自転車を夢中で漕いでくる 汗びっしょりだ
荒川の土手にのぼると 僕は草むらに寝転がった
夏草が頬にかぶり 乾いた匂いがかすかに漂う
仰向いて空を見上げると 限りなく青空が広がっている
真っ白な夏雲が 幾つも幾つも流れてくる
僕はその雲を眺めた 形をわずかに変えながら
雲は頭上を通り過ぎてゆく ゆったりとゆっくりと
すると白い“綿”の中から 少女の面影が現われた
それはしだいに大きくなり 青空を背に広がってゆく
僕はそのしなやかな姿態に うっとりと見とれる
少女は何日も前に アメリカへ留学してしまった
別れの挨拶に わが家へ来たとき
僕の部屋で 君はただ微笑んでいたね
家を去るとき 君と僕は軽く手を握り合った
一年間の別れが 耐えられないほどの長さに感じる
そして あの日 横浜の埠頭に見送りに行ったとき
君は船のデッキから 手を振って応えてくれた
嬉しそうな でも 別れを惜しむようなその笑顔
五色のテープが飛びかうなか 船は港を出てゆく
さよなら さよなら・・・ 僕は何度 心のなかで呟いただろう
雲に現われた少女の幻 それはやがて消えていった
限りなく広がる青空の彼方へと そして 流れる雲も去ってゆく
僕は体を起こし ゆっくりと土手をおりる
夏の陽射しに 川面がキラキラと輝いていた
僕は再び自転車に乗る 17歳の夏はこうして終わった
(2008年9月21日)
私の詩は、ぜんぜんだめだな、ということがわかり、いささかショックです。