11月16日、映画『老後の資金がありません!』を観賞してきました。
同じ日に観賞した『そして、バトンは渡された』と同じ前田哲監督による作品だったのを観賞し終えてから知りました。このふたつの作品は家族をテーマに描かれていて、どちらの映画も楽しめました。どちらの映画も温かい気分にさせてくれた映画でした。
垣谷美雨原作の映画化作品で、原作は読んでいませんでした。主人公の後藤篤子(天海祐希さん)は53歳の節約をモットーとする主婦で子育ても一段落し、老後は安泰と思っていた矢先、舅が突然亡くなり、篤子の夫彰(松重豊さん)が長男ということで妹夫婦に、お葬式の費用は全部彰が出して欲しいと半ば強制的に打診されることからストーリーが展開して行きました。彰はどこか頼りなさを漂わせていた夫で、妻の篤子に葬儀社との打ち合わせもすべて任せ、しっかり者の篤子が葬儀社の職員(友近さん)とやり取りしながら費用をなんとか押さえることができないかと交渉するものの葬儀社の職員の言われるままに費用がどんどんかさんでいく様がおかしくて笑ってしまいました。篤子のきまじめさと優しさが伝わってきたシーンでした。貯金700万円だった篤子夫婦の貯金がこの高額な費用が掛かったお葬式で一段と少なくなったのですが、突然、地方のロッカーの男性と長女が結婚すると宣言され、なんやかんやの費用でまた少なくなってしまうという展開になります。夫の会社も倒産し、退職金も出ないことがわかり、篤子の契約社員の期限も終了してしまい、夫婦ともども仕事がなくなるという事態に陥ってしまうという貧窮状態になって行きましたが、篤子も彰もそれなりに深刻でなく元気だったのが明るく笑いを誘ってました。篤子夫婦は、姑が入居していた施設の費用として毎月9万円仕送りしていたけれど、失業したため仕送りできないと彰の妹夫婦に相談しました。結局、篤子夫婦が、姑芳野(草笛光子さん)を引き取り、暮らすことになりました。芳野はセレブ生活を送ってきただけに浪費癖もあり、篤子の家計をまたしても逼迫させていく様がおもしろおかしく描かれていてドタバタ劇のような展開もたくさんありました。ドタバタ劇の中でも、篤子が心優しくて人情深い主婦として描かれていたのが応援したくなる頼れる主婦の鏡のような人でした。その優しい人柄ゆえに、我儘に生きるのもいいものよということで、姑から思わぬプレゼントをもらうという幸運も運ばれ、善良で頑張っている一主婦篤子の日常と家族の話がところどころで笑いを誘いながら描かれていてそれなりに楽しく観終えた映画でした。天海祐希さんはどんな役でも素敵に演技されますが、この映画でも天海さんが演じておられた篤子がピカイチ光ってました。ボーリングで怒りを治めておられたシーンも笑いました。姑の芳野を演じておられた草笛光子さんもとても素敵でした。篤子の友達のお父さんになり切っておられたシーンがさすがと思いました。宝塚出身の草笛さんと天海さんが歌われていたシーンも見ごたえがありました。私たちは前のほうの席で観賞していて近くには誰もおられませんでしたが、後ろのほうの席には全体の7割くらい埋まっていたくらいのお客さんがおられ、いろいろなシーンで笑い声が渦巻いていたのが聞こえていました。楽しく観賞できた映画だったけれど、老後はやっぱりお金がある程度は必要だなあと思いました。けれど、それまでに自分のしたいことを後々に回してきたとしたら、老後は自分のためにお金を使って行く生活も大事だなあとも思った映画でした。
「そして、バトンは渡された」もこの映画も家族をテーマに描いた映画でした。この映画では、家族という固定された枠の中で、家族同士の立場や繋がりを保ちながら、個々の自らの生活が後回しになっている人々の日常が描かれていました。血縁関係の枠以外で繋がって行く家族もいれば、血縁関係の家族という枠の中で、右往左往しながら毎日を送って行く家族がいるということ、それぞれ家族の定義は違っていていいかもしれないけれど、一度だけの人生は、どんな家族に身を置いていたとしても、自らの一度だけの人生を自らの思いを叶えるべく我儘に生きて行くことも大切なことなんだろうと思いました。