いよいよ参議院選が始まりました。7月14日(日)、教育木基本条例下の辻谷処分を撤回させるネットワークでは、総会に先立ち、東京から「壊憲NO!96条改悪反対連絡会議共同代表」の山口正紀さんをお迎えし、参議院選の最も大きな争点の一つである改憲問題について講演していただきます。いま、有権者である私たちが考えなければならないことは何か?山口さんから「週刊金曜日」に掲載された批判文が届きました。ご本人の了承を得て掲載させていただきます。
〈安倍壊憲〉にもっと警鐘を/96条と参院選
山口正紀
(人権と報道連絡会世話人・壊憲NO!96条改悪反対連絡会議共同代表)
「6、7割の国民が憲法を改正したいと思っても96条があるために発議できないのはおかしい、と安倍が決めつけた。向こう側が96条の意味を考える材料を提供し、そもそも憲法とは何か、を人々に考えさせる機会を作ってしまった。僕らにとって願ってもないことでした」
6月15日、都内で開かれた「アブナイ〝改憲騒動〟 あやうい改憲報道」シンポジウム。憲法学者の奥平康弘・東京大学名誉教授は、安倍晋三首相が打ち出した「96条先行改正」論を、皮肉を込めてこう評した。
シンポは、新聞労連など日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と日本ジャーナリスト会議(JCJ)が、改憲の動き、その報道を検証しようと開いた。
連立政権発足後しばらく「安全運転」していた安倍首相は4月に入り、「自民、みんな、維新の三党が連携して参院選後に96条改正を」という「橋下維新」の尻馬に乗って「96条改正を参院選の争点に」と言い出した。
ところが、それは改憲派憲法学者も含む強い批判を招いた。メディアも問題点を報じ、憲法記念日には多くの新聞が「96条改正反対」の社説を掲げた。五月の各紙世論調査では「96条改正に反対」が多数になった。
「憲法とは権力がやってはならないことを定めたもので、簡単に多数決で変えてはならない。だから、3分の2という特別な多数を求めた。96条は単なる手続きでなく、憲法の全条文に関わる特別な規定です。安倍はそれだけを先に変えて多数決にし、憲法を他の法律と同じにしようとした。そうして人々が立憲主義を考える機会を作った」
奥平さんはこう指摘した。ただ、〈壊憲勢力〉が96条改正を唱え始めたのは最近のことではない。東日本大震災後のどさくさに紛れ、2011年6月に「96条改正議員連盟」が作られた。また、昨年3月に大阪維新の会が発表した「維新八策」も、4月に自民党が発表した改憲草案も、96条改正を掲げていた。
メディアはそれをどう伝えてきたか。パネリストの徃住嘉文・北海道新聞東京報道センター編集委員は「反省しています。道新で96条を取り上げたのは昨年12月。それも『日本の改憲条件は厳しすぎる』といった96条改正議員連盟の情報を垂れ流すような記事でした。9条とのつながりで96条を考え、ルールを途中で変えるのはおかしいとして、3月にやっと反撃しました」と率直に話した。
他の新聞・テレビも同じだ。憲法学者たちが批判の声を上げてからようやく報道を始めた。
パネリストの倉重篤郎・毎日新聞専門編集委員は「96条先行論はつぶれた。報道はそれなりの役割を果たしました。ただ、参院選での自民党勝利は揺るがない。圧勝した場合、民意が改憲を了承した形にされる。それをどうするかが問題」と述べた。
その危険にメディアが警鐘を鳴らすのは「今でしょ」と思う。総選挙では、自民党が改憲を公約に掲げたのに大半のメディアはそれを無視した。維新の失速もあってトーンを下げたが、自民党は「96条」も含め、改憲公約を取り下げたわけではない。
労働組合を中心に4月発足した「壊憲NO!96条改悪反対連絡会議」は6月18日、都内で集会を開き、650人が参加、「安倍壊憲を許さない」思いを共有した。奥平さんが「96条改正は、憲法の死刑宣告」と題して講演、民主党、共産党、社民党の参院議員のほか、与党公明党の荒木清寛参院議員も「96条改正に反対」と明言した。
こうした運動・集会の報道も含め、メディアは「安倍壊憲の危険」をもっと伝えてほしい。