CR-Zがもうじき市販されますね。
”期待のハイブリッド・スポーツ”と言われ
エコ(笑)でスポーツ…という新ジャンル開拓の
期待がかけられています。
さて、本当にスポーティーなのでしょうか?
答え:出て乗ってみるまで分からない
とは言え、これではネタにも何にもなりませんので
今ある資料から期待する部分と懸念する部分とを
挙げてみたく思います。
■個人的に期待している部分
「低燃費なスポーツカー」という時代にマッチした(?)コンセプトが
競合車がいない状態で提案されたということ。
ハイブリッドカーに良くも悪くも既存のスポーティーと言う価値観が
運び込まれた…ということ
上記はスポーツカーが元気の無い今の時代において
スポーツカー復権の狼煙となりうるものでしょうし、
多くのマスメディアやファンが現実になって欲しいと思っている
ことでもあるかと思います。
”世界初の6MTハイブリッドカー”については
にっこり笑ってやりすごしたく思います(^^;)
ハイブリッドにMTは無い…と思っておられる方も多いのかな?と
雑誌などを見ていると思いますが、6段ギヤなのが初めてなだけで
ホンダIMAには最初からMTがあるのですから…。
後述する車重で懸念があるのですが、モーターの特性で
実際の車重の感覚よりも軽く動けるのではないかとも
思っております。
また燃費性能に関しては、既存のスポーツタイプと
一線を画する可能性があるのではないか?と思っております。
そうすれば独自の立ち位置が作れるかもしれません。
(逆にこれが崩壊すれば、存在意義自体が問われるので
ここについてはかなり慎重な作りが為されていると考えます)
■個人的に心配している部分
重い+遅い+燃費悪い…と言われないか?
車重は1150kg前後で、性能面で競合するであろうと思われる
スイフトスポーツ比で100kg弱重たいことになります。
パワーユニット総合での出力はどっこいどっこいの筈。
CR-Zはモーター付ですので出足でのアドバンテージがある筈ですが
回してしまったら差はほとんどないはずです。
CR-Zがパワーで売るスタイルの車ではないにしても
パワーについては、ホンダのスポーツモデルとしてシビアな目が向けられると思います。
世の中のパワーコンプレックスは強烈です。
初代CR-Xも最初は軽快スポーツカーでしたが、このコンセプトは通用せず
結局ハイパワー化したことで評価されたと言うのが実際のところです。
ロードスターにしても何にしても、スポーツカーにはハイパワー化しか
選択肢が無いというのがスポーツカーマーケットです。
重量差はこれ以降の全てでついて回ります。
仮にこれを受け止め得るタイヤを履かせれば、燃費はがた落ちです。
運動性能は摩擦の上に成り立つと言う物理法則からは
どんなクルマも逃れられません。
運動性能と燃費性能はトレードオフの関係です。
先の重量から続きますが、燃費性能で比較されるであろう
同銘柄のインサイトや他のハイブリッドと比較すると、
排気量が大きいことや、太いタイヤを履くこと、そして比較的大柄な車体と
相まって、燃費面で他のハイブリッドより劣る公算が高いです。
車重はそれこそインサイトと大差無いのです。
インサイトも実走燃費では20km/Lを超えるくらいが平均のようです。
上記を加味すると、実走では平均15~18程度でしょう。
スポーティーカーらしい走りをすれば落ち幅は大きいはずです。
そうなるとハイブリッドを搭載しない運動性能競合車との燃費差も
極めて小さいことになります。
(全くエコランしていないウチのNCP13でも12~15km/Lです)
後部にバッテリーを搭載することによる重量配分適正化があるとは言え、
このクラスで100kg重たいと言うのは大きいことです。
(NCP13だと-18psですが、200kg軽いのです)
このハンデを跳ね除けて、どれだけ独自の存在というアドバンテージを
持てるかがCR-Zのキモになりそうです。
もう一つはドライブフィール。
個人的にはこれを一番心配しています。
IMAは構造上、回転マスが大きいと思われます。
フライホイールを兼ねる大きく重たいモーターローターが
クランクに付いています。
当然回転の上昇/下降は鈍くなります。
CVTであれば、むしろ回転マスを生かしてスムーズな走りで
ユーザーに訴えることも出来るでしょうけれど
MTとなれば回転を合わせるまでのラグは無視できません。
6速あるので、当然ステップ比も小さく、ギヤチェンジ時の回転変動も
5速のそれより少ないのでしょうけれど
(そのための6速でないかと思っています)
小型・小排気量スポーツカーの魅力である軽快な運転感覚を
重量やタイヤサイズアップと上記共々が奪っていはしないかと
心配しているのであります。
そしてアフターパーツでもレスポンスは改善できません。
”フライホイールの軽量化”はできないのです。
IMAの軽量モーターなんてアフターパーツはありませんし、
あっても非常に高価でしょう。
電スロをむちゃくちゃに開けるセットアップにして
レスポンス良いと思わせるのが限度だと思います。
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”世界初のハイブリッドスポーツ”として独自の立ち位置を築けるのか?
それともスポーツモデルとして他と比較される立場に置かれるのか?
最初のユーザーインプレッション、
これがCR-Z成否の鍵を握っていると、私は思います。
エコカーとして見れば、確かに動力性能は高く、エコカーの流行や
付加価値、減税などあわせて商品として成り立つ可能性は高いと思います。
上記懸念を払拭する新しい走りの楽しさを持っていれば、
新しい価値をユーザーに訴えることも出来るでしょう。
逆に上記懸念が現実のものとなり、他のスポーツモデルとの比較が
為された場合、CR-Zの市場価値がどうなるか…私には分かりません。
懸念の方が多くなってしまいましたが、それだけ今までの価値観と違った
クルマである…ということでもあるでしょう。
そして懸念が多いのは、それだけこのCR-Zに上手く行って欲しいと思う
私なりの応援の気持ちがあるからです。
関心の無い、自分にはどうでもいいクルマなら、そもそも日記にしません(^^;)
いずれにしても今年話題の1台となる筈です。
久しぶりのホンダスポーツモデル、
ホンダファンとして、より良い未来があることを祈りたく思います。
【1月17日追記分】
初代インサイト…これは当時における究極の低燃費カーで
車体、サスペンションはおろか、ブレーキドラムにまで
アルミ材を奢って、徹底した軽量化が為されていました。
このため低燃費と軽快な走りを両立していました。
重量が小さければタイヤも細く出来るし、パワーが有効に生かせるのです。
何でもかんでも軽ければイイとは言いませんが、
初代インサイトは軽さというメリットを最大限に生かしたクルマでした。
かつてのホンダは目的のためには困難なテーマを選ぶことを
厭わない会社でした。
理念こそが最初にくる会社だったと思います。
初代インサイトは売価を安く抑えた為、利益がろくに無いクルマでした。
しかし、他に無いものを持っていたクルマでした。
出てくるのが10年早かった…とも言えます。
ホンダは変わりました。
そして変わったからこそ今に生き残れたのだと思っています。
理念より合理性を考える会社となったからこそ
トヨタに次ぐ地位を確立できたとも思っています。
基本的にそれは良い事です。
CR-Zはフィットや現行インサイトの部品を用い、
合理的に作られているのだろうと思います。
ただ…かつてのホンダがCR-Zを作ったなら…、
間違いなくアルミの超軽量車体を持ったクルマに
なっていたでしょう。
重量がもし今現在の予測値より100kg以上軽かったら
懸念のほとんどは吹き飛び、ハイブリッドスポーツとして
他のスポーツカーやエコカーと真っ向から渡り合い
ライバルを圧倒できるクルマになっていたでしょう。
かつてのホンダのままでは生き残れなかった。
でもそれによって失ったものがあるのだ…と。
CR-Zを見ていると、どうしてもそれを強く感じて
しまうというのが今の偽らざる気持ちです。
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