レンタル店で借りて観賞したアニメ『ジョゼと虎と魚たち』の感想です。
田辺聖子原作のアニメ作品です。原作は読んでいませんでした。
車椅子で坂道を突進していく脚が不自由な24歳の女性・通称ジョゼ、そのとき、偶然見掛けて助ける海洋生物学を専攻する大学4年生の恒夫と出会います。ジョゼは祖母と二人暮らし。ジョゼを助けた恒夫は祖母からジョゼが家の外に出ないように管理するアルバイトをして欲しいと頼まれます。恒夫はメキシコにしか生息しない幻の魚の群れを見たいという夢を持ちながらダイビング店でのアルバイトをしていましたが、ジョゼの面倒を見る結構高額だったアルバイトを掛け持ちで引き受けることになりました。彼の夢のためにはより多くの資金をアルバイトで稼いでおきたかったからでもありました。そのアルバイトは、ジョゼの要望することに応えて行くという結構大変な内容のアルバイトでした。四葉のクローバーを摘みに行ったり、畳の網の目がいくつあるか数えたり、ひねくれもので口が悪いジョゼの相手をしながらアルバイトに励んで行きました。ある日、本と絵の世界しか知らなかったジョゼが本当に行きたかった海の味を確かめるために一緒に海に行くことになりました。それを機会に、家からほとんど外に出ない生活を送っていたジョゼが恒夫といろいろなところに出掛け、外の世界の存在を体感しているシーンや二人の距離が次第に接近していくシーンはまぶしいくらい純粋でキラキラしていたシーンでとても印象に残りました。
観覧車に初めて乗ったり、クレープを食べたり、水族館でジンベイザメを見たり、書店や図書館に一緒に出掛けたりと、いろいろな外の世界を二人で出掛けて行きました。ジョゼは彼女が好きな小説家サガンの小説に出てくる主人公の名前で、ジョゼはその主人公になりたかったかのようにその主人公の名前を名乗っていました。図書館でサガンが好きな司書さんに出会って、親しくなったりというシーンもあり、原作はだいぶん前のものなのに、たぶん原作を現代風にアレンジされているんだろうなあと思いました。この映画で描く世界は、何の損得や恩恵も想定しないで、人と人が自然に手を差し伸べ、助け合う励ましや気持ちが自然に湧き起こる様が本当に純粋で美しくて、心温まる、時代を超えた物語なんです。
ある日、二人は喧嘩してしまい、道路で車にはねられそうになるジョゼを恒夫が助けに行ったのですが、車にはねられ、恒夫は脚を怪我してしまいます。夢だったメキシコに行けなくなるかも、ダイビングして幻の魚を見に行けなくなるかもという窮地に陥ってしまいます。夢を諦めかけた恒夫を励まそうとジョゼは得意の絵で紙芝居を作り、図書館で親しくなった司書さんに依頼し、読み聞かせをすることになりました。その紙芝居は恒夫への思いが詰まっていた心の籠った紙芝居でした。ジョゼが恒夫からいつのまにかもらっていた外の世界に踏み出すような勇気や励ましをこの紙芝居の物語に託しました。二人にしかわからない二人の気持ちが寄り添う素敵なシーンでした。観終えたらいい映画だったなあ、なんかとても美しい映画だったなあと思いました。オススメの映画です。
この映画は大阪が舞台なので、現在の大阪などの風景がたくさん出てきていました。梅田の赤い観覧車、梅田の文字が書かれたベンチ、HEPファイブ前のクリスマスの大きなプレゼントの箱、海遊館、大阪メトロやJRの電車、てんしばやアベノハルカス、天王寺動物園、桜の宮公園、道頓堀のグリコの看板、なんばパークス、須磨海岸は、観ていたらどこなのかすぐにわかりました。映画の中で映し出されるこれらの大阪の風景を見るとその場所に行ったことがある方だったらどこなのかすぐにわかるくらいそっくりの背景でした。川沿いに咲いていた彼岸花がアップされて映し出されていたり、桜の宮公園の桜の風景が映し出されていたり、見慣れていた大阪の風景をアニメ越しに観賞したら、大阪の街は見方を変えるとこんな風に見えるんだなあと不思議にも感じた美しい背景に魅了されました。