鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

猿猴捕月図鐔 金家 Tsuba

2011-08-25 | 鍔の歴史
猿猴捕月図鐔 (鐔の歴史)

 最初に、歴史研究家に古文献を研究してもらい、金家の本質を見出してほしいものであると述べたが、もう一つ提案がある。金家の大きな特徴の一つに共鉄象嵌がある。金家鐔の高彫が象嵌によるものであることを明確にしたのは、レントゲン撮影によってであった。筆者も何点かの作品をレントゲン撮影してみた。確かに象嵌の技法が採られていることが判った。そこで考えた。
現今、様々な機器が発達し、物体の断層写真なども撮影ができるような状況になってきている。これを利用し、常には見えない象嵌の裏側がどのような処理をされているのか比較研究することにより、複数の金家の特定が可能になるのではないか。
 金家の作品を壊してまでその象嵌の裏側を見て真似ようとした偽作者はないだろう。壊すことを前提としなければ、見えない部分に気を使う必要はない。偽作と真作の違いは明確になる。それだけではない。代別による象嵌の処方の違いも明確になるのではないだろうか。
 金工作品の、象嵌が落ちた部分をご覧になった方もおられると思う。象嵌の落ちた内面には鏨の打ち込みが施されている例があることに気付いた方もおられよう。これを最新の機器を用いて、金家の象嵌を外さずして確認しようという魂胆である。ただし、費用がかかりそうである。判断が可能か否かは試してみなければ判らないのだが・・・どなたか、このような視点で研究してみようという方はいないだろうか。


猿猴捕月図鐔 山城國伏見住金家

 桃山時代の長谷川等伯の猿猴捕月図を見るような、丸みのある顔つきも似た図柄の作。木瓜形に造り込み、耳は打返耳、槌目を生かした地面は薄手、高彫部分の多くは象嵌。裏面は嵐山辺りを眺めたような遠見の塔を主題とする山水図。81.7ミリ。