ひとり、ふたり、さんにん
ゆり 作
あたしにのいえにはパパがいない。
まえはいたんだけれど。
「なつみちゃん、きょうからパパとママはべつべつにくらすことになったの。なつみちゃんはママとふたりでこれからくらすの。でもパパはずっとなつみちゃんのパパだし、これからもあえるのよ。」
ってママはいって、あたしのことぎゅってだきしめたの。ママはないてるみたいで、あたしはなんにもきけなかった。
それから、せまくてなんだかくらいいえにひっこして、ママとふたりでくらしている。
ママはまいにちいそがしそう。あたしは二ねんせいになってから、へやのそうじとかりょうりとかてつだってるんだよ。えらいでしょ。っていってもサラダとめだまやきしかつくれないんだけどね。
ママはね、いつもつかれたかおでかえってくるんだけど、
「なつみ、いい子にしてた? なつみがいるから、かあさんがんばれるんだぁ。なつみちゃん、だ~いすき。」とか「かあさんのたいせつなたいせつななつみだよ。」 ってえがおになって、いつもだきしめてくれるんだ。
なつやすみまであと三日になった日のよる、いっしょにおふろにはいっているとき、ママはあたしにきいた。
「ねぇ、なつみ、やっぱりパパにあいたい?」
「…うん、パパにあいたい。なつやすみにあいにいってもいいよね? きょねんのなつ、パパとやくそくしたもの。」
「そうか、やっぱりパパにあいたいか。あいにいってもいいよ。でもちゃんとママのところへかえってきてよ。」
「あたりまえでしょ。なつみのうちはここだもの。ママといっしょのここ。あ、ママないてる~。」
「ないてない!」
そういってふたりでおゆかけっこしたの。
きょねんのなつやすみに一しゅうかん、パパのところへいってすごした。
パパはひとりだったよ。
そのとき、またらいねんもそのつぎのとしもなつやすみにあそびにおいでってパパはいった。
パパとはゆうえんちにいって、一日中ふたりでいっしょにあそんだの。よるになったら、そらに花火があがった。
パパとならんでいっしょにみたの。とちゅうからかたぐるまもしてもらった。
ひゅーー、どん。どん。
そらにおおきなおおきなひかりの花がさいていた。
あか、きいろ、オレンジ、みどり、あお。
いろんないろの花びらが、そらにぱぁっとさいて、そしてちってきえていった。
どん。どん。どん。どん。
つぎつぎと、いろとりどりの花があらわれた。
それからパパにおんぶしてもらって、いつのまにかねむってしまった。
ゆめのなかではね、ママとパパとあたし、さんにんでてをつないで花火をみていた。ママもパパもあたしもわらっていたよ。
ママにおもいきっていってみよう。
「ねぇ、ママとパパとあたしとさんにんで花火がみたいな。いっしょうのおねがい!」
パパにもでんわしておなじことをいってみよう。
あたしのねがいがかなえられますように! (おわり) 2003/5/22
よんでくれてありがとう! かんそうおまちしています。
追記 雑誌「公募ガイド」の「木暮正夫の童話の扉」で、優秀賞をいただいた作品です。
ゆり 作
あたしにのいえにはパパがいない。
まえはいたんだけれど。
「なつみちゃん、きょうからパパとママはべつべつにくらすことになったの。なつみちゃんはママとふたりでこれからくらすの。でもパパはずっとなつみちゃんのパパだし、これからもあえるのよ。」
ってママはいって、あたしのことぎゅってだきしめたの。ママはないてるみたいで、あたしはなんにもきけなかった。
それから、せまくてなんだかくらいいえにひっこして、ママとふたりでくらしている。
ママはまいにちいそがしそう。あたしは二ねんせいになってから、へやのそうじとかりょうりとかてつだってるんだよ。えらいでしょ。っていってもサラダとめだまやきしかつくれないんだけどね。
ママはね、いつもつかれたかおでかえってくるんだけど、
「なつみ、いい子にしてた? なつみがいるから、かあさんがんばれるんだぁ。なつみちゃん、だ~いすき。」とか「かあさんのたいせつなたいせつななつみだよ。」 ってえがおになって、いつもだきしめてくれるんだ。
なつやすみまであと三日になった日のよる、いっしょにおふろにはいっているとき、ママはあたしにきいた。
「ねぇ、なつみ、やっぱりパパにあいたい?」
「…うん、パパにあいたい。なつやすみにあいにいってもいいよね? きょねんのなつ、パパとやくそくしたもの。」
「そうか、やっぱりパパにあいたいか。あいにいってもいいよ。でもちゃんとママのところへかえってきてよ。」
「あたりまえでしょ。なつみのうちはここだもの。ママといっしょのここ。あ、ママないてる~。」
「ないてない!」
そういってふたりでおゆかけっこしたの。
きょねんのなつやすみに一しゅうかん、パパのところへいってすごした。
パパはひとりだったよ。
そのとき、またらいねんもそのつぎのとしもなつやすみにあそびにおいでってパパはいった。
パパとはゆうえんちにいって、一日中ふたりでいっしょにあそんだの。よるになったら、そらに花火があがった。
パパとならんでいっしょにみたの。とちゅうからかたぐるまもしてもらった。
ひゅーー、どん。どん。
そらにおおきなおおきなひかりの花がさいていた。
あか、きいろ、オレンジ、みどり、あお。
いろんないろの花びらが、そらにぱぁっとさいて、そしてちってきえていった。
どん。どん。どん。どん。
つぎつぎと、いろとりどりの花があらわれた。
それからパパにおんぶしてもらって、いつのまにかねむってしまった。
ゆめのなかではね、ママとパパとあたし、さんにんでてをつないで花火をみていた。ママもパパもあたしもわらっていたよ。
ママにおもいきっていってみよう。
「ねぇ、ママとパパとあたしとさんにんで花火がみたいな。いっしょうのおねがい!」
パパにもでんわしておなじことをいってみよう。
あたしのねがいがかなえられますように! (おわり) 2003/5/22
よんでくれてありがとう! かんそうおまちしています。
追記 雑誌「公募ガイド」の「木暮正夫の童話の扉」で、優秀賞をいただいた作品です。