さて戻ると、例えばこのジョンソンの公式証言のみならず非公式の陳述においてすら、証言の証拠能力は限定的であることが理解できる。人間の記憶自体がかなり曖昧なものである上、政治的陰謀によるこうした事件では、それはなおさらである。
だからこそ、事実を端的に写し取った視覚的証拠としての写真・映像等の記録が重要である。それこそ捏造・変造でもされない限りは。ザプルーダー・フィルムに関する変造疑惑を後程取り上げたい。
この事件は、現在に至るも真実だと喧伝されている公式説に真っ向から矛盾する視覚的証拠が多数残されている点で、きわめて稀有な事例である。それらが意味するところをこれまで見てきた。
それでも真実性に疑いの余地のない重要証言が存在する。しかしその重要性は、これまでほとんど認識されてこなかった。それを改めて視覚的証拠と対照することで、その意味が再認識されることを、以下見ていきたい。
「オズワルドの第二の銃弾」として偽装された実際の複数の射撃について言えば、証言者として最重要なのは、狙撃を受けた大統領に最も近い位置にいた人々である。暗殺を間近で体験した人物、それはリムジン上の人物をおいてほかにない。
その筆頭は、自ら銃撃の巻き添えを食らったコナリー州知事であろう。
彼は地方政府の長として連邦政府内の政治的暗闘と距離がある上、何よりターゲットである大統領の前席というきわめて危険な位置に座らされ、実際に瀕死の重傷を負っている。彼が事件の陰謀と関係があった可能性はゼロだと断定できる。
被弾し生還した生存者コナリー知事は、ウォーレン委員会での証言において、どのように証言しているだろうか。
委員会報告書本文によれば、彼の証言は次の通りである。前席の彼は自身の被弾まで大統領のほうは見ていなかったため、それと大統領の被弾との関係は認識できていない。
実際、この証言のとおり、リムジンが交通標識にさしかかる少し前の時点で、前方を向いていた知事が右を向いているのは、ザプルーダー・フィルムから確認できる。
この動作は、証言における「he instinctively turned to his right because the shot appeared to come from over his right shoulder」との言葉に確かに対応していると見える。知事は音のした方向を見ようと目をやったのである。
銃声を「右」ないし「右後方」からとしたこの陳述とそれに対応する動作は、知事とほぼ同じ瞬間に起きている大統領やリムジン近辺の少女及び女性の反応に、タイミングも方向も一致している。
※161コマ目 最初の「銃声」とされる音が起こる直前またはその瞬間。大統領は正面を向き、前席のコナリーはこの時点では証言とは反対に左側を向いているのがわかる。進行方向左側の沿道の「フードを被った走る少女」と「後ずさりする女性」にも、特に変わった様子は見られない。
※167コマ目 大統領は右を振り返り始め、コナリー知事も正面を向き直る。ちょうどこのあたりのコマで少女が足を止める。すぐそばの女性も上を見上げ手に持ったハンカチか何かを振るような動作を始める。
※180コマ目 大統領は進行方向右側の観衆に手を挙げながら右側を向きはじめる。コナリー知事の顔はちょうどピラーの陰になっているが、大統領と同じく右側を向いているように見える。この時点で少女は通りの向かい側を向きながらその場で足を止める。女性はリムジンが目の前を行くのに、上方を見つめながらさらに後ずさりをしていく。
※187コマ目 右手を挙げた大統領は車両からみて真右方向を気にしているように見える。コナリー知事は顔を上げて、証言のとおり再び正面に向き直ろうとしている。コマ数で意識すると長いようだが、この間161コマ目から数えて1.5秒、一瞬の出来事と言える。
オズワルドのいたとされる窓はこの時点のリムジンから見てほぼ真後ろに位置するが、大統領やコナリー知事らの映像の姿は、むしろリムジンの真右の方向を指向している。その位置は、教科書倉庫ビル西南角(オズワルドがいたとされる東南角とは反対側)のあたりと見るのが自然である。
これらから考えて、教科書倉庫ビルのその位置から、地上の一部の人々を驚かすような大きな音があったのだと推測される。
先の記事では、アルトジェンズ写真の手前側の観衆たちに見られる車列後方を振り替える反応を、シークレットサービスらの反応と同様「後方から飛来する銃弾を察知したもの」と解釈したが、それより前のタイミングで起きていた知事らの反応からすれば、むしろ直上方からの音への反応、ないしは両者への反応であったのかもしれない。彼らの立っている位置が、通りの向かい側の少女らと対応しているからである。
※ザプルーダー映像と通りの反対側から撮影されたアルトジェンズ写真。前述のとおり、マルを付した人物に限って、リムジンから目を離し後方を振り返るような反応をしている。彼らの位置はオズワルドの窓とは建物の反対側に位置する。左から二番目のマルのヘルメット姿の作業員に注目。
※162コマ目 手前側の観衆の左端に、上掲のアルトジェンズ写真で反応を示していたヘルメットの作業員がいる。マルを伏した人物たちが、最初の「音」のした瞬間にちょうどリムジン間近にいて、通りの向かい側の少女や女性の位置とも対応していることが確認できる。
※エルム通りの俯瞰画像 上記の反応時のリムジンや沿道の人物たちの、映像や写真から確認できる大まかな位置を示す。オズワルドがいたはずの教科書倉庫ビルの東南角はそこから離れ、リムジンから見て真後ろの方向に位置している。
知事は最初に鳴り響いた音を直ちに「ライフルの銃声」と認識したと明言しているが、一方でより発生源から近いはずのオズワルドの窓の直下にいる観衆たちは何も聞いた様子はない。
※三たびの掲載となるが、強調したいのは、これらの観衆の位置は「オズワルドの窓」の直下であることだ。大統領らが反応を示した時点でのリムジンの位置と比較して、はるかにカルカノの銃口から近い。
つまり知事が耳にしたのは、ウォーレン報告書が主張するような「オズワルドがミスした初弾の銃声」では明らかにない。この矛盾が示すのは、「オズワルドの銃撃」を擬装する何らかの音が、リムジンから見て右手上方から起きた可能性である。しかしこのことは先に触れたとおりであり、先を急ぐことにする。
そして、知事は「第二の銃声によって被弾したと確かに思った」としながら、一方で「その銃声は聞こえなかった」と述べている。この言葉の意味するところは何とも言いがたいが、被弾で重傷を負った知事が銃声を認識し得なかったことは、報告書の語るとおりありうるだろう。
むしろここでは、実際の最初の音(映像によれば、この時点では大統領は被弾していない)から知事が背中に衝撃を受けるまでの間、証言によれば「銃声が存在しなかった」ことのほうが重要である。
なぜなら、これは複数の銃撃、特に大統領の上背部に命中した銃撃にはサウンドサプレッサーや発射薬調整などによる消音措置がとられていたとの、本稿での推測を裏付ける証言だからである。
被弾で意識不明の重体となった知事の、しかも後日の証言については証拠能力に疑問が生じるとはいえ、しかし大統領の間近で銃撃を体験することとなった人物の最重要の証言であることに変わりはない。
彼の証言による限り銃声はただの1回、映像や写真は、それがオズワルドの犯行を擬装するためのフェイクだったことを示している。
つまり、それとは別のタイミングで起こった銃声なき銃弾によって大統領が(または、ことによると知事自身も)傷ついたことを、コナリー知事は証言していたのである。
だからこそ、事実を端的に写し取った視覚的証拠としての写真・映像等の記録が重要である。それこそ捏造・変造でもされない限りは。ザプルーダー・フィルムに関する変造疑惑を後程取り上げたい。
この事件は、現在に至るも真実だと喧伝されている公式説に真っ向から矛盾する視覚的証拠が多数残されている点で、きわめて稀有な事例である。それらが意味するところをこれまで見てきた。
それでも真実性に疑いの余地のない重要証言が存在する。しかしその重要性は、これまでほとんど認識されてこなかった。それを改めて視覚的証拠と対照することで、その意味が再認識されることを、以下見ていきたい。
「オズワルドの第二の銃弾」として偽装された実際の複数の射撃について言えば、証言者として最重要なのは、狙撃を受けた大統領に最も近い位置にいた人々である。暗殺を間近で体験した人物、それはリムジン上の人物をおいてほかにない。
その筆頭は、自ら銃撃の巻き添えを食らったコナリー州知事であろう。
彼は地方政府の長として連邦政府内の政治的暗闘と距離がある上、何よりターゲットである大統領の前席というきわめて危険な位置に座らされ、実際に瀕死の重傷を負っている。彼が事件の陰謀と関係があった可能性はゼロだと断定できる。
被弾し生還した生存者コナリー知事は、ウォーレン委員会での証言において、どのように証言しているだろうか。
委員会報告書本文によれば、彼の証言は次の通りである。前席の彼は自身の被弾まで大統領のほうは見ていなかったため、それと大統領の被弾との関係は認識できていない。
Governor Connally testified that he recognized the first noise as a rifle shot and the thought immediately crossed his mind that it was an assassination attempt. From his position in the right jump seat immediately in front of the President, he instinctively turned to his right because the shot appeared to come from over his right shoulder.
Unable to see the President as he turned to the right, the Governor started to look back over his left shoulder, but he never completed the turn because he felt something strike him in the back. In his testimony before the Commission, Governor Connally was certain that he was hit by the second shot, which he stated he did not hear.
コナリー知事は、最初の音をライフルの銃声と認識し、すぐに「暗殺の企てだ」との考えが脳裡をよぎったと証言した。大統領のすぐ前の右側ジャンプシートの彼の位置から、彼は本能的に右を振り返った。銃声が彼の右肩ごしに聞こえてきたように思えたからである。
右を振り返って大統領が見えなかったので、知事は左を振り返ろうとしたが、何かが背中に衝突するのを感じ、振り返ることができなかった。コナリー知事は委員会以前の陳述で「第二の射撃によって被弾したと確かに思った」としており、その銃声は聞こえなかったと述べている。
(ウォーレン報告書本編pp49-50)
Governor Connally's testimony supports the view that the first shot missed, because he stated that he heard a shot, turned slightly to his right, and, as he started to turn back toward his left, was struck by the second bullet.^^^ He never saw the President during the shooting sequence, and it is entirely possible that he heard the missed shot and that both men were struck by the second bullet.
コナリー知事の証言は最初の銃声がミスによるものだったとの見解を支持している。それは彼が銃声を聞き、少し右を振り返り、そして左の方向を振り返ろうとした時、第二の銃弾に襲われたと述べているからである。知事は一連の銃撃の間、一度も大統領を見ていない。彼がミスした銃声を聞き、そして両者が第二の銃弾で傷ついたことは、全く起こりうる。
(同p112)
Unable to see the President as he turned to the right, the Governor started to look back over his left shoulder, but he never completed the turn because he felt something strike him in the back. In his testimony before the Commission, Governor Connally was certain that he was hit by the second shot, which he stated he did not hear.
コナリー知事は、最初の音をライフルの銃声と認識し、すぐに「暗殺の企てだ」との考えが脳裡をよぎったと証言した。大統領のすぐ前の右側ジャンプシートの彼の位置から、彼は本能的に右を振り返った。銃声が彼の右肩ごしに聞こえてきたように思えたからである。
右を振り返って大統領が見えなかったので、知事は左を振り返ろうとしたが、何かが背中に衝突するのを感じ、振り返ることができなかった。コナリー知事は委員会以前の陳述で「第二の射撃によって被弾したと確かに思った」としており、その銃声は聞こえなかったと述べている。
(ウォーレン報告書本編pp49-50)
Governor Connally's testimony supports the view that the first shot missed, because he stated that he heard a shot, turned slightly to his right, and, as he started to turn back toward his left, was struck by the second bullet.^^^ He never saw the President during the shooting sequence, and it is entirely possible that he heard the missed shot and that both men were struck by the second bullet.
コナリー知事の証言は最初の銃声がミスによるものだったとの見解を支持している。それは彼が銃声を聞き、少し右を振り返り、そして左の方向を振り返ろうとした時、第二の銃弾に襲われたと述べているからである。知事は一連の銃撃の間、一度も大統領を見ていない。彼がミスした銃声を聞き、そして両者が第二の銃弾で傷ついたことは、全く起こりうる。
(同p112)
実際、この証言のとおり、リムジンが交通標識にさしかかる少し前の時点で、前方を向いていた知事が右を向いているのは、ザプルーダー・フィルムから確認できる。
この動作は、証言における「he instinctively turned to his right because the shot appeared to come from over his right shoulder」との言葉に確かに対応していると見える。知事は音のした方向を見ようと目をやったのである。
銃声を「右」ないし「右後方」からとしたこの陳述とそれに対応する動作は、知事とほぼ同じ瞬間に起きている大統領やリムジン近辺の少女及び女性の反応に、タイミングも方向も一致している。
※161コマ目 最初の「銃声」とされる音が起こる直前またはその瞬間。大統領は正面を向き、前席のコナリーはこの時点では証言とは反対に左側を向いているのがわかる。進行方向左側の沿道の「フードを被った走る少女」と「後ずさりする女性」にも、特に変わった様子は見られない。
※167コマ目 大統領は右を振り返り始め、コナリー知事も正面を向き直る。ちょうどこのあたりのコマで少女が足を止める。すぐそばの女性も上を見上げ手に持ったハンカチか何かを振るような動作を始める。
※180コマ目 大統領は進行方向右側の観衆に手を挙げながら右側を向きはじめる。コナリー知事の顔はちょうどピラーの陰になっているが、大統領と同じく右側を向いているように見える。この時点で少女は通りの向かい側を向きながらその場で足を止める。女性はリムジンが目の前を行くのに、上方を見つめながらさらに後ずさりをしていく。
※187コマ目 右手を挙げた大統領は車両からみて真右方向を気にしているように見える。コナリー知事は顔を上げて、証言のとおり再び正面に向き直ろうとしている。コマ数で意識すると長いようだが、この間161コマ目から数えて1.5秒、一瞬の出来事と言える。
オズワルドのいたとされる窓はこの時点のリムジンから見てほぼ真後ろに位置するが、大統領やコナリー知事らの映像の姿は、むしろリムジンの真右の方向を指向している。その位置は、教科書倉庫ビル西南角(オズワルドがいたとされる東南角とは反対側)のあたりと見るのが自然である。
これらから考えて、教科書倉庫ビルのその位置から、地上の一部の人々を驚かすような大きな音があったのだと推測される。
先の記事では、アルトジェンズ写真の手前側の観衆たちに見られる車列後方を振り替える反応を、シークレットサービスらの反応と同様「後方から飛来する銃弾を察知したもの」と解釈したが、それより前のタイミングで起きていた知事らの反応からすれば、むしろ直上方からの音への反応、ないしは両者への反応であったのかもしれない。彼らの立っている位置が、通りの向かい側の少女らと対応しているからである。
※ザプルーダー映像と通りの反対側から撮影されたアルトジェンズ写真。前述のとおり、マルを付した人物に限って、リムジンから目を離し後方を振り返るような反応をしている。彼らの位置はオズワルドの窓とは建物の反対側に位置する。左から二番目のマルのヘルメット姿の作業員に注目。
※162コマ目 手前側の観衆の左端に、上掲のアルトジェンズ写真で反応を示していたヘルメットの作業員がいる。マルを伏した人物たちが、最初の「音」のした瞬間にちょうどリムジン間近にいて、通りの向かい側の少女や女性の位置とも対応していることが確認できる。
※エルム通りの俯瞰画像 上記の反応時のリムジンや沿道の人物たちの、映像や写真から確認できる大まかな位置を示す。オズワルドがいたはずの教科書倉庫ビルの東南角はそこから離れ、リムジンから見て真後ろの方向に位置している。
知事は最初に鳴り響いた音を直ちに「ライフルの銃声」と認識したと明言しているが、一方でより発生源から近いはずのオズワルドの窓の直下にいる観衆たちは何も聞いた様子はない。
※三たびの掲載となるが、強調したいのは、これらの観衆の位置は「オズワルドの窓」の直下であることだ。大統領らが反応を示した時点でのリムジンの位置と比較して、はるかにカルカノの銃口から近い。
つまり知事が耳にしたのは、ウォーレン報告書が主張するような「オズワルドがミスした初弾の銃声」では明らかにない。この矛盾が示すのは、「オズワルドの銃撃」を擬装する何らかの音が、リムジンから見て右手上方から起きた可能性である。しかしこのことは先に触れたとおりであり、先を急ぐことにする。
そして、知事は「第二の銃声によって被弾したと確かに思った」としながら、一方で「その銃声は聞こえなかった」と述べている。この言葉の意味するところは何とも言いがたいが、被弾で重傷を負った知事が銃声を認識し得なかったことは、報告書の語るとおりありうるだろう。
むしろここでは、実際の最初の音(映像によれば、この時点では大統領は被弾していない)から知事が背中に衝撃を受けるまでの間、証言によれば「銃声が存在しなかった」ことのほうが重要である。
なぜなら、これは複数の銃撃、特に大統領の上背部に命中した銃撃にはサウンドサプレッサーや発射薬調整などによる消音措置がとられていたとの、本稿での推測を裏付ける証言だからである。
被弾で意識不明の重体となった知事の、しかも後日の証言については証拠能力に疑問が生じるとはいえ、しかし大統領の間近で銃撃を体験することとなった人物の最重要の証言であることに変わりはない。
彼の証言による限り銃声はただの1回、映像や写真は、それがオズワルドの犯行を擬装するためのフェイクだったことを示している。
つまり、それとは別のタイミングで起こった銃声なき銃弾によって大統領が(または、ことによると知事自身も)傷ついたことを、コナリー知事は証言していたのである。
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