鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

三保松原に富岳図小柄笄 篤行 Tokuyuki Hutatokoro

2019-03-11 | 鍔の歴史
三保松原に富岳図小柄笄 篤行


三保松原に富岳図小柄笄 篤行

篤行は大月派の金工。これぞ三保の松原といった風情。小柄と笄にそれぞれを描き分け、並べることによって作品を完成させる。富岳の雄大な姿はもちろんだが、海原に無限に続いているかのような松原も魅力。

松原富岳図小柄 良次 Yoshitsugu Kozuka

2019-03-09 | 鍔の歴史
松原富岳図小柄 良次


松原富岳図小柄 良次

 良次は東龍斎派の金工。額縁効果を持たせた鐔が、東龍斎派の特徴の一つなのだが、この小柄においても額縁のような構成を試みて成功している。季節は冬であろうか、松の枝には雪が積もっているように感じられる。すんだ空気の中に聳える富岳の様子が、銀地一色ながら巧みに再現され、迫りくる絵画となっている。

松原富岳図小柄 明龍 Akitatsu Kozuka

2019-03-08 | 鍔の歴史
松原富岳図小柄 明龍


松原富岳図小柄 明龍

 三保の松原から眺める富岳図は古典的景観。たなびく雲に端雲、松原を象徴的に添え描いている。実際の景色としては、決してこのように見えるわけがないのだが、松原と富岳の組み合わせで自然と脳の奥の方で理解している。あるいは蜃気楼を意識したのであれば面白い。

松原富岳図鍔 吉村一啓 Ikkei Tsuba

2019-03-07 | 鍔の歴史
松原富岳図鍔 吉村一啓


松原富岳図鍔 吉村一啓

 一啓は後藤一乗の門人。同じ門の一琴同様に、甲鋤彫を得意としたようだ。薄肉彫に甲鋤彫という、立体的な高彫表現ではないにもかかわらず、富岳は迫りくるし、近景の松原も海風にざわついているように感じられる。後藤一乗一門に特徴的なこの描法は、墨絵などのような絵画的な画面を生み出す手法として好まれたようだ。

富士越龍図鍔 常真 Tsunezane Tsuba

2019-03-06 | 鍔の歴史
富士越龍図鍔 常真


富士越龍図鍔 常真

 すごいとしか言いようのない、迫力のある画面が魅力。しかも彫刻が精密。波を巻き上げた龍神が雲間を抜け、富岳に挑んでいる。雄大な富岳は龍神が自らを越えて天上へと駆け上がってゆく様子も待ち望んでいるかのようだ。対して裏面の穏やかな景色もいい。常真は筑後柳川藩の金工。作例は珍しい。

富士越龍図小柄 後藤光美 Mitsuyoshi Kozuka

2019-03-05 | 鍔の歴史
富士越龍図小柄 後藤光美


富士越龍図小柄 後藤光美

 後藤宗家十五代光美の力強い作品。龍神図は後藤家の伝統。雲や波も後藤家の作品には間々見られる。これらに富岳を組み合わせるとこうなる。美しくも力強い画面である。こうして眺めると、先に紹介した光理の雲は龍神を暗示しているかのようでもある。

富岳図小柄 後藤光理 Mitsumasa Kozuka

2019-03-04 | 鍔の歴史
富岳図小柄 後藤光理


富岳図小柄 後藤光理

 後藤宗家十二代光理は元禄ころが活躍期。古典的後藤の作風から離れ、このような個性的な作品も遺している。富岳の前にたなびく雲。美しいというより力強さが魅力。決して険しい山容ではないのだが霊山といった表情である。雲の持つ存在感、遠く連なる山裾による大地の存在感。すべてが迫りくる。

富岳図小柄 平田(七宝) Hirata Kozuka

2019-03-01 | 鍔の歴史
富岳図小柄 平田


富岳図小柄 平田

 七宝技術に加え、金や素銅などの金属を配して秋の色付いた木々の様子などを表現したもの。特に鮮やかな金線を巧みに配しているところが平田派の特徴。後に金線七宝と呼ばれるような、文様七宝の作風が定着してゆく。