♪貴方だけには言えない事がある
それは死ぬまで言わない
鳴り響くベルに消される
窓越しの貴方のさよならの言葉
傷つくことに気付かないままに
暮らし続けたあの頃は
今にして思えば楽しかったものね
私は夢を追えないで
一人今汽車にのる
貴方は何も知らないままで
この駅に立たずんでいる
青春はいつも残酷なほどに
美しいドラマの幕を下ろしてゆく
体に宿した小さな
貴方の命を抱きしめて見つめる
貴方だけには言えない事がある
それは死んでも言わない
少年のかげりをの残したまま
(作詞・作曲:谷村新司)
いきなり歌詞を記したが、曲名は‘青春残酷物語’と言う。かつての松竹映画、大島渚監督のものとは異なる。あまり知られずにいる歌だ。
わたしが天王州アイル内の会社に勤めていた頃に、業務部門を充実させようと職安に求人をかけたら応募してきた中年女性がいた。新入りだからと、食事に誘い、カラオケに行った時に彼女が歌った曲だ。海外旅行が好きで歳は40過ぎで独身、面接、採用はわたしがおこなったのだが、結果として仕事も出来ず、性格が好ましくなく配属替えもしたのだが1,2年しか在籍しなかったと思う。結果的に、わたしに女性を見る目がないことになり、しばらく自己嫌悪に陥った筈である。
そのときに彼女が歌ったのがこれだ。そのとき彼女はぶっきらぼうに、これは谷村新司のそうあって欲しい願いを表現したもの、と言ったのでわたしは内心エッと感じた記憶がある。振り返ると、あれはむしろ彼女の未熟な恋愛経験をあらわしたものと思うのだ。
ともあれ、谷村新司には雄大なもの、雄々しいもの、センチメンタルなもの、旅情ものなどがあるが、これは意外なジャンルだ。