僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

我が星の果てるまで

2011-01-20 14:52:52 | 漫画
弘兼憲史の漫画「黄昏流星群」の中に、「我が星の果てるまで」という作品がある。




主人公の和光被服社長、佐竹は医者に胃がんの宣告を受ける。ほっとけば余命半年だということだ。

彼は、入院しての治療を拒否し、残りの時間を好きなことをして過ごすことを決意し、社長を32歳の息子に譲り、車で旅に出るのだ。
目的は、死ぬ前に会っておきたい3人に会うこと。

一人目は高校時代の恩師、片岡先生。
哲学書にのめりこみ、思い悩んで自殺未遂まで起こした佐竹を救ったのが片岡先生の奥さんだった。母親がおらず、父親の手で育てられた佐竹は、先生の奥さんに母親の面影を見ていたのかも知れない。
よく手料理をごちそうになり、悩みも聞いてもらううちに彼は立ち直っていった。けれど片岡先生の奥さんは既に10年前他界していたのだ・・・


二人目は大学時代の親友、友広泰三。佐竹の女房、和光説子には友広も思いを寄せていたが、彼女は佐竹を選び結婚したのであった。
友広は実家の観光ホテルを継いだが、バブルの頃に改築、増築を繰り返したのが仇となり不渡りを出して倒産させてしまう。
果たして佐竹は友広に会うことができたのだろうか・・・


最後は高校時代憧れていた鷹取美智子。
今は、鹿児島の小さな駅前で小料理屋を開いている。
突然訪れて自分の名を名乗ると、なんと彼女も柔道部のキャプテンをしていた佐竹に憧れていたのだ。二人の仲は急速に深まっていく・・・


映画「象の背中」でも主人公がガンの宣告を受けて、わだかまりの残ったままの旧友に会いに行く場面があるし、突然初恋の女性に会いにいったりもする。
人は限りある時間を告げられたとき、それを惜しんで後悔のしない生き方を選ぶのであろうか。いやしくもきらきらときらめく思い出との齟齬に失望しようとも、命燃え尽きるまで自分の空洞を満たそうと奮い立つのかもしれない。