僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

向田邦子との二十年/久世光彦

2010-10-06 16:34:14 | 読書
雨というものには匂いがあるもので、どこか艶めいた春の雨の匂いがしたのを覚えている。

白い雨が煙ると信号の色もにじんで見える。ふだんはさほど風情があるようには思えない青山通りが、こんな日は巴里の街角のように見えたりする。そんなことをぼんやり考えながらガラス窓の外を眺めていたら、信号が青になった横断歩道を、向田さんが薄いベージュのスカートをひるがえして走ってくるのが見えた。




今これを読んでいます。久世さんの文章は実に日本語の表現力があって、特に情景描写に卓越しています。


プロデューサーの久世光彦さんと脚本家でもある向田邦子さんの待ち合わせの場面であります。