酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

宮城球場伝説 プロ野球編

2007-07-13 11:42:12 | 野球の話
 楽天の試合は時たま観ます。昨年まで、投手で苦しんでいたチームは、年ごとに成長している様子が分かります。
ここまで、酔漢が見た、聞いたプロ野球のチームを3球団にわたって、そのエピソードを紹介いたしましたが、この章はいったん休止にします。残りの9球団については、酔漢の大学時代、そして父親、家内の事などおりまぜながら、書いていこうと思います。どうしてかみさんかって?彼女、仙台六大学野球でウグイス嬢をしておりました。で、大学野球部の記録の手伝いもしておりました。ですから母校出身のプロ野球選手の話などをよく聞かされております。
一昨日メジャーリーグオールスターがおこなわれました。ロサンゼルスから投手として選ばれた斉藤隆君もその一人ですが、彼があそこまで成長しているのかと思いますと、感慨深いものがありました。酔漢は家内とよく母校の試合を見ましたが、斉藤君はいつも打たれてばかりおりましたものですから。しかし、一昨日は堂々としたマウンドさばきでした。
で、今日の話は県営宮城球場がプロ野球史上記録に残る地方球場であることの紹介とその場に2回もい合わせる事のできた酔漢自身の幸運をお話したいと思います。
 1973年10月10日体育の日、ロッテ対阪急 消化試合 観客は1000人ちょっと。ですが、生涯忘れる事のない試合となるのでした。その日、朝から好天でした。ちょうど、子供会の運動会が行なわれ、酔漢はおいかわ君と参加しました(おいかわくんのおやしき を参照下さい)で、午後、叔父がぶらりと家にやってきて
「酔漢、これから野球みさぁいがねぇすか」と誘いが来ました。
「んでも、パリーグは優勝決まったべさ」
「んだども、切符あるんだおん。行くべ」
僕は優勝の決まった阪急対ロッテにあまり興味はありませんでした。個人記録もそこそこ決まっていましたし。僕らはガラ空きの一塁側スタンドでの観戦でした。
10月に入ると、秋風が冷たく感じる球場でした。
阪急の先発は佐藤、ロッテは八木沢でした。夏休み、一番最初に観たロッテ戦も八木沢壮六投手でしたので、僕は正直「またか」との思いでした。
4回だったと思います。有藤のタイムリーでロッテが1点を先行しました。が両投手とも、持ち味を発揮し、なかなか、点の取れない展開でした。というよりは、消化試合という事もあり、打者自身が淡白な打撃だったように思えます。回は進み、6回を終了した時点で叔父がぼそりと言いました。
「阪急ランナーでたっけかや?」
スコアボードを見ると、阪急のヒット数を示す掲示板は、0のままだと気づきました。
「ヒットは打ってないよね。でフォアボールもデッドボールもないし・・・」
「んだ、ここまで八木沢はパーフェクトだべ」
僕らが気づいたくらいでしたから、回りも当然気づいておりました。
7回、先頭打者福本を迎えます。なんとか、バントヒットを試みようとするのですが、キャッチャー醍醐のファウルフライ。2番が倒れた後、3番加藤これまた、センター弘田のファインプレイーでアウト。この回あたりから、球場全体が異様な雰囲気に包まれました。元気のいい売り子も、仕事を忘れて、野球を見ている雰囲気でした。
そして、9回表。7番ソーレルが代打で登場。ショートゴロ。8番中沢がセカンド山崎の正面ゴロ。最後の打者、代打高井が弘田へのフライ。ゲームセット。八木沢壮六の完全試合が達成された瞬間でした。マウンド上でキャッチャー醍醐と握手すると、金田監督が帽子を脱いで、マウンドまで、八木沢投手を出迎えます。僕らはゲームセットの瞬間気が抜けたように、タメ息をつきましたが、球場全体がそんな雰囲気でした。
「プロ野球を見ていて、完全試合だおんな、一生見られねぇもん見たなや」叔父もそう言ってましたし、僕もそう思っておりました。ですが、2度目があったのでした。
 それから5年後、1978年 8月31日 阪急対ロッテ 試合開始 18時。酔漢仙台向山高校に通っておりました。ちょうど、文化祭の準備中でしたが、この日はたまたま早く帰宅できる日でした。榴ヶ岡駅を過ぎるあたりまではプロ野球が行なわれている事すら頭にはありませんでした。榴ヶ岡を過ぎ、宮城野原駅との中間に、ゆるいカーブがあり、右側の窓から、球場が一瞬見える場所があったのですが、そこから電車の中に、カクテル光線が入って来たのでした。
「野球でも見ていくか」一人ですが、何故かそう思ったのでした。
僕は宮城野原駅で降車すると早歩きで球場に向かいました。月末にもらったばかりの小遣いをはたき、内野自由席へと急ぎます。もちろん一塁側。
球場に着いたときは、もう3回を回った頃でした。
ロッテの先発はすみません記憶にないのです、阪急今井の先発でした。阪急は打撃が好調で、早々とロッテから3点を奪います。先発の今井がこれまた絶好調で、得意のシュートが冴え渡っておりました。7回ロッテ先頭打者弘田が三遊間を抜く当たり!ロッテ初ヒットか!と思った瞬間、ショート逆シングルキャッチ。ファースト加藤へ、塁審の判定はきわどく、アウトーーーー。
となりの席のラジオからの中継ではアナウンサーが絶叫しております(TBCダイナミックナイターでした)
「ここまで今井雄太郎はノーヒットピッチング、いやノーヒットニノーラン。いやパーフェクトにロッテ打線を抑えています」
「うそーーーーっつ」酔漢も気づかないまま野球を見ていたのでした。
8回になりますと、やはりあの時と同じ、否、消化試合でないぶんだけ球場全体が緊張感でいっぱいになりました。応援団も笛太鼓など鳴り物はならさないようにしているのが分かります。ロッテの応援団でさえ、試合中の鳴り物は鳴らしませんでした。とてもそんな雰囲気ではなかったのです。最後の打者剣持がサードゴロでゲームセット。6対0で阪急が勝ちました。今井は帽子を取り、額の汗を拭うと、顔をまっすぐ空に向けて大きくため息を吐きました。そのため息さえ聞こえてきそうでした。その瞬間。球場どこからともなく、拍手!そして、その拍手が敵味方なく観戦していた人全員が送っているのでした。負けたロッテの選手も悔しさをにじませながらベンチで拍手をしているのが分かりました。
「野球をやっていてこんなうれしい事はありません」
今井投手は汗と共に、少しだけ涙も流れているようでした。
シュートの雄ちゃん、あぶさんと徹夜で呑んでも次の日しっかりマウンドに上がる酒豪の今井投手。(新潟出身だもんね)
僕はぶらりと訪れた、宮城球場ですばらしい試合を見ることが出来ました。
あの時、カクテル光線に気づかなかったら、この瞬間には立ち会うことができなかったと思いますと、なんと幸運な観戦者だったのでしょうか。

7年前まで、完全試合のキップは僕のスラップブックに閉じてありました。が、隣家の火事で僕の部屋に火が入り、そのスクラップのおいてあった本棚に放水がかけられ、ものの見事に消失してしまいました。

完全試合はその後福岡ドームでジャイアンツ槙原投手が記録してから、まだ達成されておりません。県営宮城球場はそれまでの2試合、完全試合の達成された球場でした
今、フルキャストスタジアムと生まれ変わった球場ですが、フルキャスト完全試合第一号はだれでしょうか。遠く離れていても、楽天ゴールデンイーグルスの投手であって欲しいとの思いは強く持っています。そうそう宮城の生んだ大投手島田源太郎が達成しておりますね。

宮城県高等学校野球選手権が始まりました。母校仙台向山高等学校は、昨日亘理高等学校に完封で負けました。今年はどんなドラマが待っているのでしょうか。期待してやみません。

「今日、県営宮城球場にナイター用の照明が付きました。ナイター照明としては、後楽園球場を抜いて、日本で一番明るい照明塔です。仙台でも、プロ野球のナイターが開催されます」ある日の河北新報ニュースより

2008年11月13日(木)
下記コメントにもありますように八木沢壮六投手によります完全試合は、「対太平洋クラブ戦 1-0」の誤りでございました。
訂正させていただきます。
誠に申し訳ございませんでした。
尚、本文に付きましてはそのままといたします。
お知らせ下さいました「HIRO」様へはこの場を借りまして御礼申し上げます。
ありがとうございました。

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3 コメント

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Unknown (HIRO)
2008-11-10 09:57:55
私も八木沢の完全試合を宮城球場で観戦していました。

対戦相手は太平洋クラブだったたと記憶していましたが・・・。

因みに、仙台向山高校の1年後輩と思われます。
返信する
お知らせありがとうございます (酔漢です )
2008-11-13 18:10:45
対太平洋1-0の試合でした。
記憶を違っておりました。ありがとうございます。
記憶を便りにブログで語っております。
重ね重ねありがとうございました。

向山高校OBの方でいらっしゃいますか?

あの木造校舎と桜並木は、忘れられません。
返信する
無題 (ラーメンマン)
2018-04-02 20:08:40
仙台宮城球場に限らずかつての球場もかつての球団も楽しみに応援していましたので私の記憶の中に名残惜しく残って居ます。
返信する

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