ここではずいぶんと古くて半世紀ぐらいになるか、「北帰行」 の歌をとりあげる。歌詞の内容は静かでセンチメンタル、旋律は暗い悲愁感をたんたんとロマンチックに小林旭が歌いあげた頃には、わたしは多感であったらしい田舎の十代の少年期だ。きわめて素朴に南は明るくて北は寒くて暗いという、貧相で愚にもつかないイメージを持っていた頃である。それ以来、大人のわたしの胸中には今でもこの歌の余韻が残っている。
その後何かの折に、「北帰行」 の意味とは渡り鳥が冬越しの為に日本にいて、暖かくなった時期に北へ向かう野鳥の習性をあらわしたものと、あとで知った。つまり、生々流転する自然の生態系の世界のこと。それをなぞらえたのか。
しかし、文語体の歌詞である原曲の舞台は、大東亜戦争下、外地の満州である男性が恋愛事件で退学処分になり日本へ帰ることを歌ったものらしい。
そこで編曲がなされて、今に至るまで、大陸的な個性で浪々と歌うことが持ち味の小林旭で流行歌になったものだ。
作詞・作曲:宇田 博、唄:小林 旭
1 窓は夜露に濡れて
都すでに遠のく
北へ帰る旅人ひとり
涙流れてやまず
2 夢はむなしく消えて
今日も闇をさすろう
遠き想いはかなき希望(のぞみ)
恩愛我を去りぬ
3 今は黙して行かん
なにをまた語るべき
さらば祖国愛しき人よ
明日はいずこの町か
明日はいずこの町か
原曲(旅順高等学校寮歌)
1 窓は夜露に濡れて
都すでに遠のく
北へ帰る旅人一人
涙流れてやまず
2 建大 一高 旅高
追われ闇を旅ゆく
汲めど酔わぬ恨みの苦杯
嗟嘆(さたん)干すに由なし
3 富も名誉も恋も
遠きあくがれの日ぞ
淡きのぞみ はかなき心
恩愛我を去りぬ
4 我が身容(い)るるに狭き
国を去らむとすれば
せめて名残りの花の小枝(さえだ)
尽きぬ未練の色か
5 今は黙して行かむ
何をまた語るべき
さらば祖国 わがふるさとよ
明日は異郷の旅路
明日は異郷の旅路
そうでしたか。私も貴兄と同世代かと。
時折口遊みますが、旭の歌う1~3番迄しか知りませんでした。
楽しませて頂きました。またお訪ねさせて頂きます。
失礼しました。
では、また。
旅順大学辺に転向することから、日本に帰るのではなく、満州にかえるのではなかったのではないでしょうか・・?
作者(宇田 博)の小柄な 恋人は中国・台連に登場しますよ。
ではでは。