鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

芦雁図縁頭 菊岡光行 Mitsuyuki Fuchigashira

2014-05-13 | 縁頭
芦雁図縁頭 菊岡光行


芦雁図縁頭 銘菊岡光行

 大徳寺養徳院の襖絵として遍く知られている同図を手本としたものであろう、鉄地高彫象嵌になる作。この組み合わせは、我が国の自然風景を良く捉えたものとして好まれたのであろうか、作品化されたものが多い。この作では、縁と頭は別の部分に備えられるものだが、こうして眺めてみると、縁の芦原の雁と、舞い降りようとしている雁との視線が合一し、しかも鳴き声が聞こえてきそうなほどに嘴を開けている瞬間を捉えている。

鴉図小柄 後藤  Goto Kozuka

2014-05-12 | 小柄
鴉図小柄 後藤



鴉図小柄 無銘後藤

 鴉を題に得た図では、太陽に向かって羽ばたく古代思想にもつながる意識を秘めるものと、このように、水につかっている図を多くみる。水浴びをしているようなものと、このように明らかに溺れている図があるのも面白い。「鵜の真似をする烏」は「猿猴捕月」と同様に自らの能力を知ることの大切さ、能力を超えた活躍を目論んで失敗しては多大な損益をもたらすということの教え。幕府としては、整然と並んでいる状況を壊してまで何かをしようとするものが出るより、多少窮屈であっても安定を望んでいたということの証だ。


女郎花に鵲図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-05-09 | 小柄
女郎花に鵲図小柄 堀江興成


女郎花に鵲図小柄 銘堀江興成

花鳥十二ヶ月図揃い小柄から七月 

花…女郎花
秋ならでたれにあひみぬをみなえし
 契やおきし星合の空

鳥…鵲
ながき夜にはねをならぶる契とて
 秋待ちたえる鵲のはし

 綺麗に澄んだ夜空に輝く星々。雲を描き、これに架かる橋を描いて心象的風景としているのは、鵲は天の川に翼を並べて橋をつくるという伝承があるからに他ならない。即ち七夕に通じる図である。

鵜飼図小柄 堀江興成  Okinari Kozuka

2014-05-07 | 小柄
鵜飼図小柄 堀江興成


鵜飼図小柄 銘堀江興成

花鳥十二ヶ月図揃い小柄から六月 

花…常夏
おほかたの日影にいとふみな月の
 空さえをしきとこなつの花

鳥…鵜
みじか夜のう河にのぼるかがり火の
 はやくすぎ行くみな月の空

 これも水辺の風景。自然の中の鳥の姿や人里に紛れ込んだ鳥を捉えたものではなく、飼われた鵜、その操られている様子。人の姿を描かず、篝火のみを添えて状況を演出している。岸辺には真夏の野を彩る、常夏とも呼ばれる撫子。

水鶏図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-05-02 | 小柄
水鶏図小柄 堀江興成


水鶏図小柄 銘堀江興成

花鳥十二ヶ月図揃い小柄から五月 

花…橘
郭公なくやさ月のやどがほに
 かならず匂う軒のたちばな

鳥…水鶏
まきの戸をたたくくひなの朝ぼのに
 人やあやめの軒のうつりが

 描かれているのは菖蒲咲く水辺の水鶏(くいな)の小魚を追う場面。水鶏の鳴き声はコンコンと戸を叩くように聞こえることから、待ち人の到来を思わせる罪なやつ、といったところか、しかも菖蒲の香りも漂わせて。