藤原辰史さん講演会
ユーラシア東部諸島中立地帯の構想
―食を根拠にした生態自治について
全体の趣旨:
米国と中国という新旧覇権国はざまで、軍事的かつ経済的脅威に日々さらされている地域の、そしてその地域だからこそ生成する思考様式について考える。これらの地域の政治家の多くが考える軍事力の増強という解決ではなく、あるいは、米国や中国との同盟の強化でもない。帝国の脅威に晒されてきた境界領域の諸国が、陰惨な歴史と地球の破局に怯える現代世界と向き合ったうえで、脱資本主義的な生態自治を目指す先駆的指針を、歴史研究の立場から探る。
第1回:沖縄・香港・台湾の連帯について――呉叡人から考える
◆ 7月4日(日)午後2時~
◆ 国労会館3階大会議室
中国は、急速な軍備によって、台湾の軍事的な制圧時に米国との戦争に勝てることを目指している。そんな中、この境地の住人が考えるべきことは、いかに米国を援助して中国を倒すかでも、中国的な監視社会と同一化することでもない。そのはざまにある海洋文化の支配・被支配の歴史を学び直し、小さな地域の小さな文化の縁を結んでいくこと。「黒潮」の流れにアジア独自の思想を見出した呉叡人の『台湾、あるいは孤立無援の島の思想』をテキストに、軍事とは異なる中立の政治の源を探る。
第2回:軽装備の思想――戦争と農業から考える
◆ 8月28日(土)午後2時~
◆ 国労会館3階大会議室
米国から中国へと覇権が移ったとしても重装備の時代は終わらない。空母や戦闘機やサイバー攻撃ではなく、あるいは、巨大トラクターや広範囲の農薬の散布ではなく、小さな言葉、小さな道具、小さな生きもの、小さな思考を絡まらせ、安全保障と農業を同時に変えていくための歴史と文化が、そのはざまの地域には無数に実践されている。しかし、それらの小さなものたちは、重装備戦争と重装備農業よりもはるかに大きな存在、つまり太陽光と太陽熱と土壌に根源を持つ。このことの意味を考えたい。
第3回:食べるとはどういうことか――太陽と土壌
◆ 11月6日(土)午後2時~
◆ 国労会館3階大会議室
米国や日本をはじめ先進資本主義国を中心に、地球温暖化問題を解決するものとして培養肉や植物工場や人工食などの開発や商品化が進められている。太陽光や土壌を用いない農業や食は果たして私たちの目指したい未来の食卓なのか。食のテクノロジー化で失われる残余にこそ、文化の根源が眠ってはないか。そして、そこにこそ人と人を結ぶ縁の発生源がないだろうか。拙著『食べるとはどういうことか』や『縁食論』を軸に、食という現象を生態学的かつ人文学的にラディカルに問い直しを試みてみたい。
第4回:自治の思想――ユーラシア東部諸島中立地帯の根源
◆11月14日(日)午後2時~
◆ドーンセンター大会議室3