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JFK暗殺事件の真相――オズワルド単独犯行説の虚構を暴く 45 リンドン・B・ジョンソンの証言

2018-08-02 | JFK暗殺事件について
 これらのことを踏まえると、「就任と同時に暗殺の陰謀を知った」というジョンソンのインタビューでの言葉は、さらに重大な意味を持つことになる。それは、「大きな隠謀の一環として自分が大統領に就任することを知っていた」という、彼の置かれた状況を踏まえた言葉だったことになるからである。

 すなわち、機上での就任宣誓の際どころか、暗殺のまさにその瞬間に、ということはそれ以前から、彼は自分が陰謀によって昇格することを知っていたのである。

 ところで、もともとJFK暗殺についてジョンソンを首謀者と見る向きは根強い。
 詳しくはバー・マクレラン『ケネディを殺した副大統領』(原題"Blood, Money & Power:How L.B.J. Killed J.F.K.")参照。同書は、ジョンソンの汚れ仕事を長年請け負ってきたM・ウォレスなる人物が教科書倉庫ビル六階にいたことが、残された指紋の分析によって裏付けられたことを明らかにした。そして、そのことを中心に、ジョンソン首謀者説を主張している。

 その主張はともかくとして、少なくとも同書による限り、指紋の一致は科学的に確実と見える。
 だとすれば、その時間が犯行の最中か、はたまた前なのか後なのかはともあれ、ジョンソンにごく近い関係者がオズワルドが銃を放ったとされるスナイパーズ・ネストにいたことは、おそらく間違いない。
 発砲そのものをウォレスが行ったのか、そうではなく現場の準備または後処理のために彼がそこにいたのか、想像は尽きないが、ここではそのことは措く。



 決定的なことは、ジョンソンがこの事件に実行段階で何らかの関与をしていたことが、ウォレスの指紋の存在によってより確実となるという、その一点にある。

 仮に事件のまさにその時に、手下のウォレスが教科書倉庫ビルにいたのだとすれば、教科書倉庫ビル前に差し掛かった時点で銃弾を避ける行動をジョンソンが取ったのは、さらに当然であったことになる。


※疑惑の副大統領車上のジョンソン 本稿では婦人の向かって左隣に座っているジョンソンの姿が一見して見えないことから「身を屈めている」としている。実際、フロントガラス越しに沿道の人物が映っていると見れば、彼の姿がそこにないように見える。一方で、このバックミラーのあたりに位置する「灰色の円形」を人の頭部だと見れば、そこにジョンソンがいることになり、この連載で断言したことは重要なところで根拠を失う。しかしこの円形を人の頭部と見ることは難しい。昼12:30のこの場面で、沿道の何かによって彼だけに影がかかるとはない。すると、この「顔のない灰色の円形」は一体何なのか? ほかの「反応」を示している人物と同じく、ジョンソンは後方を振り返っているとでも言うのだろうか? いずれにせよ、この不鮮明なモノクロの拡大画像では判断することが難しい。ここでは自然な視覚認識として、彼の姿がそこにないと見ることにする。

 ことによると「音」が存在とは無関係に、エルム通りに入ったタイミングで、予定されていた後任大統領として回避行動を取るよう勧告されていた可能性すらある。隣の婦人の無反応からがすれば、そのほうがむしろありうるかもしれない。

 確かに事件によって大統領に昇格した彼こそ、暗殺から最大の個人的利益を受けた人物であり、単純に考えれば筆頭の容疑者となる。彼はケネディがこうした形で命を落としでもしないかぎり、かねて望んでいたその地位を襲うことは決してなかったのだ。
 
 では、ジョンソンが単独でこの陰謀を構想し実行した可能性はあるだろうか。上掲書ではそのように捉えており、教科書倉庫六階からの、オズワルドを含む複数犯による犯行だと見ているが、その点の推論は指紋以外は根拠が弱い。これまで見てきたように、教科書倉庫以外にも複数箇所からの射撃があったことはほぼ確実である。

 よく知られているように、アメリカの副大統領の権限とは限られたものである。いかに自身の地元テキサスとはいえ、これほどの暗殺計画の実行が、彼に可能だったとは考えがたい。
 本稿のテーマである銃撃に限ってみても、次の通り隠謀の広がりが相当のものだったことが推察される。

○囮の用意と始末:
 単独犯行をでっち上げるためには、「ソ連帰りのオズワルド」なる異常な経歴の人物をピックアップし、事前に教科書倉庫会社に送り込み、事後口封じのため始末する必要がある。
○偽装工作:
 犯行後に警察の監視下にあったはずの現場で、スナイパーズ・ネストを偽装するなどの工作が行われた(倉庫員の証言から、この工作は事前ではありえない)。これにウォレスが関わった可能性はある。
○組織的犯行の遂行:
 少なくとも4ヶ所に狙撃班が配置された。また、連続する統制射撃が行われ、撤収にも成功している。
○関係機関の取り込み:
 当日の動きを見ただけでも、すくなくともCIA、軍、ダラス市警、シークレット・サービスが関与している可能性はきわめて濃厚である。
○キル・ゾーンの設定:
 パレードルートの終端として、きわめて都合よく射撃に絶好な地点が設定されている。ルートの選定自体が犯行計画に組み込まれていたと考えざるを得ない。
 (映画「JFK」でもそう描かれ、この事件ではよく語られているように、「パレード・ルートが直前になってメイン通りを直進せず右折して、エルム通りに鋭角に侵入するルートに変更された」とされているが、問題はそこではなく、この地点を通るルートを採用した、パレードの計画それ自体にある。)

 現職の副大統領であったジョンソンに、ここまで大規模な犯行計画を秘密裏に立てて実行する力はなかったであろう。
 現実的に考えられるのは、むしろ暗殺を予告され、それへの協力を要請されていた可能性である。だとすれば、その趣旨は次のようなものであっただろう。

 「11月22日のダラスでのパレードでは、エルム通りに入ってすぐに、後方からの射撃によってケネディは殺される手筈である。囮の配置もバックアップ射撃も抜かりなく手配済みで、失敗の懸念はない。あなたが望む大統領昇格にはこの手段しかないのはご承知のとおりだ。ただその隠蔽に事後も協力してくれさえすれば、あなたの地位は安泰だ。ただ、副大統領車も射線下に入ることになるので、頭上をいく銃弾にはくれぐれも注意願いたい。」

 たしかに犯行の主体にとっても、後継の政権による事件の真相追及を封じるため、暗殺で利益を受けるジョンソンのような人物を後がまに据えて利用することが不可欠であっただろう。彼がその地位にあるかぎり、犯行の隠蔽は保証されたも同然だからである。

 このようにジョンソンが、陰謀によって自身が大統領に就任することを、事件以前から知っていた可能性は高い。というよりもむしろ、アルトジェンズの写真をそれ以外に解釈することのほうが難しい。

 先に機上のジョンソンが、悲嘆のただ中のケネディ婦人と対照的に、腹心に笑みを送っていると見えるのを「不謹慎だが人間臭い」と書いた。が、以上のことを踏まえて改めて見てみれば、予告されたように首尾よく計画が成就し、目論見どおり自身が昇格したことにほくそえんでいるようにも見えてくる。




 まことに、テキストというのはコンテキスト次第でいかようにも読み取れるという、ひとつの実例であろう。しかし、この場合コンテキストは視覚的証拠というリアリティに基づいており、これを単なる幻想として片付けることは到底できまい。

 かくして、インタビューのジョンソンの言葉も、苦しい言い訳として見えて来ざるを得ない。これは波乱の公的人生を、死を目前にした彼が回顧するインタビューであった。その人生の栄光を、決して語り得ないどす黒い陰謀が汚してしまっている。彼がむかつきと共に事件のことを語ったのも当然だったのである。

 いまだ非公開となっている機密資料の核心には、政府部内の勢力によるクーデターの隠謀に加え、ジョンソンが事件に関与していたことを示す記録があるのではないかと強く推測される。
 たしかに何十年経とうと、他のすべては公表しても、大統領が前任者殺害の従犯であったというこの核心部分だけは、決して公開できまい。

 アルトジェンズ写真が写し取った真実、それを要約すれば「後任大統領をも計画に組み入れた巨大な陰謀が存在した」ということになる。
 この真実を抜きに、オズワルド単独犯行説そのままにこの事件を語ることなど、もはやナンセンスというほかない。

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