酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

師匠・・・・・逝く

2011-11-24 08:30:09 | 落語の話?
この時期、仕事が忙しくて「くだまき」を語る時間がありませんでした。
その間、コメントも多数頂戴し、返礼を返すこともできずに申し訳ございません。
出勤前の時間です。
寝ている際、ぼーーっとしている頭に飛び込んでまいりましたのが「立川談志師匠の死」でした。

「もと・・・沖縄開発庁・・せいむじかん・・・?おい!どんな時間だった?・・うーーん・・まぁ。『そんな時間もあったぁ』なんてねぇぇ・・」
続きます
「そんなじかんに・・上野にでも出ようなんてぇ・・考える長屋の連中。よってたかって『花見』の算段。やっぱりねぇ、そりゃ長屋だ」

歯切れの良い間。
独特の声色。

「野ざらし」は「春風亭柳橋師匠」の十八番。その上品な出来具合と違った「談志師匠」のとっかかり。
ご隠居の家、扉を叩くところを省きます。
いきなりこの出だし。

「どうしたんだい?八っつぁん?ん?・・朝から・・大変はご立腹だ・・・」
「ご立腹だぁぁ!ふざけやがって!おい、ゆんべのこれ(女を指します。指立てる師匠です)あらぁどっから連れてきたんだ!おい!」

中学生の頃。「野ざらし」はリズムで聞かせる古典だと。師匠のを聞いてそう思った、いや、これまでの概念を覆されたような気がいたしました。

仙台与太郎物語 スチャラカチャン 前編 仙台与太郎物語 スチャラカチャン 後編

この時期、師走に入りますと、必ず、聞きます「芝浜」
「桂三木助師匠」のこれは十八番。
「談志師匠」はこれも崩しにかかります。

「勝五郎(主人公。魚屋主)はねぇ、あんな真面目な奴ぁいねぇんだぁなぁ。だけどさぁ、真面目が服着てあるいてちゃぁ面白かぁねぇんだ。そうじゃなくて・・そのぅ・・真面目過ぎて、何かのきっかけで、仕事さぼっちゃったら・・・もう仕事できなくなっちゃった。これだけなんだよなぁ。ただの酒好きだけじゃぁダメなんだ」

「おっかぁぁ・・すまねぇ・・・すまねぇ・・おっかぁ。俺ぁ・・・・俺ぁ・・・・すまねぇ・・・おっかぁぁ」(何度も頭を下げる。何度も)
芝浜の途中。五十両が夢だと信じ込まされた場面の勝五郎。
「おっかぁ・・・死のう・・か・・」
「何言ってのさぁ!もう情けないねぇ。お前さんが本気になって商いすりゃぁ、あんな借金なんてすぐ返せるじゃないか」

歴代師匠は「借金」とか、具体的には語りませんでした。
この言葉を用いることによって、より切迫感が伝わった。そんな感じがいたしました。

「おっかぁ、えれぇ!えれぇなぁ・・おっかぁ。俺なんかよりよっぽどえれぇやぁ・・・許すも許さねぇもねぇ・・俺ぁこうやって頭下げてんだ・・ありがとう・・おっかぁ」

五十両が帰ってきていて、これまでの話しが夢だと思っていた勝五郎が、本当の事を話されたときの会話。
この場面から泣けてきます。
師匠も泣かんばかりの演技。
「女性の噺は、談志はあまり・・・あの声だし」という輩多々。
ですが、そのハンディなんて関係ありません。
これが、このかみさんが、師匠なのです。

「東橋から吉原の方に夕日。その赤い色が目に染みる。いや染み過ぎていた」

「鼠穴」の状況を語る場面。
娘を遊郭へ売った金をすられ、途方に暮れる。
酔漢、師匠の大作の中で「一番印象に残る」この「鼠穴」でございました。

仙台与太郎物語 兄弟というものは その一
仙台与太郎物語 兄弟というものは その二
仙台与太郎物語 兄弟というものは その三

東北学院大学「快亭枝現君」の熱演でした。
「談志師匠の噺を何べん聞いたことか知れません」
彼はこう話しておりました。

多くの、噺を談志師匠で聞きました。
正直「これは・・やりすぎでは」と思ったこともございました。
ですが、どうしても、聞いてしまう。そして、歴代の師匠にはない「話のもって行き方」に引き込まれもするのでした。

「野ざらし」も「芝浜」も「鼠穴」も実際に演じたのを、拝見しました「柳家小三治師匠」でした。
「先代小さん師匠」では兄弟弟子であるのでしょうが、噺の違いに驚きます。
談志師匠、小三治師匠。凄みには変わりありません。

カセットテープを擦り切れる程、師匠の噺を聞きました。
師匠のおかげで、高座に立つことも出来ました。
大きなものを失った。そんな気がいたします。

仙台市内「やきとり総本家」
談志師匠が仙台にまいりますと、必ずお立ち寄りになられる場所でした。
「円楽がなぁ、最近寝られなくてさぁ。薬薦めたんだけど・・・奴の命が短かったら、俺の責任にもなるんだよなぁ・・大丈夫かねぇぇ・・」
心配しているのやら、そうでないのやら・・・。
お二人で、どのような会話をされるのでしょうか。

「お待ちしておりましたぁぁ・・ヨ『だんしがしんだ』なんてぇね」
「俺の冗談とるんじゃねぇよまったく。これは、俺が生きてる間にさんざん言ってたんだ。お前さんが勝手に先に行ったんだろ!いなくなってせいせいしてたんだよこっちは。また一緒かよ。しょうがねぇなぁ」

立川談志師匠のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
師匠の噺を決して忘れることはございません。
ありがとうございました。

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2 コメント

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ダンシガシンダ (おばらあつひろ)
2011-11-30 22:08:30
存在そのものが落語…そう言える最後の噺家なのかもしれません。
(噺そのものはロクに聞いたこともないくせに言うのも何ですが…)

著作・エッセイも数多し。
あの文章に惹かれました。

何が何だか、ワカラナイ…。
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おばら様へ (酔漢です)
2011-12-01 08:26:16
魅力は?と聞かれますと。
新しい噺というよりは、古典を語る師匠にひかれます。
「鼠穴」は本編でも語りましたが、「小三治」師匠と談志師匠では、主人公の兄貴の描き方が違うことに気づきます。
どちらがいいのか。
好みというしかないのですが、師匠を同じくして解釈の違い、表現の違い。
落語の奥深さかと思います。
お久しぶりでございました。
寒いでしょうか。
雪、振りましたか?
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