晴れ上がった空のように・・

日常の出来事や読んだ本の紹介

離陸

2015年02月17日 | 
離陸   絲山秋子 著

沖で待つ・・以来久々に絲山さんを読んだ。
思いのほか、感動した!
はじめのうち、国交省の職員である主人公が厳寒の八木沢ダムでの越冬の様子が
描かれており、それがとても情景描写が細やかでストーリーになかなか入っていけなかった。
しかし、本の中に引き込まれるのにそう時間はかからなかった。

物語は・・

「女優を探してほしい」。突如訪ねて来た不気味な黒人イルベールの言葉により、“ぼく”の平凡な人生は大きく動き始める。イスラエル映画に、戦間期のパリに…時空と場所を超えて足跡を残す“女優”とは何者なのか?謎めいた追跡の旅。そして親しき者たちの死。“ぼく”はやがて寄る辺なき生の核心へと迫っていく・・

なんて言ったらいいんだろう~
まず、主人公佐藤弘に惹かれた。国交省のキャリアでありながらどことなく抜けていたり、ひょひょうとした感じ。
でも、優秀なはず。力が入ってない?でも本人はいたってまじめで凡人。
そんな彼をまきこむ。時空と空間を超えたミステリアスな展開。そして、日本、九州、四日市、フランス、とでっかい舞台。

八木沢ダムからいきなりフランスのユネスコに出向。そこでリシューという彼女と出会い愛を見つけ・・
しかし、、イルベールとも再会。謎の「女優」はなんと学生時代に付き合っていた「乃緒」だった!
そして仏像(ブツゾウ)という名の息子を残して失踪。。
なんともよくできた話で、どんどん面白くなっていく。

身近な人たちの死を不意に体験していくのだが、悲しみの時間で覆われた弘が切ない。

「人生は駐機場で離陸を待っているようなものだ。みんな僕も含めて滑走路に向けた渋滞の列にいて
少しずつ進んでいくことが怖い・・」

人の死を「離陸」に例えたのが印象的です。
航空関係(飛行機のクルーとか)にお勤めの方にはちょっと複雑な気持ちになるかもしれませんね。

結局のところ、女優「乃緒」はタイムスリップした過去からやってきたスパイだったのかな・・
最終章では弘のやり直す人生が静謐なかんじでとてもよかった。

再読したい一冊になりました