「へぇ、おねげぇでございます。おねぇげぇでございます」
「いずれへまいるのだ?」
「近藤様のお屋敷へまいります」
「なに?近藤氏のお屋敷だとぉ?なんじゃ、その方は?」
「へい、向こう横丁の油屋でございます。近藤様より、油のご注文でございます」
「油のちゅうもぉぉんだ・と?・・・近藤氏なれば、ぜひ・と・も・・あらためねばならん。ここへ、その徳利をだせぇい」
「これは、油徳利で・・・」
「いいから、これへ出してみろ!」
「で・ですから・・これは、油徳利でございまして・・」
「油徳利は判っておる!手落ちなきよう、役目をもって検めるのだ!ここへその徳利をだせぇい。これ!出さぬか!」
「へぇ、左様でございますか・・それじゃぁ致し方がございません(しぶしぶと、ゆっくり徳利を侍に差し出す)これにて、一つお調べを・・」
「これっ、さっさとだせぇ、しぶしぶだすではない!これから、中身を検めるによって・・ひかえておれ・・・いや、御同役、油と申しておる。・・まずはこの茶碗についでみで・・・こりゃいかん。徳利も、ひもも、栓も・・油だらけ・・で、ねちゃねちゃしていかん(本当に気持ち悪そうな態度である・・)これ!ひかえておれ!・・こうして、茶碗についで・・只今取り調べるによって・・(酒と最早判っている。茶碗口を付けて一口のむ様子)こらっ、かような油があるか!この偽り者めがぁ!横縛りにしてくれるぞ!」
「ごめんなさぁい」
「おいおい、どうしたんだい?真っ青な顔をして、飛び込んできやがった」
「た・只今帰りましたぁ」
「どうしたい?上手くいったのかい?」
「それが・・そのぅ・・『この偽り者めがぁ』って」
「なぁんだい。お前も偽り者をくっちまったのかい。で、また一升のまれちまったってなわけかい・・」
「おかげさまで・・」
「おかげ様って奴があるかい!だからおよしなさいって言ったんだ。・・とうとう二升も呑まれちまった・・」
「番頭さん。番頭さん。今度はあっしをやらしてくだせぇ」
「およしよぉ・・お前さんで三升になっちまう・・」
「いえね、あっしは、酒なんぞ持って行かないんですから・・」
「酒を持って行かないって?じゃぁ何を持って行くんだい?」
「えへへへへ・・・小便」
「なに?」
「ですからね、小便を・・・」
「おいおい、馬鹿なマネするんじゃないよ。小便なんぞ・・」
「いいんですよ。あだ討ちなんですから・・小便を小便として持っていけば、偽り者ではなくなるんですから・・」
「およしよ!悪い事は言わないからさぁ・・よしなさいって」
「いいえねぇ、仇を討たなきゃぁ、腹の虫が収まらねぇってもんで・・」
若い連中が寄ってたかって、一升徳利に小便を仕込んで、これ栓をいたしました。
「お願いでございます」
番屋の侍、かなり酔っている・・。
「なぁにぃ?・・・とおおっれ、いずれへまいるか?」
「だいぶ、いいご機嫌でございますな・・」
「よけいな、ことを申すでなぁいぃ・・いずれへまいるのだぁ?」
「あのう、近藤様のお小屋へ通ります」
「なぁぁにぃぃ、近藤氏のお小屋だ!とぉぉ!・・・・御同役、参りましたぞ!よく参るものでござるな、性懲りも無く・・なんだ、その方は?」
「へい、てまえは、むこう横丁の・・・そのうぅ・・」
「むこう横丁の・・なんだ?」
「あのぅ・・(小さな声で)しょう・・しょう・・小便屋でございます」
「なんだとぉぉ?」
「小便屋です」
「小便屋ぁぁ?聞いた事がござらんな。御同役。。小便屋という名は・・なんだその方の腰に下げておるものは?」
「これでございますか?・・小便のご注文で・・」
「ばかもの!小便を注文する奴がおるか!小便を注文していかがいたす?」
「なんだか判りませんが、松の木の肥料にするとか・・・聞いてますが・・」
「こちらへ出せ!」
「へっ、へっ・・左様でございますか。ありがとうございます。えへへじゃぁ、手落ちのないように、どうぞごゆっくり、おあらためを・・・」
「よけいな事を申すな!(かなり酔っている口調)御同役、実にけしからんもんですな。初めに『水カステラ』と偽り、次に『油』と偽り、今度は『小便』と偽るとは・・実に言語道断でござる・・これ、ひかえとれ!・・只今、中身を取り調べる・・けしからん奴・・ひかえておれ!只今、こうして、栓を取って・・はっ(鼻で笑うよに)小便などと・・・さような馬鹿な事をもうしておる・・ひかえておれ!・・おう?こりゃ、暖かいでござる・・御同役、今度は、燗をつけてまいったようでござる。だいぶ暖かい・・ちょうど人肌といった具合でござる・・・これ!ひかえておれ!・・燗でよし、冷でよし・・これ!ひかえておれ!・・只今、取り調べる。たびたび、結構な・・・嫌、不埒なものを持参いたし・・ひかえておれ!・・只今、調べるぞ・・御同役、毎度、お先でおそれいるが、手前が、また、お先にご無礼を・・・このいつわり者めが・・小便屋などとばかな事を申しおって・・拙者がこの湯のみにこうしてついで・・うーーん、だいぶ泡たっておる。
これは、酒の性がよろしくないな。燗の付けすぎであろうか?・・はっはっは・・ひかえておれ!この偽り者めが・・只今、身どもが取り調べて・・うーーん、この匂いは?。やや、しょ・しょ・しょうべん・・
けしからん・・かような物を持参いたし・・・」
「でございますから、はじめから、小便だとお断りもうしました」
「そりゃわかっとる。あのぉぉ・・っこな・・うーーん・・正直者めが!!」
「幸良州って、酒は呑まないんだよね」と「ほうとく」君が話しかけてきました。
「あいずは、ほんの少ししか呑まねえぇんだおん。まくらで言ってったっちゃ。『あん好にリザ-ヴ呑まれた』って」
「福祉大の『進笑』さんといい、『幸良州』君といい、のんべぇでないほうが酒の噺が上手いんじゃないかって・・・」
「一人だけ例外がいっちゃ。福祉大の先輩だった(昨年卒業)『蟻巣家米家ん』さんの『一人酒盛』は最高だったっちゃ。あの人はのんべぇだったっちゃ」
「あん好は、意識して選ばない?」
「どうしても、本来の姿に戻ってしまうのっしゃ。演じるより呑んでる方がいいっちゃ」
幸良州君、落語テープのコレクションは、随一。(個人所有で。団体所有では学院大学が一番)本棚には、びっしりテープが入っていたのでした。
笑わない男として紹介しておりましたが、彼の名誉のために・・
そんな事はないのです。ですが、顔がとてもシリアスだったのです・・
卒業して数年後。弊社の本社が池袋の一番高いビルにあった頃。会議の帰りです。
池袋のあの長い交差点(今度なくなる三越のすぐ側)ですれ違う、見覚えのある顔が!
「幸良州でねぇか!」
「あん好!」
「おめぇ何してんのっしゃ?」
「今か?・・・・演芸場の帰り・・」
「あいかわらずだなや!」
ってな具合。これ実話です。偶然にも程があります。
「時間あっか?」とは、当然の流れでして、側にありました居酒屋へ直行!
学生の頃よりかなり呑めるようになっていた幸良州君でした。
「いずれへまいるのだ?」
「近藤様のお屋敷へまいります」
「なに?近藤氏のお屋敷だとぉ?なんじゃ、その方は?」
「へい、向こう横丁の油屋でございます。近藤様より、油のご注文でございます」
「油のちゅうもぉぉんだ・と?・・・近藤氏なれば、ぜひ・と・も・・あらためねばならん。ここへ、その徳利をだせぇい」
「これは、油徳利で・・・」
「いいから、これへ出してみろ!」
「で・ですから・・これは、油徳利でございまして・・」
「油徳利は判っておる!手落ちなきよう、役目をもって検めるのだ!ここへその徳利をだせぇい。これ!出さぬか!」
「へぇ、左様でございますか・・それじゃぁ致し方がございません(しぶしぶと、ゆっくり徳利を侍に差し出す)これにて、一つお調べを・・」
「これっ、さっさとだせぇ、しぶしぶだすではない!これから、中身を検めるによって・・ひかえておれ・・・いや、御同役、油と申しておる。・・まずはこの茶碗についでみで・・・こりゃいかん。徳利も、ひもも、栓も・・油だらけ・・で、ねちゃねちゃしていかん(本当に気持ち悪そうな態度である・・)これ!ひかえておれ!・・こうして、茶碗についで・・只今取り調べるによって・・(酒と最早判っている。茶碗口を付けて一口のむ様子)こらっ、かような油があるか!この偽り者めがぁ!横縛りにしてくれるぞ!」
「ごめんなさぁい」
「おいおい、どうしたんだい?真っ青な顔をして、飛び込んできやがった」
「た・只今帰りましたぁ」
「どうしたい?上手くいったのかい?」
「それが・・そのぅ・・『この偽り者めがぁ』って」
「なぁんだい。お前も偽り者をくっちまったのかい。で、また一升のまれちまったってなわけかい・・」
「おかげさまで・・」
「おかげ様って奴があるかい!だからおよしなさいって言ったんだ。・・とうとう二升も呑まれちまった・・」
「番頭さん。番頭さん。今度はあっしをやらしてくだせぇ」
「およしよぉ・・お前さんで三升になっちまう・・」
「いえね、あっしは、酒なんぞ持って行かないんですから・・」
「酒を持って行かないって?じゃぁ何を持って行くんだい?」
「えへへへへ・・・小便」
「なに?」
「ですからね、小便を・・・」
「おいおい、馬鹿なマネするんじゃないよ。小便なんぞ・・」
「いいんですよ。あだ討ちなんですから・・小便を小便として持っていけば、偽り者ではなくなるんですから・・」
「およしよ!悪い事は言わないからさぁ・・よしなさいって」
「いいえねぇ、仇を討たなきゃぁ、腹の虫が収まらねぇってもんで・・」
若い連中が寄ってたかって、一升徳利に小便を仕込んで、これ栓をいたしました。
「お願いでございます」
番屋の侍、かなり酔っている・・。
「なぁにぃ?・・・とおおっれ、いずれへまいるか?」
「だいぶ、いいご機嫌でございますな・・」
「よけいな、ことを申すでなぁいぃ・・いずれへまいるのだぁ?」
「あのう、近藤様のお小屋へ通ります」
「なぁぁにぃぃ、近藤氏のお小屋だ!とぉぉ!・・・・御同役、参りましたぞ!よく参るものでござるな、性懲りも無く・・なんだ、その方は?」
「へい、てまえは、むこう横丁の・・・そのうぅ・・」
「むこう横丁の・・なんだ?」
「あのぅ・・(小さな声で)しょう・・しょう・・小便屋でございます」
「なんだとぉぉ?」
「小便屋です」
「小便屋ぁぁ?聞いた事がござらんな。御同役。。小便屋という名は・・なんだその方の腰に下げておるものは?」
「これでございますか?・・小便のご注文で・・」
「ばかもの!小便を注文する奴がおるか!小便を注文していかがいたす?」
「なんだか判りませんが、松の木の肥料にするとか・・・聞いてますが・・」
「こちらへ出せ!」
「へっ、へっ・・左様でございますか。ありがとうございます。えへへじゃぁ、手落ちのないように、どうぞごゆっくり、おあらためを・・・」
「よけいな事を申すな!(かなり酔っている口調)御同役、実にけしからんもんですな。初めに『水カステラ』と偽り、次に『油』と偽り、今度は『小便』と偽るとは・・実に言語道断でござる・・これ、ひかえとれ!・・只今、中身を取り調べる・・けしからん奴・・ひかえておれ!只今、こうして、栓を取って・・はっ(鼻で笑うよに)小便などと・・・さような馬鹿な事をもうしておる・・ひかえておれ!・・おう?こりゃ、暖かいでござる・・御同役、今度は、燗をつけてまいったようでござる。だいぶ暖かい・・ちょうど人肌といった具合でござる・・・これ!ひかえておれ!・・燗でよし、冷でよし・・これ!ひかえておれ!・・只今、取り調べる。たびたび、結構な・・・嫌、不埒なものを持参いたし・・ひかえておれ!・・只今、調べるぞ・・御同役、毎度、お先でおそれいるが、手前が、また、お先にご無礼を・・・このいつわり者めが・・小便屋などとばかな事を申しおって・・拙者がこの湯のみにこうしてついで・・うーーん、だいぶ泡たっておる。
これは、酒の性がよろしくないな。燗の付けすぎであろうか?・・はっはっは・・ひかえておれ!この偽り者めが・・只今、身どもが取り調べて・・うーーん、この匂いは?。やや、しょ・しょ・しょうべん・・
けしからん・・かような物を持参いたし・・・」
「でございますから、はじめから、小便だとお断りもうしました」
「そりゃわかっとる。あのぉぉ・・っこな・・うーーん・・正直者めが!!」
「幸良州って、酒は呑まないんだよね」と「ほうとく」君が話しかけてきました。
「あいずは、ほんの少ししか呑まねえぇんだおん。まくらで言ってったっちゃ。『あん好にリザ-ヴ呑まれた』って」
「福祉大の『進笑』さんといい、『幸良州』君といい、のんべぇでないほうが酒の噺が上手いんじゃないかって・・・」
「一人だけ例外がいっちゃ。福祉大の先輩だった(昨年卒業)『蟻巣家米家ん』さんの『一人酒盛』は最高だったっちゃ。あの人はのんべぇだったっちゃ」
「あん好は、意識して選ばない?」
「どうしても、本来の姿に戻ってしまうのっしゃ。演じるより呑んでる方がいいっちゃ」
幸良州君、落語テープのコレクションは、随一。(個人所有で。団体所有では学院大学が一番)本棚には、びっしりテープが入っていたのでした。
笑わない男として紹介しておりましたが、彼の名誉のために・・
そんな事はないのです。ですが、顔がとてもシリアスだったのです・・
卒業して数年後。弊社の本社が池袋の一番高いビルにあった頃。会議の帰りです。
池袋のあの長い交差点(今度なくなる三越のすぐ側)ですれ違う、見覚えのある顔が!
「幸良州でねぇか!」
「あん好!」
「おめぇ何してんのっしゃ?」
「今か?・・・・演芸場の帰り・・」
「あいかわらずだなや!」
ってな具合。これ実話です。偶然にも程があります。
「時間あっか?」とは、当然の流れでして、側にありました居酒屋へ直行!
学生の頃よりかなり呑めるようになっていた幸良州君でした。
不思議だと思うのですが。人との出会いはこのようなものかも知れません。
クロンシュタット氏のご子息がシティラピッド君と同じ高校へ入学するのも、本当に考えれば不思議な縁を感じます。
ブログをやえられませんのも、そういった事もあるからなのかなぁと、最近思うようになりました。
冬場になりますと、肥溜めの上に氷が張り、さらに雪をかぶったりします。
つまりは見分けがつかなくなり、「落ちる」のです。「はまる」という表現が近いのでしょうか。
友人が目の前でドボンとやらかしました。ズブズブの底なし沼状態でした。
みんなで引き上げて、無事生還できましたが、その姿はあまりにおぞましく、この場ではこれ以上のコメントは差し控え・・・もう十分伝わっちまったかい!
あ、「友人」ですからね。私ではないですよー。
産業革命時代になっても、ロンドンなんかでは「糞尿」を住居の前の道路にぶちまけてましたよね。
さらに、上層階の住人は、バケツにためてベランダや窓から道路に撒いてました。
日本の都市は江戸を筆頭に、世界でも稀に見る清潔な都市ではあったのです。
カミさんの実家の畑のそばに、あの「バカ殿様」が住んでおります。
で、お手伝いさんが「バカ殿様」の飼い犬の散歩を、畑の中でやらかします。
ウハウハ大喜びの、犬の生理現象に対して、犬を責められません。
バカ殿めが!
小便で仇討ちですか・・・
これはいい・・
偶然とは恐ろしいものですね。
あの大都会で偶然にすれ違うなんぞ一生に一度もありゃしない・・・
江原さん流に言えば、必然なのでしょう。
昨日、ぐずらから続きの落語のCDをいただきましたよ。
出直します。
興味ありますねぇ。読んでみようと思います。
「どうしてご隠居が角なのか」といいますと、所謂町役ですから、角ですと隣の丁との境界線にあたります。そこを通りませんと、自身の長屋には帰れません。住んでいる人々の顔を毎日見ることが可能なわけです。
「最近、まっつあんの顔がみえねぇけどどうしたんだい?」と簡単に安否が確認できる仕組みでした。角には、そういった意味があったかとある噺家がまくらでそう言っておりました。
はてさて「小便屋」はおりませんが、「肥溜屋」(他にも言い方があったそうですが)がおりまして、それが、丹治様の言うところの、し尿処理を仕事としている人でございます。
これ、しっかりとした技術職でした。
職業による貧富の差とでもいいましょうか、江戸の町では人々の意識の中にはなかったと聞きました。ですから「人気のある肥溜屋」がしっかり存在していたのでした。
やはり客商売の原点なのでした。
ある時期までのヨーロッパは、タレ流しのマキチラシ。あのベルサイユ宮殿にさえ、トイレはなかったぐらいです。
ところが江戸時代の日本では、棟割長屋一棟ごとに共同のトイレが一つ。屎尿も農家が買取り
(リサイクルですねぇ)。上水道もありました。意外と衛生状態がよかったそうですよ。
このお話、お忍びで町場の酒を飲みに来た殿様と家来たちがバッタリ・・・なんて結末を考えてみました。
「許せん、テウチに致す」
「おテウチは、お殿様のおうどんだけでけっこうでございます」
なんて話がありましたよね。
中公新書ラクレで『大江戸とんでも法律集』というのを読んでます。発行が先月で、バリバリの新刊ですよ。江戸時代の御触書の「ですます調」現代語訳、笑えますよ。
酔漢さんは古典落語の素養がありますから、きっと面白く読めると思います。
この本の中に「角屋敷」という言葉が出てきました。いかなる屋敷か説明抜きで、御触書の中に「角屋敷」。もしかすると、酔漢さんに教えて頂いた「角のご隠居」と関係ありかもしれませんね。