アンダンテ ~私の歩幅で~

季節のこと、音楽のこと、誕生日シリーズなど

ブラック・黒

2009年07月10日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

ブラック (black) (くろ) です。

黒と一口に言っても、
いろいろな黒があるなぁって思うこと、ありませんか?

たとえば、衣類。
黒と黒を合わせてみたら・・・・・あら?何か違う?
そんな風に感じたこと、ありませんか?

繊維の場合、黒という色を出すためには、
赤をどんどん濃くしていくか、
青をどんどん濃くしていくか、のどちらかだからです。

ですから、赤系の黒と、青系の黒を合わせると、
違いが見えるのですね。

それ以外にも、
繊維の質感によって、色の見え方は変わってきますね。

どの色もだと思いますが、
完全な「黒」というのは、ありません。

色には“幅”があると思うのです。
黒も、例外ではありません。


漢字の黒という字は、
「煙出し(煙突)」と「炎」とが、一緒になった文字。

火の上の煙突に、
煤(すす)が点々とついた状態を表しています。

また、別の説で、黒は、
「田」と「土」と「火」が、一緒になった文字。

焼き畑を行った後の土が黒くなることから、
その状態を表しているとも。


黒は、表意文字なんですね。

「黒」を「くろ」と読むことについても、
「暗い」が転じたものだとか。


日本語だけでなく、英語の「ブラック」も、
もともとは「煤で黒くなった」という意味だとか。

ほかの言語でも、黒を表す言葉には、
「燃える」という意味が含まれているらしいです。

人類が火を使うようになって、
物を燃やしたり、焼いたりするようになりました。

火だけでなく、そこから発生した煤も、
人類の生活に文化をもたらしたようです。

また火は、闇夜に明かりを灯すようにもなりました。

火は、人類に、
黒という色の概念をもたらしたようにも思えます。


すべての光を吸収することにより、黒く見えることから、
黒にはすべての色が含まれている、という考え方もあります。

また黒は、すべての色の引き立て役でもあるんです。
黒に囲まれた色や、黒と接している色は、
よりくっきりと鮮やかに、美しく見えますよね。

これは、光のなせる技でしょう。


黒は、一見単純で、とても身近で、神秘的な色。

錆浅葱

2008年10月26日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

錆浅葱 (さびあさぎ) です。

浅葱色が錆びたような色?
・・・ではありません。

錆というのは、金属の錆ではなく、
「寂び」に通じる、くすんだ色の形容。

江戸中期頃、青系の、くすんだ色を形容するには、
「錆」という修飾語をつけて
色の違いを表現するようになったとか。

近代に入ってからは、
「錆」という表現を使うことはなくなったようです。

ということは、この「錆」がつく色名は、
江戸時代中期限定なのですね。

「錆」がつく色名としては、錆浅葱のほか・・・
錆鼠(さびねず)、錆鉄御納戸(さびてつおなんど)、
錆御納戸(さびおなんど)、錆青磁(さびせいじ)、など。

また、赤錆色(あかさびいろ)、錆朱(さびしゅ)、
錆色(さびいろ)、などは、
鉄が酸化して錆の出た色そのものを、表しています。

青系の色につけられた「錆」は、くすみの形容で、
赤系の色につけられた「錆」は、鉄錆そのものの色。

浅葱色や錆御納戸などは、青系の色カテゴリーに属しますが、
この錆浅葱は、緑系の色カテゴリーに属します。

浅葱は藍染で、木綿などを染めていたようです。
着物や羽織の裏に使われた浅葱木綿は、
浅葱裏と呼ばれていたのですね。

ところが、錆浅葱がどのように染められたのかは、
記録に残っていないのだとか。

ふと「寂浅葱」という文字が
脳裏に浮かび上がってきました。

蘇 枋

2008年10月08日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

蘇枋 蘇芳 (すおう) です。

インドやマレー半島原産で、マメ科の植物に、
蘇枋 があります。
高さは、4メートルほどになるのだそうです。

その幹の芯材を砕いて煎じた汁が、染料になり、
赤系や紫系の色を染めることができます。

マレー語で sapang と呼ばれる蘇枋。
そして、中国人により当て字された名前が、
日本へやってきたのでしょうね。

蘇枋、蘇芳、蘇方・・・・・と、
「すおう」を表す漢字が複数あるのは、
そのような経緯からのようです。

そして植物の名前そのままの蘇枋色は、
最も紫に近い、暗めの赤色。

蘇枋の木は、奈良時代に、すでに移植されて、
日本の土地に根付いていたらしい。

舶来の染料ということで、平安時代には、
かなり珍重されていたといわれています。

あの清少納言も、一目置いた色。

江戸時代には、茜や紅花の代わりの染料として、
この蘇枋が、かなり重宝されていたようです。

一時期のブームは去りましたが、現代でも、
草木染めとして使われているようですね。

その昔、お船に乗って、日本へやってきた蘇枋は、
すぐさま日本の土地にしっくり馴染みました。

日本に来るまでのストーリーもあるのかと思うと、
深みのある色が、より一層味わい深く感じられます。

紅樺色

2008年09月16日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

紅樺色 (べにかばいろ) です。

樺桜の樹皮の色に、紅という修飾語をつけた、
染色の色名。

江戸時代後期に生まれた流行色。

同じ色を指して、古くからは、
紅柑子 とか 紅鬱金 と呼ばれていたようです。

もともとあった色に対して、新しい名前をつけて、
注目されるようにしたのかもしれません。

「今流行(はやり)の色」と言われるだけで、
とってもモダンで、まるで流行の最先端のよう!?

樺桜の樹皮は、曲げ物や弓の巻などに用いられており、
馴染みのある色だったとは思います。

そこに紅が加わり、「紅」という言葉がついただけで、
チョットお洒落な気分かも……。

ちなみに、樺色 は、11月9日の誕生色。
その樺色の、赤みが強い色が、紅樺色。

色カテゴリーとしては、紅樺色は赤系で、
樺色はオレンジ系と、所属は異なるのですね。

古くからあった色も、表現ひとつで、
新たな流行色になった紅樺色。

実際は同じなのに、ネーミングひとつで、
注目度がグンとアップ。

同じような現象は、いつの時代も、どこにでも、
常にありそうですネ。

常磐色

2008年09月03日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

常磐色 (ときわいろ) です。

常磐色は、松や杉などの常緑樹の、
老木の深い緑色。

常緑樹の老木は、何十年も、何百年も、
ずっと、緑色を保っています。

そこから、永遠不滅の象徴となったり、
神聖視されたりしています。

日本のように四季のある地域には、
季節の移ろいがあります。

若葉や柳の色から、若竹色、青竹色、老竹色、老緑、
などなど、季節や年月による変化のそれぞれにも、
先人たちは色の名前をつけてきました。

そのような変化があるからこそ、
いつまでも変わらない緑色が、
特別なものであることを感じられるのですね。

世の中が変化して、自分自身も変化していく中で、
いつまでも変わらずに・・・

ずっと同じでありたい。
ずっと同じであって欲しい。

そんな何かが、あなたの心にあるならば、それが、
あなただけの大切な「常磐」なのかもしれません。

オリエンタルブルー

2008年08月08日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

オリエンタルブルー (Oriental blue) です。

オリエンタルブルー。
直訳すると、「東洋の青」でしょうか。

18~19世紀。
中国の、濃い紫みの青い色の青絵磁器は、
チャイニーズブルーなどと呼ばれることに。

東洋だけでなく世界的にも、
中国は陶磁器の先進国でした。

ヨーロッパでは、オランダのデルフトという土地で、
初めて青絵の陶磁器製造に成功し、この焼き物の青が、
デルフトブルーと呼ばれるようになりました。

チャイニーズブルーやデルフトブルーなどを、
すべて総括した色名が、オリエンタルブルーなのだそうです。

磁器の染め付けには、呉須と呼ばれる顔料が使われています。

天然では、黒褐色の粘土として産出されます。
中国原産のこの粘土は「呉須土」と呼ばれ、
主成分は、酸化コバルトのほか、鉄やマンガンなど。

オリエンタルという言葉に、私は、何故か、
ロマンを感じてしまいます。

昔々のその昔から、地中で鉱物が混ざり合い。
採取された呉須土で染め付けされた青絵の陶磁器。

オリエンタルブルー。
その色の深さは、時の長さなのかもしれません。

エナメルブルー

2008年07月31日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

エナメルブルー (enamel blue) です。

エナメルというと、つやつやピカピカの
光沢が思い浮かんできます。

エナメルは、もともと砕いて溶解させた色ガラスのこと、
なのだそうです。

エナメルブルーは、16世紀半ばにできた色名。

16世紀頃の色ガラスというと、スマルト

スマルトの色ガラス顔料は、いろいろな名前で呼ばれていたらしく、
このエナメルブルーも、そのひとつとか。

実は、ロイヤルブルー も、
このスマルトから作られた色なのですね。

16世紀頃に名付けられた「ブルー」がつく色の多くは、
スマルトの青の可能性が高いです。

濃く深くインパクトのあるブルーで、
オシャレ名前がついている色は、
スマルト・ファミリーの一員かもしれません。

ヒアシンス

2008年07月16日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

ヒアシンス (hyacinth) です。

くすんだ紫みの青い色。

この色名は、20世紀に入ってから、
使われるようになりました。

19世紀後半から、化学染料が発達してきて、
多くの色が自由に作られるようになった頃に
できた色のようです。

しかしながら、それより前の14世紀頃には、
ヒアシンスブルーと、ヒアシンスヴァイオレットという
色名も使われていたらしい。

18世紀には、ヒアシンスレッドという色名も。

どの色も、くすんだ色みです。

ヒアシンスは、花のヒアシンスから。
そして、花の名前は、ギリシャ神話のヒアキントスから。

太陽神アポロンに愛されたヒアキントス。
嫉妬した西風の神ゼピュロスが起こした風で、
アポロンが投げた円盤が、ヒアキントスの額を直撃。

このときに流れた大量の血から、
ヒアシンスの花が生まれたとされています。

花のヒアシンス。
和名は「風信子(ふうしんし)」。
「飛信子」とも書くのですね。

「風信」は、風の便りのこと。

ややくすんだ色みが、少しばかりの寂しさを
感じさせてくれるような。

風に便りを託したいのか。
風の便りを待ちわびているのか。

色のヒアシンスには、
切なさも、感じられるような気がします。

ミッドナイトブルー

2008年07月13日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

ミッドナイトブルー (midnight blue) です。

ミッドナイトブルー。
とても濃い青や、黒にとても近い青などを、
英語では、「真夜中の青」と呼ぶのですね。

この色名は、20世紀はじめに登場したのだそうです。

中国(明)の青磁器の青い色からとられた色で、
もともとは、ミンブルー (Ming blue) だという説もあります。

ミンブルーが、いつしか、ミッドナイトブルーと
呼ばれるようになったのか。

単純なミンブルーよりも、ちょっとロマンティックな
ミッドナイトブルーという名前を、誰かがつけたのか。
その辺は定かではありません。

ミッドナイトブルー。

色そのものは、とても暗いのに、
色名から想像できるのは、明るいことだったり…。

色そのものは、とても深い青。
そして、その色から連想できることは、
人それぞれで、とても深く広いのかもしれません。

ホライズンブルー

2008年07月10日 | 色いろいろ
光があるところだけに存在する、色。

色は、一般に、
  ・色相: 単色光の波長に相当するもの
  ・彩度: 鮮やかさ (白みを帯びていない度合)
  ・明度: 明るさ (光の強弱)
の3要素によって、規定されます。

そして、私たちが認識する多くの色には、
それぞれ素敵な名前(固有色名)がつけられています。

固有色名を持つ、たくさんの色。
その中から、誕生色以外の色についても、
いくつか取り上げています。


きょうは、この色・・・ 

ホライズンブルー (horizon blue) です。

空の色のひとつ。
地平に接する、淡い緑みの空の色の名前。

日本語は、わりと繊細な表現が多い言語だと思うのですが、
こと晴天の空の色に関しては、語彙が少ないかもしれません。

少なくとも、色名の観点からは、
英語の方が表現が豊かなようにも思われます。

地平線に一番近い空の色を、単独の色として扱うなど、
英語では、空色のヴァリエーションがたくさんあるようです。

欧米では、空の存在感は大きく、その変化に対しては、
とても敏感に反応しているようですね。

だからといって、日本の地上から見る空の表情が、
乏しいわけではありません。

日々、その表情は違いますし、
えも言われぬ微妙なグラデーションなども、あります。

もしかしたら手が届くのでは、と思いたくなるくらい、
地上に一番近い、地平線上の空。

その空の色、ホライズンブルー。

ホライズンブルーの色をした空の範囲は小さいけれど、
その表情は、広い上空よりも繊細で豊かなのかもしれません。