酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

ロイヤルの経緯そして究極

2008-10-13 10:46:57 | ブレンディッドウィスキーの話
「酔漢さん、やたらお酒に詳しいなや。お酒のスタッフさぁなったらいいんでねぇ」とジョングリ(渾名です)君。
「仕事さぁしたら楽しめねぇっちゃ。今のポジションでいいんだすぺ!」
場所は、有楽町ガード下のごった煮?バー。(一度お尋ね下さい。東京のエネルギーを最も感じるところです)
呑んでおりますのは、彼が「グレンファークラス」(→サッチャーさんお得意なシングルモルト。スペイサイドで一番でかいポットスチルで蒸留しております。爽やかなクセの無いモルト。おためしあれ!この「105」はシングルモルトで一番度数が高い60度。酔漢も火を吹きました!)酔漢は「ボウモア15年」です。
ジョングリ君(そうそう「ジョン・グリーランド」と言います)アイラはお好みではないようです。
「酔漢さん、なして、日本人は『アイラモルト』が好きなんだべ?」
彼がいつも言うセリフです。
「んだども『ラガ・ヴーリン』とか『アードベック』は苦手な奴がいっちゃ。『気の抜けたコーラとヨードチンキを混ぜたような味』→これを英語で説明するのに難儀しましたが、通じた後、奴は大笑いでした。→って話すのもいるっちゃ」
「スコットランドのバーでも、わざわざ注文する奴はいねぇべさ。『泥炭の味』って言われるんだっちゃ」
なるほど、「泥炭の味」か。と、ひとしきり感心。
僕らは、焼き鳥(これも何故か彼の得意分野。なんでも日本料理の最高傑作だとかのたまっております。寿司はどうしたぁぁ)を食べながら、しばしお酒の話に戻ります。(他のスタッフもいるのですが、僕らが酒談義を始めますと、みんなソッポ向きます・・・通訳さんもいるのですが・・)
「日本とイギリスでしか呑めねぇ酒あんの知ってるすか?」とジョングリ君。話を振って来ました。
「『ロイヤル・ハウスホールド』だっちゃ。二回しか呑んだ事はねぇんだけんど、うめぇ酒だっちゃなや」
「世界で飲めるところが3箇所だっちゃ。『バキンガム宮殿』『ハリス島のローデルホテルのバー』そして『日本』だべ」
「そいずは俺も知ってたっちゃ」
ジョングリ君。日本に赴任して何が最初にしたかったかと申しますと「『ロイヤル・ハウスホールド』呑む事」だったんだそうでございます。
「酔漢さん、なして日本なんだべか?」
良くぞ聞いてくれた。「ジョングリ。二重丸けっと!」(青葉繁れる→チョロ松のセリフだっちゃ)
そうなんです。販売が許されておりますのは「日本だけ」なのです。
そりゃそうですよね「バッキンガム宮殿」の中にお店があって、旅行者向けのためのお土産屋さんなんて絶対にありえませんし。「ローデルホテル」のバーなんて、一生かかっても無理。お金があっても、あのホテルへは行けません。格式と伝統という防潜網が張られております。では、どうして、僕らはこのお酒を呑めるのでしょうか。
これは(あのー一言です。「主義・思想・政治」は語らない。話題にしない。作らない。の三原則を遵守しております。誤解のなきよう・・)現天皇陛下のおかげなのでした。
天皇陛下が皇太子時代に、イギリスへ留学されました。その際お土産としていただきましたのが「ロイヤル・ハウスホールド」(「ザ」がついてない?後程語ります。お待ちあれ)を頂きました。そのお人柄に触れた「ブキャナン社」がこの時、「日本での販売許可」を許したのでした。
「お金だしても呑めなぇ酒だっちゃ。日本人は幸せだべ」彼しみじみ。
と、突然、彼の目が光まして、「ニヤ」と笑いました。
なんなんだ、この間は?きもちわりい!
「この酒実は二種類存在してたって知ってました?」
何おぉーーーー。そんな話聞いたことねぇ!
「なにっしゃ?なして?」
「酔漢さんの飲まれたのは『ロイヤル・ハウスホールド』だと思うんだべ。でもう一つは『ザ・ロイヤル・ハウスホールド』なのっしゃ」
「どこが違うのすか?」
「多分、『ザ』のほうが古いんでねぇのすか?そして、蒸留所と販売元ボトラーズがちがうのっしゃ」
「蒸留所って言っても、核モルトは『ダルベニー』(ハイランドモルト→スコットランド政府公認の測候所が蒸留所の中にあるんです。不思議。大麦の香が残る、軽快な風味が特徴です)と『グレンファークラス』(スペイサイドモルト→この話の最中にジョンが呑んでいるお酒。フルーティーな香はシェリー樽で10年以上熟成させているからだと思うのです)だっちゃ。ブレンドもグレーンを含めて45種の原酒ブレンドだっちゃ」
「話に聞くとラベルそのものも違うのしゃ。『THE』のほうが英国王室の紋章。もう一つが『ブキャナン社』の紋章。そして『THE』の方が、『グレンファー・クラス蒸留所』でそうで無い方が『バルベニー蒸留所』の記載があんのっしゃ」
「どっちかが『偽物』なのすか?歴史的にみたら『ザ・グレンリベット』は偽物と区別するために『THE』ば付けたんだっちゃ」
「両方とも、本物だべ」
「んで、ジョンは両方飲んだのすか?」
「俺も『THE』のねぇ方しか呑んでねぇべ」
安心!

ここで少し、このお酒につきまして・・
「ロイヤル・ハウスホールド」とは「英国王室」といいます、恐れ多い名前です。
1896年、英国王室から依頼を受けた「ブキャナン社」が当時の皇太子「エドワード7世」専用のブレンドウィスキーを作りました。以来、歴代国王(女王陛下)から「ロイヤルワラント」の称号を受け続けております。ですがその時には具体的な名前があったわけではなくて「ヨーク公=ジョージ5世」が世界の旅に出ましたとき、持参した唯一のウィスキーだった訳です。彼がゲストに振舞って酒を紹介した際「ロイヤル・ハウスホールド」と名前を付けたとされております。
「旨い酒」です。(毎度同じ台詞ですけど)決して「名前負け」ではないですし飲んでる酔漢も「名前に押されている」訳ではございません。スモーキーさ、アイラ風味はないのですが、「香の物足りなさ」はございません。スペイサイドモルトの上品な軽さ(「ザ・マッカラン」のような)とハイランドモルトの麦の香りを残しております。

「おえめぇに合って、勉強になったっちゃ」
「俺も酔漢さんさぁ会って、本国よりウィスキー好きな奴がいるなんて思わねかったっちゃ」
僕らのいつもの最後の会話です。
彼はこの話から数ヶ月経って、一度アメリカへ行き、そしてイギリスへ戻ったのでした。
日本にいたら「ロイヤル・ハウスホールド」が呑めたのになぁ。
本国で呑めずに、日本でしか庶民が飲めない。
こんな酒もあるのでした。
一本2万5千円位かな。高いですが。
このお酒「今の日本でしかいただけない」し「日本人でえがった」と思わざるを得ないお酒なのでした。

うーーん「THE・Royal Household」の方が非常に気になります。
もう呑めないかも・・・

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12 コメント

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バレたか! (丹治)
2008-10-21 09:52:02
さすがは酔漢さん。別に隠してた訳じゃないけど、アイスバインとビスマルク鰊の他にもウマイのがいくつもありますよ。この次に上京した折は、是非是非!!
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そうかもしれません (酔漢です )
2008-10-15 09:37:02
ぐずら様
最初はそう考えておりましたが、原酒確保の為味が変わった(変えた?)とのお話がございます。バルベニー蒸留所とグレンファークラス蒸留所のモルトの出来が左右したとも。
この事実を知るためには「バッキンガム宮殿」へ招待されなければ解らない事なのかも・・
ぐずら様→出番です。
女王陛下とのご対面を果してください!
酔漢からのお願いです(是非)
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シュシュと参上! (酔漢です )
2008-10-15 09:33:18
すず様へ
そうですか、クワガライジャー氏。スコッチマニアでしたか。
お若いのに中々。北方謙三氏が呑んだかどうか。40年ものですよね。幻だなぁーー。
ボウモアの記事で更新しました。
珍しく写真の紹介です。
ご覧下さい。

1万件目・・実は酔漢自身かと・・
おめでとうございまぁぁす!
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また一緒に (酔漢です )
2008-10-15 09:29:49
丹治様へ
学会は?
また行きましょう!
ドイツ料理の旨い奴。本当はもっと知ってるんでしょ!(笑)
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再開発で (酔漢です )
2008-10-15 09:28:17
クロンシュタット様へ
神田とかあのあたりも大分変わりました。
嶋田久作さんですよね。「帝都物語」は迫力がありました。
お顔が印象的です。
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スタインゲッツ (酔漢です )
2008-10-15 09:25:36
ひげ親爺様へ
日曜深夜、Jwave(仙台では聞けませんFM曲)で、JAZZの番組を放送しております。
本日(10月12日深夜)は「スタインゲッツ」の特集でした。無骨なサックスもたまにはいいものだと思いました。
有楽町ガード下。
ドイツビールと料理の旨い店「バーデンバーデン」を丹治氏から紹介されハマッテおります。
またあそびにきてけさいん
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ロイヤル・ハウスホールド・・・ (ぐずら)
2008-10-14 23:59:57
「ザ」の付く方が「王室専用」、付かない方が「王室御用達」ですかねぇ~?
日本の皇室御用の酒の話は聞いたことがありませんが、20年以上前には皇室専用のタバコを旧専売公社が製造しており、「金鵄」という銘柄のものを奉仕団の参加者等に下賜していたようです。
当時、オイラの職場の大先輩の弟さんが宮内省に勤めていたので、おすそ分けに与ったことがあります。
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なんだかハッピー! (すず)
2008-10-14 15:17:18
 すみません、またもや脇道な話でお邪魔します。

今見たら、こちらのカウンターがなんとピッタリ「10000」でした!なんだかとってもハッピーな気持ちです
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ご覧になってないかな~? (すず)
2008-10-14 12:28:45
 脇道な話でお邪魔します。

酔漢様、今日のお昼の「いいとも」ご覧になりましたか?ゲストは*姜暢雄(きょうのぶお)さんだったんですが、アイラ島でウィスキー作りを体験したお話でした。ピート掘りや40年もののウィスキーを飲ませてもらって感動のあまり泣いた話しで、タモリさんと盛り上がりましたよ~。タモリさんへのお土産はボウモアでした♪

*私にとっては「ハリケンジャー」のクワガライジャー の人です。
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有楽町のガード下は・・・ (丹治)
2008-10-14 09:17:30
小生にも思い出があります。まだ大学院の学生だった頃、学会で上京しました。んで「飲めるとこ、飲めるとこ・・・」って探してて見つかったのが、串焼きの店。昼間っからやってるのが有難かったです。あの頃はもっぱらビールか安焼酎だったです。

そこで初めて「カシラ」なるものの正体を知りました。最初「カシラ」って聞いた時、ニワトリの頭がメザシよろしく串刺しになってるのかと思いましたよ。それを親爺さんに話したら、「お客さん・・・」と言ったきり絶句してました。

あれ、ブタの頬っぺただかこめかみだかの肉なんだそうですね。よく動かすとこだから身が締ってます。今じゃ大好物ですよ。
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なつかしのジャズ喫茶 (クロンシュタット)
2008-10-14 06:03:54
有楽町駅のまん前も「再開発」とやらで、ずいぶんと変わってしまいました。
怪しい飲み屋街も、縮小したようで、風前の灯です。

高田馬場のジャズ喫茶「マイルストーン」は、サークル仲間のたまり場でした。
なけなしのお金を出し合って、ホワイトのボトルを入れていたものです。
そうそう、そこの従業員で仲良しだったのが、嶋田久作君です。
あの頃から、顔がデカかった!

「マサコ」は学生時代のアパートから、サンダル履きで行ける、下北沢のジャズ喫茶でした。
マサコママも健在の時代、アットホームな気ままな店でした。
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有楽町ガード下 (ひげ親爺)
2008-10-13 12:04:22
昔、あの辺りに「ママ」というジャズ喫茶があったナ。レコード盤にガムシロップがこびり付き、音とびするといってレコード盤を水道で洗っていたのを見たことがあるよ。
それにしてもウィスキーの話ずいぶん進行深入りしているね・・・メチャクチャ知らないことばかりだ、纏めたら本になりそうだよ!どう?
・・・ところで、いつもながら、しばらくです。本日のジャズはしばらくついでにフレディ・ハバードのOPEN SESAMEです。
REC:1960 およそ半世紀前、そんな古いウィスキー飲めたもんではないか?ではまた
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