蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

新型コロナインフルについての私見

2020年03月19日 | 小説
2020年3月19日
部族民(蕃神)は昨年(2019年)6月15日付けでロンドンのコレラ禍を報告する著作「感染地図」(ジョンソン著、河出書房新社)を紹介した。その一節を引用すると


>ロンドン中央部、4の井戸が水を供給していた。市民の多くは「ブロードストリート」井戸からの水を求めていた。ソーホー住民はルバートストリート、あるいはリトルマルバラストリート井戸が近くても、遠くの「ブロード…」の清涼な水を求めていた(同書より)<
この井戸をコレラ菌が侵した。その経緯、被害の様は省くが市当局も市民も原因に思い当たるところがない。空気にしてはどんより澱んでいたとしても(汚物を窓から放り投げて「処理」していた)、それは昔から変わらず。しかしロンドンの市央、ブロード…近辺にのみコレラが猛威をふるった。
原因を解明しないまま、市民を引き寄せる「他の井戸よりも美味なブロード」…を閉鎖して(同地区に住む医師ジョン・スノウの尽力による1854年)、コレラは下火となった。
1854年の時点ではコレラの原因がバイ菌によるものだとは知られていなかった。細菌が発見されたのはパスツール(自然発生説を否定、1870年)をへてコッホ(特定の病変と細菌の関連を証明した、1876年。コレラ菌発見は1880年)にまで時代をく下らなければならなかった。細菌説以前は「瘴気説」が世に信じられていた。
ここで「説」とはあるが言い伝えにすぎない。「悪い臭いが病気の原因」と盲目に信ずる迷信である。ブロード井戸の水は臭くないから病気の原因にはなり得ないーを信じた井戸周辺住民の22%、615人が死亡した(ネット百科より)。スノウは死亡者の発生マップを作成、ブロード井戸との関連を目視化し、市にしてこの井戸を閉鎖に持ち込んだ。
もしこの時に市議会なる制度があって、市の施策を監視していたら。
「市民に愛されるブロード井戸を閉鎖するなど以ての外。科学的根拠はあるのか」と野党議員が市長を糾弾したはずだ(幸い、市議会の発足はさらに後)。

感染地図。昨年6月に取り上げた時は「悪は外か内か」の観点だった。本投稿で科学的思考の2面を語り、一方のみの強弁は科学的ではない、これを考えた。

科学的の意味を「原因結果の確固たる因果証明」とすれば、スノウ医師には科学的根拠は無かった。さらにはコッホが細菌説を(科学的に)証明した後でも、細菌説の罹患実例が少ない19世紀後半では、瘴気説を信ずる者が多く存在した。
「ペッテンコーファーはコレラ菌単独ではコレラを発症させないことを証明するために自らコレラ菌を飲んだ」(1892年、朝日デジタルから)。彼は下痢で済んだが、同時にコレラ水を飲んだ弟子(氏名不詳)は死んでしまった。悪い空気、臭い水を病気原因とする信心はこの例で窺えるように根強かったのである。
市を説得するにスノウには感染地図しかより所が無かった。地図は「水とコレラ」の因果を示す「科学根拠」にはなりえない。
近辺には悪気(瘴気)を発生させる地下穴でもあって、それが原因だと否定されるかも知れない。そうした野党糾弾があったとしたらスノウの進言は却下されたかも知れない。すると600人台の死者で納まらなかったはずだ。

さて新型コロナ騒動をロンドンコレラ騒ぎに重ねと;
新型インフルに対しての政府対処は検査数を絞る、重篤者への手当を充実させるも2点である。背景に;
検査は手間がかかる上、信頼性が低い(信憑性は50%程度か、ネットから)。間違いは主に見落とし(悪を良とする)にある。
希望者全数を検査するキャパシティが無いし、それと整備しても治療的には意味がない(単なる感染者への治療法はない)に尽きるかと思う。なお、見落としの例は(現時点2020年3月19日)で韓国で発生した、若者の死亡(ネット情報)。

これに対して野党諸派は;

上記対策の「科学的」根拠はあるのかとなる(国会各委員会での野党質問要項を部族民蕃神が取り纏めた)。野党側の云う科学根拠の意味合いは
軽微感染者がその程度のまま自己管理で治癒する「科学的」根拠はあるのかとなろう。それらの多くが時間を経て重篤化したらパンデミックを起こすーの論理であろう。しかしこの論理は「科学的」ではない。若者が重篤化する紐つけが「想像」であるからだ。

「科学的」を振りかざすのは結構だが、それを「原因結果の確固たる因果証明」とすると間違いだ。この考えを分析的として、科学は分析のみで発達した訳ではない。とある原因がまだ見えない「結果」を引き起こすはずだ。この思考を弁証法(カントによる)あるいは演繹とすると、実は科学は演繹とその「証明」で発達したのだ。アインシュタインの相対性理論、ヒッグス粒子など好例はいくつも数えられる。
政府施策は今のところ(隣国、遠方国の死亡数字と比べて)期待された結果を出している。「科学的」演繹に導かれた対策が、その形勢を維持するを望む。

追記:信頼の置けない検査法がもたらす影響は計り知れない。それが見落とし(ネガティブフォールス=医療用語)であれば、その人は重症化する。なぜなら「検査結果では新型インフルではない」と信じ込むから医療機関に行かない、機関も入院させない(まさに韓国の例)。見過ぎ(良を悪とする、ポジティブフォールス)であれば大量に発生する「偽感染者」を不要に隔離する。これで医療は崩壊する。了

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