蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

ムルンギン族体系の続き 一般化交換 7

2021年07月06日 | 小説
(2021年7月6日)レヴィストロース著「親族の基本構造、Les structures elementaires de la parente」からムルンギン族の親族体系を解説しています。
本書の引用文献はWarnerらの同族報告の民族誌です。発表は1937年とあります。80年を越す昔の報告で、部族民蕃神には元本を(ネットで)回覧する機会など持てないし、そもそもMurnginの検索でネットで何も引っ借りません。故にレヴィストロースの言い分をそのままありがたく頂戴するハメに満足するしか無いのですが:

1 8サブセクション4クラス(階層)の構成で、女を水平対峙のみで交換するとアボリジニ(オーストラリア先住民)にはありえない親族体系が出来上がってしまう。
2 それは女の限定交換、かつクラスの不安定性に集約される。
3 たすき掛け交換を「選択的」と解釈せず、水平交換と相互性を持つ形態とする。相互性をalterneと説明するが、意味は2者が互い違いに出現する。
4 8サブセクションとは4のクラス「発展型」であり、その視点に立てばムルンギン族もアボリジニに固有「女の一般化交換」(=このあたり、アボリジニの習俗を小筆は何も知らない、検証もできない)を実践していると証明できる。

以上の1~4がこれまでの流れ。前回に掲載した図が下に、


パワーポイント図を作成し、ここでは水平交換のサイクル2とたすき2をalterne(相互出現)式に合体させた。


起点が2あってまずはNgarit(a1)がBalang(b1=以下abcdで表示)に女を贈る。赤の実線黒の①です。青の破線②はb1がc2に子を贈る。③~⑧の流れを追ってください。これは水平交換サイクル2の流れを再現している。⑧でa1は子を貰う。流れが周回する意味とは8のサブセクションをすべて絡める。各サブセクションは嫁をもらって子を贈る、あるいはその逆を実行します。そのままでは嫁はいるけど子が消えた(逆も)のサブセクションのみとなります。a1が嫁を貰う起点が必要となります。ここでたすき掛けのサイクルを導入すると;
上の図、赤の破線赤の①から始まって、たすき掛けサイクル(その2)をなぞって女と子の移動が⑧まで続きます。
水平とたすきのハイブリッドの利点は;
1 嫁交換が一般化している(a1はb1に嫁を贈るが、貰うのはb2から)。この仕組みはどのサブセクションにも当たる。
2 子を交換し合うクラスが固定する(a1はd1とのみ子を交換する)。前回紹介した水平交換のみの構成では子を贈る方向でクラスが入れ替わる。
3 子の交換を限定とし女交換を一般化した。実はこれがアボリジニの体系です(度々述べるが小筆はアボリジニには知識がない)。水平たすきの相互性がムルンギンの特異を打ち破る手段です。そもそもともかく、特異が認められたら、特異ホイホイでマンセーする態度は科学ではない(Warnerら)。その奥に潜む見えないimplicite普遍を探るのが科学じゃー御大は小筆などの凡愚に科学とはなにかを諭している訳です。

上の平面図を系統図(下)に書き換えました

これは本書掲載の系統図(既出)

に該当します。この図はWarnerらの報告資料からレヴィストロースが再現した。一見して、あまりにも整然、水平とたすきが相互、並立している。見えないimplicite構造とは美しいのじゃ、なんとか(部族民も)再現したく心して、色々やったらこうなった。青斜め線が水平交換、黄色斜めはたすき掛けの流れ。ついでにもう一図:


元図の二通り(黒と赤)①~⑧を系統図にノンブル打ちしました。

ムルンギン一般化交換7の了(7月6日)続く









コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ムルンギン族体系の続き 一... | トップ | ムルンギン族体系の続き 一... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事