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新聞をやめて久しい。
宣伝用の新聞がテーブルに置かれていたので目を通して見た。
キッチンのライトでは細かい字が読みづらい。義母に見せると見出しを読み始めた。
声を出して。
それから本文の記事を静かに読み始めた。見えるのだ。
メガネなし。98歳。
そして、核について少し会話した。義母は理解している。
被団協の写真をじっと見つめる。
おもえば彼女は空襲を逃れて来た人だ。ボクは戦争は知らないと言った。
先日、義母の横でフランス語の小説を訳していると、フランス語をなんでしているのだ。それは役に立つのか、フランス語より日本語勉強しろと、真っ向から迫って来た。
ボクは応戦してしまった。
今になると恥ずかしいことだ。
大きな声で、義母に向かって弁明を始めたのだから。
ショートステイから戻って来ても、ボクの名前はヒントなしで言える。お茶を淹れようと立ち上がる。
来年は99歳。
大したものです。