蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 19最終回

2019年03月02日 | 小説
(2019年3月2日)
本日投稿を持ち食事作法の起源」を読む(続き)の終りとなります。
本書「食事作法の起源」はレヴィストロース神話学第3巻です。主題は周期性(periodicite)の確立です。新大陸先住民の神話に「文化創造のために天空と文化、生活にそれが不可欠」との思想があまねく認められるとの指摘、およびその論証が本書の内容となります。本投稿は本年1月7日から開始しました。この「続き」は先の投稿「食事…」を読む(2018年10月22日~11月16日、本編とする)の継続です。本編では本書の前半、アマゾニア地域の先住民が思考する周期性をとりあげています。基準神話「狩人モンマネキ、M354Tukuna族」に発する南米各地の神話群、それらは「婚姻、生活に」未だ周期性が実現していない、未開の状況をも表しています。2018年11月12日投稿のモンマネキ神話での「周期性パラダイム」がまとめています。
「周期性」の未達、その希求の思考はAwarak、Carib族(アマゾン河口部)などを経由して北米に伝播して、大陸中西部プレーンズ、プレーリに居住するArapaho族など周期性に特化した神話として結実します。(レヴィストロースは先住民族の新大陸分布は北から南であろうが、神話伝播は南から北を主張する)
月に見そめられたArapaho娘が天上で舅姑と共に住み、家財什器服飾の作成と使用規則を伝授され、文化として下界にもたらした(M425星の妻、Arapaho族)。同時に女の周期性=月経=を女世界に伝えた(7回目1月25日投稿の手書き図「文化創造パラダイム」を御参照)。日夜の規則性は結婚して身を固めた月のおかげで確立し、野放図だった女共も規則性を確保することなって、文化の一翼を担えるまでになった。(それ以前、女とは文化にほど遠い様、大食らいや月経の垂れ流しを露呈していた、モンマネキ妻が例)。残るは人性と共同体の周期性が(神話的な意味で)喫緊となってきた。

写真:アカデミ会員に選ばれたレヴィストロース。会員になるには学問業績と運、定員制なので席が開かなければ選ばれない。あのデカルトは運がなかった。

レヴィストロースは2の切り口で上記の周期性を説明します。
1 序数詞の意味:先住民の多くが10進法を用います。
西洋(日本なども)では基数詞を序数に流用するやり方で10を、100をそれ以上を数える(un,deux,trois…イチニィサンシの数え方)。Un….もイチニ…も基数です。数量を表すために用いられる数でun(e) pommeイチ(個)のリンゴと順列からはずれても使える。序数詞とは順番の中でのみ使われ、その順位としての意味を持つ。西洋言語はpremier,secondまでは序数だが3以降では…eme(英語ではth)という接尾詞を付けて序数代わりにしている(troisiemeなど)。西洋の言語学者一部は、それでも印欧語族は序数詞が発達している言語と(負け惜しみ的に)論陳している(Wiki調べ)。日本語では古い数え方「チュウチュウ…」「ヒイフウミイ…」が序数詞と投稿子は述べた(先の投稿)
2 人をmi-partie、quadripartie(2分、4分の人性)として取り上げている(前回2月28日)。

なぜ序数詞と分割人間が周期性の確立となるのか。以下は尊師の思索を、行の外、文の隙間に目を通して解釈した投稿子の(おそらく間違いだらけ)説です。

1 序数が表すのは数量でなく思考である。10とまとまれば「力、まとまり、完結」を意味する。最終の順、兄弟10番目の末子には特に厳しい通過儀礼の試練を与える。例えば失った矢を10日で探す、あるいは「醜い老婆」を嫁にせよなど。それに打ち勝って、晴れて成員が10とまとまり、10の嫁を見つけ出せる。序数10を基礎として家族、村落が発展する。10に続くのが11、12となる基数での数え方には周期性はない、それは漸増式に増えるだけである。10で区切りをつけ、次の10に飛躍する周期性が文化であると先住民は思考している。

2 先住民の四季のとらえ方は夏と冬の繰り返しに乾燥期と雨期が加わる。これらが(日本の春夏…のように)順列として並ぶのではなく、共時性を持つ。夏とは乾燥でそれが終わって雨となる。これを雨期というかは知らないが、日照り、狩る動物の不在、作物の疲弊が乾燥+夏で、雷を伴う雨の襲来で夏+雨の季節となる。季節周期の多相性を人間の体が同期したのがbi-partie人間(男と女が同時)、さらに経時性(共時性を維持しながら夏から冬に移る)を加えたのがquadri-partie人間です。人の性状に天空の多相性を重ね、四季を同期させる。これをcode cosmiqueとレヴィストロースは規定している。

文化とは火と肉(狩り技法)から水と始まり、近親姦の戒め、同盟の模索と同盟相手への作法基準(婿の義務=prestationや食事では「腹はすいてない」と舅、妻らを優先させるなど)、そして周期性の確保に至り創造にこぎ着けた。神話学3巻までの道のりでした。

レヴィストロース「食事作法の起源」を読む(続き) 19の了
(次回予定:4巻目は「裸の人」、この最終章Finaleに4月から挑戦します)

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