〈私〉はどこにいるか?

私たちは宇宙にいる――それこそがほんとうの「リアル」のはずである。この世界には意味も秩序も希望もあるのだ。

〈ロストジェネレーション〉補完計画 2

2007-03-07 | ロストジェネレーション論
2.私たちの世代が「ロスト」したものとは


さらに、人間にとって本来大切だったはずの、心の各レベルの「中味」とはいったい何であったのかを見ていく必要があると思います。

いうまでもなく喪失を問題にするからには、もともとあったはずの何がロストしてしまっているのかを見ておかなければ、最初からピントはずれな議論になってしまうに違いありません。
それが『朝日』の新年連載「ロストジェネレーション」に対する主要な批判点でもありました。

外面における私たちの適切な社会的行動を動機づけ基礎づけるものとは、健全な自己信頼感‐アイデンティティであり、それが内面の深層に根ざしたルーツによって生育するものであることは、人間として心を持っている限り、おそらく誰にも否定しがたい事実であると思われます。

そして健全なアイデンティティとそのルーツ(…と横文字でないと表現しづらいこと自体もまた、私たちの問題なのかもしれません)こそが、私たちがおそらく日本史上世代としてはじめて、文化状況つまり集団的な内面において根本的といっていいほどロストしてしまっているものなのではないでしょうか。

繰り返すように、それはロマンティックな観念論の「いいお話」ではなく、私たちがリアルであると感じているこの心の深層の基盤として現に存在しはたらいているものの病理であることを、よく意識する必要があると思われます。

つまり過去とのつながりというルーツが栄養不足で病んで枯れ、心がしぼみ荒んでやせ細り、至りついたのが私たちの世代〈ロストジェネレーション〉なのではないかということです。

そして根っこには当然さまざまな深みと広がりがありうるわけですが、ここでは本論全体の骨格として使わせていただくことになる予定の文献『生きる自信の心理学――コスモス・セラピー入門』(岡野守也著、PHP新書、2002年)に沿って、それを
・個人的
・社会的
・国民的
・コスモロジー的
の四つのレベルに区分し、それらがどういう意味で私たちからロストしているのかを掘り下げていくつもりです。

そしてそれらが保障してきたところの健全で適切な人生のシナリオ、社会を担う者として不可欠だったはずの背景的‐関係的な文脈、そういった心の深層に根ざすアイデンティティの無残な崩壊‐喪失状況こそが、私たちの世代的な問題の主要なポイントであることを見ていきたいと思います。



コメントを投稿