酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

「究極のメニュー」「至高のメニュー」そして「酔漢のメニュー」その四 旬

2013-03-18 10:04:07 | ああ宮城県な話
「旬」。魚介類や蔬菜(そさい)・果物などの、最も味のよい出盛りの時期。
食品を販売する事を仕事としております。
ですから、この言葉の重みを受け止めてはいたい。ですが、そうはならない事情もあります。
野菜であれ、肉であれ、魚であれ。
大量に販売しなくては、その消費量に追いつかない。これが今の小売業の現状でもあります。
「秋刀魚」当然、旬の時期は秋口。
三陸沖にサンマが下降し、漁場が陸から近くなる。しかも、太ったサンマは、美味しく、大量にいるものだから、安価です。
庶民の味。秋の味覚です。
ですが、今、量販店では、「解凍さんま」と称して、年中購入可能です。
これ素晴らしい技術でして、焼き魚にするには、十分に味覚は耐えられます。
でも、考えてしまう。
やはり「旬」で味わいたい。こう思います。

「岩出山納豆」の写真です。
今は伝統的な「つと納豆」は製造されておりません。
衛生法の問題と原料となる藁の不足、そして何より、高齢化による後継者不足。
この納豆一つを取りましても、多くの問題を抱えている事実です。
本題に戻りましょう。
これらの問題を語る「くだまき」ではございません。
ここに「岩出山納豆」を事例にしましたのは、やはり「旬」というキーワードからです。
岩出山納豆が作られる(製造される)時期があるのは案外知られておりません。
10月~翌年の5月ごろまでと決まっております。
自然発酵させる。これにこだわれば、納豆にも旬があるわけです。
夏の間は、これも岩出山名物「酒まんじゅう」に変わります。
納豆は冬の食品。
これは、日本人が忘れている事ではないか。
先の震災では、納豆の大幅な供給不足になりました。
これは電力供給が安定しなかったことが大きな要因でした。
納豆を発酵させるには、常に一定の温度管理が必要です。ですから24時間、電力を消費せざるを得ません。
納豆ばかりではなく、全ての「発酵食品」にそれが言えます。
「ヨーグルト」は最たるもの。
やはり、供給不足となりました。
「サンマの冷凍技術」「納豆、ヨーグルトの発酵技術」。
これは全て、旬というものを忘れさせる材料というミクロ的な見方が出来るわけです。
(ありがたい、部分はありますし、否定する「くだまき」ではございません)

「美味しんぼ 宮城編」へ。
この場面を見て頂きたく、写真を掲載いたします。

これは、丸森町(旧)で、ある鮨屋(現存します)で、「サンショウオの鮨」に驚く場面です。
(これが、宮城の食材と言われれば、そうではないのですが、私は食した事はございません。これがあるとは、この漫画で知りました)
「サンショウオの鮨」は、取り上げるつもりは全くなくて、その一番左下のコマを見て頂きたいのです。
主人公、他、半袖です。
この取材が「夏」であることの表れだと考えます。
「夏の宮城の旬」。
酔漢のソウルフードと言っております「海鞘」(ほや)が、真っ先に思い浮かばれます。
「美味しんぼ」では、その海鞘をサラダとして紹介しております。

酔漢的には「このまま」がやはり美味しく感じます。
これはこの場面でも紹介されておりますが、「酔漢メニュー」をご紹介いたします。
海鞘は新鮮さが何より命です。
海鞘の捌き方は、突起の部分と、根の部分を切り落としてから、根の方へ包丁の切っ先を入れて上の方へ向けて革(殻)を咲きます。
指を切れ目に入れて、一気に革を剥きます。中から身を取り出します。
身にわずかに包丁を再び入れて(切れ目をつける感じで)中から内臓の一部を取り出します。
すると、中から糸状となった老廃物が出てきます。
これを丁寧に流水で洗い流します。その祭、身の表面をも流水で洗います。
腸炎ビブリオ菌は海水内には大量に存在します。当然、魚介類の表面に付着しております。
ですが、水道水で洗い流す事で、ビブリオ菌は死滅致します。
これでOKです。
この場面には、海鞘の殻を、皿に盛っておりますが、この中、外とも相当洗いませんと、身にビブリオ菌がつく事になります。
見栄えはおいしそうなのですが、酔漢は、別な器にしたいところです。(相当洗えば解決致しますが・・・)
さて、よく「海鞘酢」とか申しまして、「酢のもの」で召し上がる方がいらっしゃいますが、酔漢流は調味料を使用しません。
これは危ないのでお勧め致しませんが、海鞘に一番合う調味料はと申しますと、海水なのです。
剥きたての新鮮な海鞘を海水に着けて召し上がる。これが一番うまい!
ですから、海水を作ります。
「塩竈藻塩」を、水に戻して、海水と同じ濃度にして、これを付けだれのようにする。
これが、酔漢流、海鞘の美味しい食べ方。
時たま、懐かしくなって、住んでいる近所で海鞘を買い求めますが、味は数段落ちますし、これは、初めての方にはウケが悪い。
「ゲテモノ食材」になりかねません。
新鮮なものに限ります。

「美味しんぼ」へ続きます。
そう、夏であれば「海鞘はあり!」です。が、しかし、納得しかねる場面が出てきます。

先の震災で大きな被害を受けました、「亘理」「山元」。
ここの名物は、冬の味覚「北寄貝」(ホッキ貝)です。
父が「ほっき飯」が大好きで、塩竃からわざわざ車を走らせて、亘理まで行き、「ほっき飯」を食べに行っておりました。
この「くだまき」の第一回に「陸前三大海鮮飯」と酔漢が紹介しておりますが、その一つが「亘理、山元の『ほっき飯』」なのです。
閖上の「赤貝」は鮨ねたとしても高級食材。そして、この「北寄貝」も全国有数のものです。
北海道のものより、身が厚く、香も濃厚。
「宮城の冬の名物」の一つなのです。
皆様、お気づきななられたかと存じます。
「ほっき料理」は冬にしか味わえないものなのです。
「陸前三大海鮮飯」とは、酔漢が勝手に名づけました。ここで、その答えなのですが、こうなります。
「はらこ飯」「ほっき飯」「かき飯」これを、陸前三大海鮮飯といたしました。

「ほっき飯」がメニューに載りますのが、「3月半ば」までです。
親父が通っていた亘理の食堂では、「ほっき飯」を冬の定番。「はらこ飯」をそれ以外の季節に提供しております。
(津波の被害にあって店が再開しているかどうか、そして店名を失念しております。申し訳ございません)
海鞘を食した後翌日に北寄貝は、あり得ないロケーションなのです。
さらに、冬にしか味わえない魚が登場致します。

どうしてもここで紹介されている「虹かじか」という魚が分りませんでした。
調べますと「淡水魚」でこうした呼び名の魚がいることは解りましたが、ここで紹介されておりますのが「ぼっけ」ではないかと推察いたしました。
宮城県七ヶ浜町では「ぼっけ祭」が毎年11月に開催されます。
これは、陸前独特の食べ方と言いますか、他ではあまり食されない魚です。
ですが、七ヶ浜では、これが名物。
「ぼっけ汁」は、冬の味覚として、実家ではよく出されておりました。
宮城県のパンフレットにもこう紹介されております。

「ぼっけ鍋」とあって、「ケムシカジカ」と紹介されてます。
この魚の旨さは、何と言ってもその「肝臓」になります。
「小さなフォアグラ」に匹敵すると酔漢は思っております。「鮟鱇」よりはあっさりしており、ですが、香は鮟鱇のものより数段上。
果たして、これも冬の味覚と相成ります。

誤解なさらないで下さい。
「この劇画が旬を全く無視している」という事で「くだまき」を語っているのではありません。(何を今さら!って?)
宮城の食材を、満弁なく掘り下げるのには、時間的、空間的に無理なのでしょう、これは酔漢としても承知いたしておるところです。
ですから、例えば「この食材はいついつが旬」と一言、登場人物に語らせてもいいのではないか。
こうした思いが強い。
先に「至高のメニュー」として海原雄山は「かて飯」を提案しております。
写真の掲載は控えますが、その中身はこうです「ずんだ飯」「わかめ飯」「大根飯」「フカヒレ飯」「もずく蟹飯」。
これを季節で整理致します。
「ずんだ飯」→夏。「大根飯」→冬。「フカヒレ飯」→秋~冬(気仙沼のマグロ延縄漁が行われる次期と一致させて)「もずく蟹飯」→秋から初冬。(海で産卵するため夏は無し)
こうした図になります。
特に、「もずく蟹」は、海と川を往復するので、夏は絶対にありえない食材です。
(注、よほどではないと、自前で作らないと、食べられないものです。おそらく、出している料亭他あるのでしょうか。少なくても、宮城にはありませんでした)
このように、「究極のメニュー」「至高のメニュー」とも「宮城の旬の食材」という視点には欠けております。(先も申しましたが、時期=食材の旬 を案内できなかったものか・・)
果たして「酔漢のメニュー」は何時にするのか。
この語りで「海鞘」を「酔漢メニュー」としてご紹介いたしました。
実は、「酔漢のメニュー」をご紹介したのは、この海鞘が初めてです。
という事は・・・・。
冬にいたします。
「酔漢のメニュー」は「冬」がテーマとなります。
迷ったんですよぉ。だって「秋刀魚」も「ずんだ」も、おいしい食べ方があるんですから・・・・。

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1 コメント

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郷土のうまいものご照会ありがとうございます (ひー)
2013-03-21 16:42:26
亘理、山本町は、漁場の瓦礫の撤去が進まず、今年のほっき貝は残念ながら北海道産を販売していました。
やっと国の支援で海底の瓦礫撤去が本格的に始まりました。やっと今です。

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