TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

あのとき僕が泣いたのは、悲しかったからじゃない

2019年02月19日 | 読書日記
あのとき僕が泣いたのは、悲しかったからじゃない 瀧森古都 著 誠文堂新光社
人が涙を流すとき、自分の悲しみが流れ出る涙ばかりじゃない、嬉しいとき、切ないときなど、いろいろな意味が含まれているというのを読む人に気付かせてくれるような7つのお話でした。しばらく泣いた記憶も薄れてしまっていて、映画やテレビを見ていて涙した以外に、自分の身の上に起こったことで涙が出てしまったことは大人になってからなかったなあとか、本当に悲しいときには一粒の涙も出なかったなあなどと思い出しながら読んだ本でした。書店でたまたま見かけたこの本のタイトルに引かれて買って読んだ本のうちの1冊です。7つの物語の中で、一番印象に残ったのは、「おしるこ」というお話でした。
幸せとは、おいしいものを食べて「おいしい」と感じ、その気持ちを誰かと共有すること、幸せとは、美しいものを見て、「美しい」と感じ、その気持ちを誰かに伝えたいと思うこと。誰かと気持ちが一つになる瞬間、それを『幸せ』と呼ぶのではないのだろうか。
本当の幸せとは、とても小さくて、すぐそこにあって、でも探さないと気づかなくて、そして気づけたら心が温かくなって、そんな小さな幸せは心の穴をも埋めてくれる。
と記載されていた箇所はとても印象に残りました。
また、「家族だった家族」というお話の中では、ある家族に捨てられた猫が、最後のほうで、「あのとき僕が泣いたのは悲しかったからじゃない。」という心の叫び声が印象に残りました。捨てられた猫が、悔しくても、苦しくても、生きていくんだという強い決意をしたときに流した涙は、力強く、美しい涙でした。こういうときの涙は何かを生み出している涙なんですね。
ちょっとした行き違いや心の繋がりのすれ違いを幸せに変換したときの涙、小さいけれど、本当は大きな幸せを自分で探して見つけたときの涙は悲しい涙ではなくて、力強い涙でした。幸せを感じる涙はその人にとって悲しい涙じゃなくて、元気になれる涙なんですと読み終えた人に気付かせてくれて、元気にしてくれていたような本でした。
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