※住友剛さんがFBに投稿されていた金子光春さんの詩「反対」を紹介します。
あまのじゃくここにあり!
「私」が「私」として生きることに自信をもっていいんだと、教えてくれているように思いました。
反対 金子光晴
僕は少年の頃
... 学校に反対だった。
僕は、いままた
働くことに反対だ。
ぼくは第一、健康とか
正義とかがきらひなのだ。
健康で正しいほど
人間を無精にするものはない
むろん、やまと魂は反対だ
義理人情もへどが出る。
いつの政府にも反対であり、
文壇画壇にも尻を向けてゐる。
なにしに生まれてきたと問はるれば、
躊躇なく答えよう。反対しにと。
ぼくは、東にゐるときは、
西にゆきたいと思ひ、
きもの左前、靴は右左、
袴はうしろ前、馬には尻をむいて乗る。
人のいやがるものこそ、僕の好物。
とりわけ嫌ひは、気の揃ふといふことだ。
僕は信じる。反対こそ、人生で
唯一つ立派なことだと。
反対こそ、生きていることだ。
反対こそ、じぶんをつかむことだ。
(金子光晴詩集『赤土の家』1919年発行より)
岡村達雄・尾崎ムゲン編『学校という交差点』(インパクト出版会、1994年)
岡村さん執筆の章の冒頭に出ていたのが、この詩。