酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

「味噌汁はブレンディッドウィスキー」というお話

2008-09-19 10:35:22 | ブレンディッドウィスキーの話
日本橋、国分株式会社様内研修室です。以前、「山崎」と「白州」との飲み比べで一杯数十万円もするモルト原酒を、紙コップで何杯も飲んでしまった、大失態を演じたお話をいたしました。(これには、顔が青くなってしまった。実際は赤くなっていた?)研修ですので、各お酒メーカーのウィスキーのテイスティの方方とお話する機会に恵まれました。
そこでの話しです。(株)サントリー様主催の講演です。
「味噌汁はウィスキーにたとえられます。モルトを味噌としましたら、グレーンはだしです。こうイメージすると、ブレンディッドウィスキーがイメージできると思うのです」
お話されておりますのは、サントリーのブレンダーの方でした。(すみません、お名前は忘れてしましました)
「なるほど」と思いました酔漢でございます。
ウィスキーを大別しますとポット式蒸留器(単式蒸留器)によるモルトウィスキーと、後に発明されました(1831年)コフィのパテント式蒸留器(連続式蒸留器)を用いて雑穀から作られるグレーンウィスキーに分かれます。
そして、基本的にこの二つをブレンドいたしておりますのが、「ブレンディッドフィスキー」でございます。
スコットランドにおります「ジョアン・アレキサンダー・キャメロン」さん。この二つを混ぜ合わせたらやたら旨い酒が出来ることを発見いたしました。
(さぁここで皆さん一緒に「キャメロンさんありがとう」とご唱和願います)
ところが、弱点も多々ございまして、
「なんだや、このめぇ作った奴はうめかったのにっしゃ。今度はやたらまずいっちゃ」だったのでした。
「んで、おらがなんとかしてみっちゃ」というわけで1853年。エジンバラにおりました「アンドリュー・アッシャー」さんがこのブレンドの仕方を確立したのです。
彼は、重税を課せられますシングルモルトを「なんじょしたら安く出来かや」というわけで、「グレーン(早い、旨い、安いの三拍子)で割ったらいいんでねぇ」と
試みました。(牛丼だったり味噌汁だったり・・)
ですが結果は。
「混ぜたらやたらとうめぇくなったっちゃ」でした。
(さぁここで皆さん一緒に「アッシャーさんありがとう」とご唱和願います)

さて、ここでモルトとグレーンについて整理しましょう。
モルトウィスキーは大麦麦芽(これを「モルト」と呼びます。→サントリー「モルツ」はこの麦を使いますのでそのまま名前にしたようです)を原料とします。
これを先にご紹介いたしましたポット式蒸留器(単式蒸留器)で2回蒸留します。
オーク樽で3年以上熟成させます。
シングルモルトはひとつの蒸留所で蒸留したモルトウィスキー。複数の蒸留所で造られたモルトウィスキーをブレンドしたものをバンディッドと呼びます。
一方、グレーンウィスキーはとうもろこし、ライ麦、小麦などの穀物を原料とし、パテント蒸留器(連続式蒸留器)で蒸留し(1回が基本)オーク樽で3年以上熟成させます。以前バーボンの話をしましたが、基本的には「グレーンウィスキー」のカテゴリーに位置します。(熟成の仕方はモルトウィスキーのカテゴリーですが)
この二つを合わせた苦肉の策が、世界の人を魅了しているわけです。
「おらは、『早い、安い、旨い』ばかんげぇて、作ったのにっしゃ。まさか、ここまで流行るとは思わねぇがった」とはアッシャーさんの弁。
以降、さまざまなブレンドが試みられ、味を追求するようになって行くのでした。
今じゃ4000ものレシピが存在するのだとか。「コストダウン」ではなく「究極の一献」を求めて、ブレンダーが存在しているのでございます。
もともと、ブレンドという言葉は、「同じ蒸留所で作られた年代の違うモルトウィスキーを混ぜ合わせる」と言う意味でした(バンティッドは蒸留所が違っている定義がございます)後にハイランドとローランドのモルトとグレーンを混合する意味になり、そして今は多種多様なウィスキーを混ぜあわせる意味として使われます。
ですから、シングルモルトそのままを楽しむようになったのは、大分後になってからで、スコッチウィスキーの歴史はブレンディッドが王道だったのです。
シングルモルトが市場に流通してからまだ半世紀(まもなくですが)も経っていないのです(グレンフェディックが最初です)

国分株式会社内、研修の真っ最中です。講演者が話しております。
「味噌は、全国に渡り、その作り方それこそ原材料から熟成の仕方まで、多種多様に存在します。それは、ウィスキーの世界にたとえると蒸留所の個性と同じです。ですが、大きなくくりで見ますと、例えば、「八丁味噌」とか「信州みそ」とか(「仙台みそ」と心で大きく叫んでおりました酔漢です)その土地土地の個性があるわけです。これは「アイラ」とか「スペイサイド」「ローランド」と言ったわけ方と同じです。」
なるほど!です。これは、見事な例えだと考えます。
「そして、グレーンは『だし』で考えてみてください。だしにもいろいろなものがあります。『にぼし』『鰹節』(仙台じゃ雑煮は『はぜ』だっちゃ。と叫んでいる酔漢でございます)これを使いませんと味噌汁は美味しくならないのです。ブレンディッドはこれと同じです」
だが、まてよ。「味噌汁はこの二つがなければ飲めないけど、シングルモルトは個性が際立ってうまい」訳です。みそだけ溶かしても、そんなには美味しくありません。これは、皆さんよくご存知のことでしょう。
だしだけだったら、これだけでは、とても美味しく感じないはずです。これも「じゃぁグレーンウィスキーは飲めない」というご質問も頂きそうですが、いえいえそのような事はございません。以前「ひげ親爺様」からのコメントに「ニッカ宮城峡で『グレーンウィスキー』(ブレンド用)を飲んだら、これだけでも、旨かった」と申しておりました。
ですが、「的を得ている」表現だと思うのです。

山崎蒸留所に開高健さんが訪れております。自身の樽(この人山崎シングルモルトを樽事契約しております)の熟成具合を確かめに参りました。
「うん、これは、旨くなっている」との発言。
「でも、どうして、シングルモルトで売り出さないの?」との質問。
この時、日本では「シングルモルト」としてのウィスキーは発売されておりませんでした。
「こんな旨いのだったら、シングルモルトで売り出せばいいじゃない」
と言う事で発売しましたのが「山崎」だったのです。これ以前は「山崎シングルモルト」は「響」ブレンド用として15年熟成ものを作っていたのでした。
ニッカは「ピュアモルト」としてデビューさせました。「余市」です。(本音を言えばこの言葉。あいまいで好きではないのです。定義的にはシングルモルトと同じです)竹鶴氏は、「余市」と「宮城峡」と個性の違うシングルモルトをブレンドさせるために二つの蒸留所を設けたのでした。

バランタインで57種類。オールドパーで35種類ものモルトやグレーンをブレンドしております。最初にご紹介いたしました「J&Bアルティマ」は128種類ものモルトをブレンドしてます。これは、これで飲めますし、「上手くブレンドしているなぁ」とは思うのです。
ですが。
全ての味噌をブレンドして味噌汁を作りますれば・・・・
「試した人いるんだべか?」です。

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22 コメント

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好い例えですね~。 (すず)
2008-09-19 10:58:50
 味噌の例えは、私のようなシロウトにも良く判る良い例えですね。そして”仙台味噌”と心の中で叫ばれていた酔漢様に拍手です(笑)

どシロウトついでに一つ質問なんですが、ワインには「ボジョレーヌーボー」という収穫の季節の楽しみ方があります。その年のブドウの出来をみる意味あり、各々の会社のブレンドの腕を愉しむ意味ありなんですが、ウィスキーやスコッチにも同様のものがありますか?
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ボジョレーは・・ (酔漢です )
2008-09-19 11:49:30
すず様ぁぁ
酔漢、頭の痛い季節がやってまいりました。
ボジョレーヌーボーの季節です。
はっきり言いまして「旨い!」って思った事ないんです。ですが、仕事柄「今年は旨い」と言わなくてはなりません。
「ジョルジュ・デュブッフ」さん。ボジョレ地方のワインを何とか売り出そうと懸命に考えておりました。
「んで、どこより早い葡萄ば使って、ワインば早く売り出したらいいんでねぇかや」と思いつきました。
「ボジョレー地方の早摘みワイン」これが大ヒット。時差の関係で、日本が最初に飲まれます。そして、これが日本で大ヒット。
弱点がございます。熟成期間が非常に短いため、葡萄の酸化は早いので、(まだ落ち着いていない状態)解禁日から2週間(物によっては1週間)で風味が極端に落ちる事です。
ですが、初鰹と同じです。落ち鰹より味は落ちるのは当たり前。と思って、早々のお楽しみにしてはいかがでしょうか。
お薦め「ジョルジュ・デュブッフ。ボジョレーヌーボーヴィラージュ」少し高めですが、葡萄の香がしっかり残っております。ヴィラージュの方がいいと思います。「ブルゴーニュワイン」の中にあって「ボジョレー地方」のワインは軽く、飲みやすいテーブルワインとして親しまれ、フランス人曰く「がぶ飲みワイン」と言われておりました。これを「ヌーヴォー」として格をあげた「ジョルジュ・デュブッフ」さん。さすがに「ボジョレーの帝王」と呼ばれることだけあります。この人現役です。
ポスターなんかにお顔が載っております。
似合わなくワインを語ってしまいました。
スコッチの世界では、熟成期間が味を左右します。バランタイン30年とか。期間が非常に長いためにあまりありませんが。シングルモルトの蒸留所の中にはタイムカプセル同様。「30年後に開樽しましょう」として個人で樽事買い付けさせ、それを開けるお祭りみたいな行事はございます。子供が生まれた記念とか、そう言って本人が30歳になっている。といいましたしこうでございます。後は思いつかないなぁ。
寝かせるだけ旨くなる。これ本当かもしれませんので。スコットランドのお祭り「バーンズナイト」1月25日にスコッチを飲みまくる。そんなんのがございます。
すみません、長いわりには、回答になってませんでした。ゴメンナサイ。
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なるほど。 (すず)
2008-09-19 14:39:45
>はっきり言いまして「旨い!」って思った事ないんです

 あははは、ボジョレーヌーボーは秋の収穫を祝うという”お祭り”の意味が大きいですよね。でも2005年のジョルジュおじさん(我が家ではこう呼んでいます・笑)のボジョレーヌーボーは美味しかったんですよ。すぐに酔っ払う私にしては、珍しく毎年の味を楽しめるワインになってます。

 そういえば以前読んだエッセイの中で「お子さんの為に樽を買った」という作家さんがおられました。樽買いは男の浪漫ですね♪
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2005年は (酔漢です )
2008-09-19 19:19:26
すず様へ
2005年は忘れもいたしません。ボジョレーヌーボが本当に出来がよかった伝説の年でした。
毎年その日飲んでます。
やはりその年年で味が違っているんですよね。
妹がおりまして、彼女は「ワインのプロ」です。ワインで仕事をしております。彼女からはいろいろなワインの話を聞きました。
ですが、ワインは味が深すぎて難しいのが印象です。
「お兄ちゃんこの前贈ったワインどうだった?」
「あれか。ワインの味がした。一本すぐ空けたけど」
「その前とどっちがおいしい?」
「その前・・・どんなんだっけ?」
「もう贈らない!ワイン音痴!」
本当にワインが来なくなりました・・本当のお・は・な・し・・・デス
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何処も同じか~ (ぐずら)
2008-09-19 21:44:47
子どもの誕生祝にモルト樽を買い付ける・・・スコッチにもそんな習慣ありましたか
紹興酒や泡盛、マッコリなんかにも娘が生まれると甕に詰めて庭の隅に埋め、娘の嫁入りのときに掘り出して祝う習慣があったようで、世界中の酒飲み親父の考えることはみんな同じなんだねぇ~
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Unknown (クロンシュタット)
2008-09-20 07:18:14
以前勤めていた某食品スーパーでは、本部勤務が長かったので、「国分」さんとも付き合いがありましたよ。

すず様に続いてワインの話なのですが(スミマセン)。
三鷹名物にキゥイーワインがあります。
地元農家が育てたキゥイーを農協が集めて、山梨のワイナリーに出荷しますと、瓶詰めになって(途中省略しすぎ)三鷹市内の酒店の店頭に並びます。
流通用以外に、生産農家にも相応に戻ってきます。
それが私の常用飲料?なのですが、やっぱし甘すぎて、うーむです。
まあ、文句を言いつつ、結局あっという間に空瓶になってしまいますが。
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異議ナシ! (丹治)
2008-09-20 17:56:27
ボジョレー・ヌーヴォーは確かに「旨い」と思って飲んだことはありません。どう言ったらいいのでしょうか。赤ワインは白に較べると渋さが際立ちますね。もちろんのこと、それが赤ワインのよさだと思いますが(小生がよく飲むのは、どちらかといえば白です)。ボジョレー・ヌーヴォーはその渋さが練れていないというんでしょうか・・・少々とんがった味がします。敢て言えば渋目のグレープジュースにほんのりとアルコールの味がするといったとこでしょうか(赤ワインに詳しい知合いによれば、ボジョレーにもヌーヴォーより旨いのがちゃんとあるそうです)。

ワインもスコッチも熟成させる酒(蒸留したばっかりのモルトって確か無色透明でしたよね、酔漢さん)。してみれば出来立てのものには時間をかけて熟成させる旨味がないのも、むべなるかなですね(鰹も脂の乗っていない初鰹よりは、前の年の戻り鰹の解凍物の方が旨いという人もいますし)。

ドイツにはフェーダーヴァイサー(Federweißer)というのがあります。九月の後半、葡萄の刈入れの季節、収穫祭の頃に飲まれるごくごく若い白ワインです。ライン河畔のリューデスハイムで飲んだことがあります。葡萄の果肉(皮か?)がオリのようになっており、炭酸を含んでいるので口当りがシュワシュワ。アルコール分は当然のことながら含んでおります。言うなれば葡萄で作ったドブロクファンタでありましょうか。

「フェーダー」とは「糸」で「ヴァイス」は「白」。葡萄のオリが白い糸みたいに見えることからついた名前ですね。

ウィーン郊外、ウィーンの森にはホイリゲと呼ばれる居酒屋があります(玄関に杉の枝をぶら下げているのが、杉玉を店先にぶら下げる日本の造り酒屋を思わせます)。その年に出来た新しいワインを飲ませる店なのですが、ここのワインも炭酸を含んでおり、フェーダーヴァイサーに近い舌触りがしました。

話がそれてしまいましたがこのフェーダーヴァイサー、やはり旨味にかけてはいわゆる「白ワイン」には数段劣ります。土地の人たちはこのフェーダーヴァイサーを「ワイン」とは読んでいませんでした。

フェーダーヴァイサーとボジョレー・ヌーヴォー、白と赤のちがいこそあれ似たようなものですね。

確かにホンモノのワインに較べたら旨味は比較にならないと思います。でも小生、フェーダーヴァイサーとボジョレー・ヌーヴォーのようなものを飲むのが決して嫌いではありません。それはやはり季節感があるからではないでしょうか(フェーダーヴァイサーに至っては二十年前の留学時代に飲んだきり、懐かしさすら感じます)。

野菜も果物も、促成栽培やら何やらで端境期というのがなくなりました。食いたいものが年中口に出来る便利な世の中といえばそれまでだけど、季節感がすっかりなくなりました。「ボジョレー・ヌーヴォー」と聞くと、「おっ、もうそんな季節か」となる訳ですね。「もう秋か、人恋しいなあ」、「もう秋か、酒恋しいなあ」・・・

こんなこと書いてたら、ホントに酒が恋しくなってきたゾ。どうしよう・・・えーい、知れたことよ。一杯引っかけて帰るか。



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Unknown (ひー)
2008-09-21 13:00:29
今回の記事も気合入ってますね。
酔漢さんがテイスティだったら・・・
やはり酔うまで飲むでしょうね。
皆のコメントを見てるのも面白いものですね。
ぐずらも来てましたね。
あいづもいろんなこと知ってるなと最近感心してます。
ワインはこだわりがあまり無く、三百円代のワインが一番美味しく感じてしまいます。www

味噌とウィスキーなるほどなるほど!
わかりやすい説明ですね。
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もっと凄い習慣が (酔漢です )
2008-09-22 10:17:18
ぐずら様へ
赤ん坊が生まれまして最初に与えられる液体がウィスキー一滴。
新婚夫婦がベッドに入るとき、仲人が乱入して二人にスコッチを振りかける。
そして、世を去った人に、周りの人がフィスキーを浴びせる。
スコットランドの伝統?でも赤ん坊から「のんべぇ」にしなくてもと思いません?
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現役ではないようですね (酔漢です )
2008-09-22 10:21:41
クロンシュタット様へ
丸大食品商品回収となりまして、量販店が写っておりましたが、クロンシュタット様がおられました量販店ですよね。
私は今のお仕事もそうかと心配いたしました。

キウィワインは頂きました。
甘い香りは葡萄とは違った独特の風味ですね。
どんな肴に合うのでしょう。
やはりチーズ系でしょうか。
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