル思考を拝借して、後の文につなげる)

前妻が後妻を囃し立ていじめる。中世までの風習。規定外婚姻への不同意。
日本では中世まで「ウワナリ打ち」なる慣習が残っていた。江戸期にも報告されるが、形態と手順が「儀礼化」している。元々は夫に縁切りされた前妻が、彼が再婚する「後妻」を囃し立て、いじめる習俗である。小筆はこの「ウワナリ…」をvacarmeに結びつけたい。いずれも「規定外」婚姻への不同意である。
では人々はなぜ「規定」外を嫌うのか。
この疑問までを前段として、以降に今の日本に見られるserialite(感情露出の連続性)の突発現象と規定外を結びつけたい。
すなわち;
1 天変地異への怖れに発する大騒ぎ(部族民日蝕の怖れ、フランスvacarme、天の岩戸)
2 規定外(vacarme、ウワナリ打ち)への不同意
3 令和の日本に顕著に見られる規定外交接への非難の大合唱
これらの起因をserialiteでまとめ、その上で令和精神風土の脆弱を探ってみたい。続く
日蝕月蝕や帚星などの天文異変に遭遇した先住民が、カネや太鼓を打ち鳴らし大騒ぎする土着行為は、民族誌などで世界各地の風習として報告されている。
日本書記にある「天の岩戸」伝説はアメノウズメが扇情的舞踊を披露し、神々の大笑いを誘って岩戸に隠れていた太陽(天照神)を引き出す伝承を語る。これも日蝕と人々の大騒ぎを伝えた一神話に分類するに無理はない。この風習を伝える文書資料では世界で一級である。
レヴィストロース著LeCruetleCuit生と料理の293頁に
>Chine, Birmanie, Inde, Malisie….シナビルマインドマレーシアに続けて南北アメリカを(こうした大騒ぎがあった)と挙げている<(日本書紀には言及していないが)
ヨーロッパに関してTite-Live(ティトウス、ローマ歴史家AD17年死亡)を引用し「つい近年まで大騒ぎの風習はヨーロッパ全域に残っていた。信心では狼が太陽(月)に食らいつくから追いはらうための騒ぎである」伝承分布の広範さを示している。
騒ぐ理由は怖れから来る。族民は太陽(月)が消えた後の地上の不毛を怖れている。
さらには、怖れも含む感情、それを喜怒哀楽と日本語は教えるが、基本的な精神のぶれを表す文言は民族言語に永く記憶される。そして、
言い伝えを残す文言として、レヴィストロースはフランス語から例証を引く。
Vacarme、およびCharivariは「大騒ぎ」の意味であるが、そもそもは天変地異に向き合った族民の混乱、怖れから発せられたと伝わる。Diderot百科事典ではcharivariを>Ce mot signifie le bruit de derision qu’on fait la nuit avec des poeles, des bassins…<ボウルや金だらいを叩いて一晩中、大騒ぎする風習と説明する(LeCruetleCuit生と料理292頁から孫引き)。
Vacarmeとcharivariは音韻が異なるから別系統の語源と見当をつけLeRobertを温ねると、vacarmeは北方に語源をもち「大騒ぎ」の意味。一過性ながら「集団としての意思表示」に騒音を立てるをと解釈した。
一方、charivariはラテン語carivaria(頭痛)を語源とし、頭が痛むほどの騒音の意。個人の一過性(かなきり声)をそもそもとしている。
(先のDidrot事典と意義付けに差が窺える。ネット事典などで調べるとcharivariの個人かなきり声の性格は薄れ、集団、継続性=一晩中=の意味として強いようだ)
いずれも予期もしない天文異変に遭遇した人々の怖れが源である。
「怖れ」は怒りに通じる。
地上の不毛の怖れ他ならない(前述)。こうした心情がヨーロッパ全域にかつて、紀元前後のローマ期の「少し前」まで、広まっていた。北方ガリア語系統と南方ラテン語が融合したフランス語に、由来は南北を異にしながらも相似した2の語が並んでいる。まさに言語の出自を伝えるようだ。2000年前のヨーロッパでは北も南を同じ風習があったと、この2語が教えてくれる。
日食月蝕の大騒ぎは古代、せいぜいローマ期までのしきたりで、今は廃れている。
時代が中世に移ってこのcharivari、vacarme大騒ぎは実行されていた。
原因は天体の異変からは離れ、社会風俗となった。期待されない「規定外の婚姻」に住民が大騒で囃し立てた。

図は広辞苑(無料引用ネットから拝借)ウワナリ打ち
Didrot百科事典に戻ると>aux portes des personnes qui convolent en segondes , en troisiemes noces, et meme de celles qui epousent des personnes d’un age fort inegal au leur>(同)
訳:再婚、再々婚する人物の戸に向かって一晩中軽蔑の騒音を立てていた。歳の差の激しい婚姻にも同じ仕打ち。
蝕に対しての大騒ぎの含意を踏襲しながら中世、近世には歓迎されない婚姻への囃し立てに移行した。
歓迎されないとは再婚以外に、歳の差の離れた婚姻、妊婦の花嫁ながら白い結婚(別人の夫)、少年(少女)の金のための身売り婚が上げられる(同293頁、VanGennep(フランス民族学者1873~1957年の著から孫引き)
また、
今風の用法として、交通麻痺で渋滞車が一斉に警笛を鳴らすなどがvacarme大騒ぎ例として使われる。渋滞に巻き込まれた運転者の群は一斉に「何とかしろよ」の共同意思が沸き立つのだろう。先住民の日蝕騒ぎと発生の原理が似通うから、この語を適用したと解釈する。
この現象にしてサルトル弁証法理性批判の用語を借りてSerialte「感情露出の連続性」と呼ぶを許してくれ。(レヴィストロースはこの用語を批判したが、社会現象を説明するに便利なので、このサルトル思考を拝借して、後の文につなげる)

前妻が後妻を囃し立ていじめる。中世までの風習。規定外婚姻への不同意。
日本では中世まで「ウワナリ打ち」なる慣習が残っていた。江戸期にも報告されるが、形態と手順が「儀礼化」している。元々は夫に縁切りされた前妻が、彼が再婚する「後妻」を囃し立て、いじめる習俗である。小筆はこの「ウワナリ…」をvacarmeに結びつけたい。いずれも「規定外」婚姻への不同意である。
では人々はなぜ「規定」外を嫌うのか。
この疑問までを前段として、以降に今の日本に見られるserialite(感情露出の連続性)の突発現象と規定外を結びつけたい。
すなわち;
1 天変地異への怖れに発する大騒ぎ(部族民日蝕の怖れ、フランスvacarme、天の岩戸)
2 規定外(vacarme、ウワナリ打ち)への不同意
3 令和の日本に顕著に見られる規定外交接への非難の大合唱
これらの起因をserialiteでまとめ、その上で令和精神風土の脆弱を探ってみたい。続く