ここでは、これはと思ったわたし好みの寅さんの俳句を採録したい。
○花びらの出て又入る鯉の口
・・・これは晩春。わたしはてっきり鯉のぼりかと思ったら、これは生きた鯉で水面でのことらしい。
○ひばり突き刺さるように麦の中
・・・ストレートな麦畑の情景と超現実的な意趣。
○すだれ打つ夕立聞くや老いし猫
・・・間歇的に降る驟雨、物憂い姿態の老猫、それを見つめるわたし。絵画的なシーン。
○赤とんぼじっとしたまま明日どうする
・・・童謡の世界、風来坊の自分をうつしだす。
○冬めいてションベンの湯気ほっかりと
・・・わたしの作句の場合はカタカナ表現は考えられない。専門的な領域でもある植物名でもつかわず平仮名や漢字である。しかし、ここでは平俗を通り越したセンスがありそうだ。