10/15
青年団公演『東京ノート』観劇
世界最後の日、
あなたはどんな絵が見たいですか?
世界最後の日、
あなたは誰と食事をしたいですか?
当日パンフレットに
書かれていた言葉。
これで見納め 食べ納めならば、
何を見て、それを誰と、
ということなのだろう。
家族、だろうか?
普通なら、とか
妥当なところでは、とか
そんな前置きをつけてしまう。
本当に家族なのか?
いわゆる身近な存在なのだけど…。
複雑な気持ちで、
開演までの間、しばし考えていた。
………………………
舞台は美術館。
そこに避難している絵がある。
ヨーロッパで戦争が起きて、
美術品などが
続々と日本に避難しているのだと。
美術館の休憩スペースには
色々な人が次々とやって来る。
奥にある作品は、
なかなか見る機会のない
ものではないだろうか。
そんな作品を前にして語られるのは
何気ない、とりとめのないこと。
しかしそこから それぞれが
抱えているものが垣間見える。
例えば、
介護を巡っての話。
立場によって
微妙な心理の違いなど。
誰が悪いとは言えないとか
気の遣い合いの奥にある
妙な固定観念。
戦争に従軍する話。
それは義務だと。
一方では戦争反対の声。
反戦運動をしていたけれど
結局は仕方ないという言葉も。
『星の王子さま』の話より
心で見なくちゃ、よく見えない
かんじんなことは、目には見えない
というセリフを受けて
心で見るというけれど、
分からない。
心はみんな違う、と言うところ
など。
……………………
心はみんな違う……確かに。
本当なら、
誰かのいいねに
そうだねと共感したい。
けれど心や感覚は違うから、
ぴったりな共感には至らない。
それを強く思うことがある。
鬱になってから、
時々身近な人との感覚の
違いの大きさを
感じるようになった。
受け止め方ひとつにしても、
一般的には些細に思われることが
重く辛いことがある。
しかし、
同じ自分でありながら
時と場合によって
感じ方が変わることもある。
そんな具合いだから、
他の人とぴったり合うなんて
そうそうあるものではないと
思っている。
もちろん、
単純にご飯が美味しいなど、
広い意味で
同じだと思うことはあるし、
違う中にも共通するものを
感じることもある。
それはそれで嬉しいことだ。
ただ、
相容れないようなことや
全く理解できないようなことも
ごく当たり前のようにある。
それは国や人種が
違うから等ではなく、
ごく身近な人との間にも存在する。
だから
誰かと一緒にという場合、
あまり共感を
期待しないようになった。
違いを分かってもらおうと
あれこれ手を尽くしても、
うまくいかない続きだと
怖くて動けなくなってしまうので。
そもそも
違いを埋めることは無理だと
認めてしまいたい。
むしろ
違うことを楽しむくらいでいたい。
そして誰かと一緒にというのなら、
違っていても、それを楽しめる
余地がある人の方が安心できる。
それなら
一緒でもいいかなと思える。
最後にもう一度考えてみた。
これで見納めだという時に
見たい絵はなんだろう?
例えば…
静かな心落ち着く絵
生々しい心荒ぶる絵
躍動的で力漲る絵、
ひと通り見たい気もする。
ただ、どんなものだとしても、
その時の自分の心に沿って
自分で選びたい。
言葉を交わすとしても
しないとしても
それも
その時の自分の心に沿ってしたい。
ねばならない、から解き放たれて
自分も、他の誰かも、
尊重された状態で、
矛盾も何もかも受け入れて
終わりにしたい。
最期なら。
そんなふうに
最期の場面を想像することで
今をどう生きるか
ということを考えられた。
私たちには限りがある。
全能でもない。
いつまでも
この世が続くようなつもりで、
いつまでも生きていられるような
気になっているけれど、
それはいつ終わっても
不思議ではない。
だからこそ、
捨てるもの、大切にするもの、
自分の心に沿って
選んでよいのではないか。
それは決して
刹那的でも投げやりでもなく、
今を大切にすることなのだと思う。
自分を大切にできれば、
結局、
他の人や別の存在、違うものを
大切にできることに
繋がると思うから。
最後の方で、
見る力がある人が
画家になるんじゃない?
そんなセリフがあった。
あなたは出来る、
私の絵を描いてほしい、
私を見て、というところも。
じっと見ること、
心を向けることで
相手に近づけたらいいな。
きっと初めから
見る力が
備わっているわけじゃない。
見ようとして
それを続けることで
出来るようになることもあるはず。
少しずつ、
多くの人がそうなれたらいいな。
私は未だ道半ば(笑)
明日終わるかもしれないと
思いつつも
期待はずっと先まで持っていよう。
そんなことを思うラストだった。
じんわり涙にじませ拍手を送った。
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