鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

文透図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2011-01-24 | 
文透図鐔 古金工


文透図鐔 無銘 古金工

 時代が上がって古金工の鐔である。桃山時代であろうか、古風な意匠の六つ木瓜形に造り込まれた山銅地鐔。表面には古拙な魚子地と毛彫による唐草文が刻されており、木瓜を構成している六方に猪目と、丸に五方と六方の文が透かし施されている。この丸の中の樹枝状の文様をみると、雪の結晶を想定しているのではなかろうかと思える。桃山時代以前、視覚的には雪が六角形を基本としていることは判断できても、確たる法則をそこに見出しているわけではない。結晶学が盛んになるのは随分後のことだ。とすれば五角形の雪を表現しても、もちろんおかしくはない。雪の結晶を表現した時代の上がる作例として興味深い鐔である。□