
昨日、会社に行く前に新橋駅に下り日比谷通りから2本こちら側にある赤レン
ガ通りに寄った。午前7時半、まだお目当ての店は開いていない、どうも開店時
間が9時に変わったらしい。ここの街路樹の赤花の花水木が少しは大きくなっ
た。
実は、この近所に以前勤めていた造園会社があった関係で土地鑑がある。どう
しようかと迷いながら東京慈恵医科大学・附属病院方面へ歩き始める。
ちょっと行くと、NHKの愛宕山の下にわたしが設計し施工した商業ビルの小
さな前庭がある。そこは角地になり歩道と一部分は一体化しているのだが、現状
は全体的に荒れ気味である。7メートルくらいの楠が3本が白い陶板状の外壁パ
ネルに接して伸び、磁器タイルの中の四角い植込み地3箇所にはけやきを植え
た。だが、このけやきの生育がすこぶる良いのだ。けやきは根元が窮屈そうであ
るが上空に枝を広げている。植栽密度が濃い。
建築設計は、RIA。施工は鹿島建設である。
あの時のプランニングにはクルマの交通量の多さと少なくない歩行者、それに
上に細長いビルを意識した。オーナーは‘ワールド’という自前ブランドを持つ
アパレルメーカーであった(現在は業種が変わっている模様)。今、振り返ると
“表参道”を少し意図していたものらしい。デザインコンセプトは賑わいのある
はなやかな雑踏、とでも言うべきか。
それから再び歩き、オランダ大使館の方へ登り坂を上って行く。その大使館の
向かい側には「春光会館」という日産グループの倶楽部がある。設計はまだ植栽
設計部門を持っていなかった日本設計、施工は日産建設である。工事はバブル景
気前であったろうか。建て替える前は小堀遠州の流れをくむ高低差を生かした庭
園が敷地の大部分を占めていたのであるが、それをつぶした。その名残りが正面
に相対していて垂れ乳の2本の大銀杏であり、今もある。この樹木は港区の保護
樹木に指定されており目通り周3メートル以上はゆうにあるだろう。
新築のガーデンプランでは、上の階で会議スペースと貴賓室サロンには中庭と
茶室に付随したベランダ側に坪庭を設けた、今で言う<屋上緑化>である。このこ
とは現地に来て思い出した。そして正面には主庭として、既存部分の山なりの
ラウンディングを生かし木曽石の崩れ積みで補強し、建屋側にフラットな稲田御
影の切石で短冊状に敷いた。その貼りパターンに加えて下草の配植にも趣向を凝
らした。端部に織部灯篭なども配した。
そこでは和洋折衷の静謐感のある美をもとめたものである。当日は、人目をは
ばかるようにして正面部だけのぞきこんで見た。ひっそりと、そのままのように
残っておりほっとした。
次いで、芝公園のベンチであたたかな春の陽光をあびて時間をつぶし、くだん
の和菓子屋さんの新生堂に寄り豆大福をもとめて、遅く会社へ出た。




