これは今のギボウシの圃場である。黄色くなったり、紅葉が一面にひろがり、なんだか、春先から夏までの移り変わりを思い出し、静かな生命の名残りを感じる。
そういえば、昔、北海道の登別からオロフレ峠を経て、洞爺湖付近の北湯沢というひなびた温泉場の小さな渓谷で白い葉の紅葉を見たっけなあ。オトコヨウゾメであったか、なんという灌木だったか。彼の地の紅葉は本州と異なり、降るような落ち葉、そこはざっくりとして荒々しい光景であったが、あれは良かった。その場の空気に透明感がありハラハラとしていた。
今はこんなふうに、見わたす限り、草紅葉に季節は変わった。これからは霜が降り、場合によっては白い世界に変わっていく。人事の苛酷さと森羅万象の輪廻。そして、それでもその無常感にあらがう日々の暮らしがある。