農政モニター調査 失望招かぬ総合政策を (2012年08月28日)
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野田内閣に関する日本農業新聞の意識調査は「民主党農政」への失望感をうかがわせる結果となった。食料自給率目標を50%に引き上げ戸別所得補償制度を導入したことはおおむね評価されているといえるが、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に前のめりな政権の姿勢が影響した。内政・外交を通じた検討が不十分だったことが農業政策と貿易政策との食い違いを生み、信頼を低下させた。次の総選挙は1年余の間に行われる。総合的な農業政策を各党には掲げてもらいたい。
調査は、本紙農政モニターを対象に7月下旬に行った。回答者の7割を農業者が占める。
調査結果では、「民主党農政」への評価について「当初は評価していたが、今は評価できない」が44%だった。政権交代1年後の2010年9月に行った調査から7ポイント増えた。「当初からずっと評価していない」は今回は42%で、ほぼ横ばいだ。
この2年近くの間に何があったのか。農業政策では、戸別所得補償制度がモデル対策から本格導入へと移行。自由記述などからは、見直した上で安定的に実施できるよう法制化を望む声が強く、制度そのものはおおむね支持されているといえる。また政府は11年10月、「食と農林漁業の再生のための基本計画・行動計画」をまとめ、平地で20~30ヘクタールの土地利用型農業を目指すことなどを目標に掲げた。規模拡大路線への転換とも受け取れるが、調査では、内容を知らない人が7割近くで、「民主党農政」の評価にそれほど影響したとは考えにくい。
最大の要因はTPP交渉参加問題である。10年10月、当時の菅直人首相が交渉参加の検討を表明。現在に至るまで政権は一貫して交渉参加に前のめりな姿勢を示してきた。一方、今回の調査では、TPP交渉への参加に反対が73%に上る。
貿易政策について民主党は、政権交代を実現した09年の総選挙時のマニフェスト(政権公約)で、米国との自由貿易協定(FTA)交渉の促進を掲げた。TPPに仮に日本が参加した場合、現行参加国の経済力から見て事実上の日米FTAになるといわれる。TPP交渉参加の検討は政権公約の推進と言えなくもない。ただ日米FTA交渉の促進に際し「食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない」と明記している。しかし具体策は、関税全廃が原則のTPPのような自由化度の高い経済連携を視野に入れた「基本方針・行動計画」でも、「個別の経済連携ごとに検討する」として先送りした。
もとより農産物輸出大国との経済連携と自給率の向上や農業・農村の振興を両立させるのは困難だ。次期総選挙での政権公約で各党は、他の政策との整合性を詰めた上で、総合的な農業政策を提示すべきである。有権者も、公約全体をよく吟味して判断することが求められる。
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野田内閣に関する日本農業新聞の意識調査は「民主党農政」への失望感をうかがわせる結果となった。食料自給率目標を50%に引き上げ戸別所得補償制度を導入したことはおおむね評価されているといえるが、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に前のめりな政権の姿勢が影響した。内政・外交を通じた検討が不十分だったことが農業政策と貿易政策との食い違いを生み、信頼を低下させた。次の総選挙は1年余の間に行われる。総合的な農業政策を各党には掲げてもらいたい。
調査は、本紙農政モニターを対象に7月下旬に行った。回答者の7割を農業者が占める。
調査結果では、「民主党農政」への評価について「当初は評価していたが、今は評価できない」が44%だった。政権交代1年後の2010年9月に行った調査から7ポイント増えた。「当初からずっと評価していない」は今回は42%で、ほぼ横ばいだ。
この2年近くの間に何があったのか。農業政策では、戸別所得補償制度がモデル対策から本格導入へと移行。自由記述などからは、見直した上で安定的に実施できるよう法制化を望む声が強く、制度そのものはおおむね支持されているといえる。また政府は11年10月、「食と農林漁業の再生のための基本計画・行動計画」をまとめ、平地で20~30ヘクタールの土地利用型農業を目指すことなどを目標に掲げた。規模拡大路線への転換とも受け取れるが、調査では、内容を知らない人が7割近くで、「民主党農政」の評価にそれほど影響したとは考えにくい。
最大の要因はTPP交渉参加問題である。10年10月、当時の菅直人首相が交渉参加の検討を表明。現在に至るまで政権は一貫して交渉参加に前のめりな姿勢を示してきた。一方、今回の調査では、TPP交渉への参加に反対が73%に上る。
貿易政策について民主党は、政権交代を実現した09年の総選挙時のマニフェスト(政権公約)で、米国との自由貿易協定(FTA)交渉の促進を掲げた。TPPに仮に日本が参加した場合、現行参加国の経済力から見て事実上の日米FTAになるといわれる。TPP交渉参加の検討は政権公約の推進と言えなくもない。ただ日米FTA交渉の促進に際し「食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない」と明記している。しかし具体策は、関税全廃が原則のTPPのような自由化度の高い経済連携を視野に入れた「基本方針・行動計画」でも、「個別の経済連携ごとに検討する」として先送りした。
もとより農産物輸出大国との経済連携と自給率の向上や農業・農村の振興を両立させるのは困難だ。次期総選挙での政権公約で各党は、他の政策との整合性を詰めた上で、総合的な農業政策を提示すべきである。有権者も、公約全体をよく吟味して判断することが求められる。