マツダがロータリーエンジン搭載車の生産を
来年6月で打ち切ると発表しました。
研究開発は続行するという声明はあるものの
燃費基準や排ガス対応など厳しさを増す周辺環境を鑑みれば
実質の終了宣言かと思います。
残念に思う人も多いでしょうけれど、
今までロータリーエンジンが歩んできた苦難の道を思えば
むしろ「よく今まで絶やさずに続けてきたものだ」と私は思います。
それこそロータリーはマツダのエンジンと言って
差し支えないと思います。
NSUは私的には「雛形の欠陥エンジンを作っただけ」であり
それを法外な値段と条件でマツダに売りつけただけでしょう。
その欠陥エンジンをマツダのエンジニアの皆さんが
努力と英知で改善改良し、「マツダのロータリーエンジン」として
完成させたのだと私は認識しています。
そして…「次世代の夢のエンジン」というNSUがぶち上げた夢想を
マツダ自身も具現化することは出来ませんでしたが
ロータリーならではの資質を生かした名車を生み出しました。
それが「RX-7」だと思います。
RX-7の進化はロータリーの進化と完全にシンクロすると思います。
7はロータリーでしか作れない…ロータリーの良さを生かしきる車。
7の同類は世界に存在しないと私は思っています。
そういう意味ではRX-7はRX-7という種類のクルマ、
「RX-7というカテゴリーに該当するたった一台のクルマ」であり、
唯一無二の存在だったと思います。
欠陥エンジンを改良し完成させ、世界唯一のクルマに昇華させ
もう一方ではその成果を生かして日本車唯一のル・マン制覇という
トヨタも日産も為し得なかった快挙を達成しました。
それもこれもロータリーという技術へ対する気持ち。
自らの信じた技術を誰が何と言おうと押し通す強さ、
矜持があったから出来たことと思います。
でもその栄光と裏腹に、ロータリーが歩んだ道は
苦しいことや辛いことがとても多かったと思います。
社会も最後までロータリーを認めることはありませんでした。
そういう中で続けてきた50年間の研鑽は
一企業の行ったものとしては異例なものであり
例え今それを止める時が来たのだとしても責められることは無く
むしろ今までの逆境の中での継続に対して
心から称えられるべきものと思います。
そういう意味で心から「お疲れ様でした」と言いたい気持ちです。
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ロータリーエンジンの終焉と共にマツダは終わってしまうのでは?
そう心配する人も多いでしょう。
でもマツダは終わってなどいないと思います。
昔から変わらぬマツダの良さは「乗り味に優れた走って楽しいクルマ」
ロータリーはそれを具現化するピースの一つに過ぎないとも私は考えます。
RX-7で得た走りのノウハウは他のクルマにも生かされていて
それこそトラックであってもマツダ車は全て乗って楽しいクルマです。
クルマの楽しさを忘れぬ限りマツダは大丈夫でしょう。
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そして50年前のRE開発開始もとんでもない挑戦でしたが
マツダは今もまたとんでもない挑戦を始めていると思います。
「スカイアクティブ」です。
脱化石燃料をほとんど全ての自動車会社が選択する中で
「きっとできるはず」とエンジンに限らず全ての要素を見直して
環境基準に対応しようとする試み。
「もっとクルマを突き詰める」
その行為で環境問題に対する姿勢は
ロータリー以上に困難な道程になることでしょう。
化石燃料を使うこと自体が悪とされかねない世論操作の中で
ヘタをすれば自殺行為になりかねません。
ただ…私はその方向性こそ「自動車メーカー」が示すべきものだと
思っております。
自動車は自動車であり続けねば、最後は見捨てられ
他の「自動車の代わりになるもの」に取って代わられるでしょう。
たとえば…大きな電機会社が作る"より合理的な車”などに…。
電機化したクルマ業界が電機企業の浸食を受けるのは時間の問題で
クルマ本来の魅力を忘れたクルマ会社は、
その中で確実に飲み込まれ消えていく事になると思います。
ただの企業体力勝負になるでしょうから…。
ただし…クルマ本来の魅力はクルマ屋にしか出せません。
出せないというか、得意なところはいつまでも長所となるはずです。
そしてクルマの魅力は、私は「エンジンの魅力」だと思っています。
あの音、あの振動、あのフィーリングがあったからこそ
世界中の人は自動車に恋をしたのだと思います。
ただ便利な道具だとしたら、あんなに無駄な要素で進化などしません。
荷車で終わっている筈です。
モーターの音に涙を流す人など見たことが無いし
電車が好きな私もモーターのパワーや性能に感心したことはあっても
音やフィールに感動したことはないです。
モータースポーツの魅力を伝える時に先ず何を伝えますか?
速さや凄さはモーターでも出せますけど
あの音だけはモーターには出せません。
そして必ずみんなあの「音」に酔いしれるのだと思います。
今日、あの音色の余韻に浸りながら家路を辿る人も多いでしょう。
F1ってあの音があるからあんなに魅力があるのだと思います。
そして…子供に限らず、クルマの物まねは「ぶーぶー」でしょう?
マツダのいう「Zoom Zoom」ですよ。
エンジンの魅力の無い自動車は、最後に”クルマ”になれません。
誰が何と言おうと私はそう思っています。
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確かに自動車の多くはモーター付きになっていくでしょう。
でも”クルマ”としてファンな姿を保つその存在は
ロータリーやRX-7と同じように唯一無二となるでしょう。
そして…本当に生き残るのは「人の心を打てるもの」だけ。
私は「このまま頑張ればマツダはきっと生き残る」と思いました。
クルマ会社としてクルマの魅力に素直に…そして真摯に向き合い
苦しいことは覚悟の上で「エンジン車にはもっとできることがある」と
あえて言ったマツダの英断には心から感嘆します。
そしてこれからきっとロータリーの時と同じか
それ以上の苦難の道が待っていると思います。
ロータリーは止めるかもしれませんが、今マツダはロータリーを止めてでも
クルマ屋として生き残り、クルマの楽しさを後世へ継承していくという
今まで以上の厳しい戦いを始めようとしています。
ロータリーエンジンを支持し、マツダを支持してくれている人には
ぜひスカイアクティブで戦いを挑むマツダの応援を引き続きして欲しいと思います。
少なくとも私は支持します。
私が好きなのは”クルマ”です。
ただの移動機械ではありません。
エンジンを唸らせ身を震わせて走るクルマに恋をしたのです。
それこそ欠陥エンジンを徹底的に改善し、マツダロータリーを完成させた
マツダになら「きっとできるはず」です。
これからも応援しています。
追伸:
スカイアクティブはそれこそホンダがやるべきでしたよね。
エンジンのホンダ…って昔は言ってたんですけれど。
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