不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Giasone ed il Vello d'Oro

2008-02-19 07:05:45 | アート・文化

ギリシャ神話の英雄Giasone(ジャソーネ:イアソン)。
テッサリア(Tessaglia)のイオルコス(Iolco)の王であった
アイソン(Esone)の子供で
幼少期にはディオメデ(Diomede)という名で呼ばれていました。
彼が誕生したとき、叔父であるペリアス(Pelia)により
父アイソンは正当な王権を剥奪され家族とともに幽閉されます。
このときに生まれたばかりのイアソンは
密かにケンタウロスの賢者ケイロン(Chirone)に託され、
彼の元で養育され
武器の扱いや文化芸術、
とりわけ指揮官としての知識を身につけていきます。
成人したイアソンはやがて正当な王権を回復するために
叔父の元を訪れますが
当然簡単に願いは聞き入れられず、
王権回復のための条件を提示されます。

その条件がコルキス(Colchide)にあるという
伝説の「黄金の羊毛皮」を持ち帰ることでした。

その昔、偽りの神託を受けたベオツィア(Beozia)の王が、
泣く泣く自分の息子を神の生贄にしようとしたときに
それを知ったゼウスがエルメスを遣いに出し、
金の毛で覆われた、翼をもつ羊を空から送り込ませます。
魔法の羊は自分に跨りコルキスの地へ赴き、
たどり着いた先で自分を生贄として捧げるようにと囁きかけます。
生贄になりかけていた息子はその指示に従い
この翼のある羊にまたがりコルキスまでたどり着き、
そこで羊を生贄とします。
そのときから黄金の羊毛皮は
彼の地の財宝として保管されていたのです。

この黄金の羊毛皮を探す旅のために、
船大工のアルゴス(Argo)に依頼して巨大な船を建造し、
ギリシャ一帯に募集をかけて50人の勇士を募りました。
数々の闘いを経て黒海の果てコルキスまでたどり着き、
当時のコルキス王アイエテス(Eeta)と交渉しますが
黄金羊毛皮を渡すつもりのない王は
イアソンを罠にはめようとします。
しかし、この王の娘であるメディア(Medea)が
イアソンに一目惚れし
彼に魔法をかけることによって父親の罠から救い出し
果てには財宝の見張り番をしているドラゴンにも
魔法をかけて眠らせたため
イアソンは黄金の羊毛皮を手に入れることができました。

メディアと結婚して黄金の羊毛皮をもって祖国に戻ったものの
叔父ペリアスは王権を渡さなかったため、
イアソンを愛するメディアはペリアスの娘たちに
若返りの魔法だと偽り
彼女たちの手で実の父を釜で煮て殺させてしまいます。
こうしたメディアの魔法を恐れた民衆に厭われるようになり
イアソンは祖国にいられなくなりコリントス(Corinto)に亡命。
亡命先のコリントスでは王クレオン(Creonte)に歓待され、
やがて王の娘グラウケ(Glauce)に恋をします。
イアソンがメディアと別れてグラウケと結婚することに決めると
その裏切りに腹を立てたメディアは
グラウケに自分の魔法のかかった結婚衣装を送ります。
彼女がそれを身につけた途端に結婚衣装は燃え出し、
娘を助けようとしたクレオン王も一緒に焼け死んでしまいます。
メディアはイアソンとの間にできた子供も殺して彼の元を去り、
悲観にくれたイアソンは長く放浪し、
最後はアルゴ船の残骸の下敷きになって
命を落としたと伝えられています。

芸術作品のテーマとしてはあまり多く扱われませんが
ルネッサンス期には結婚の結納品や
持参資金を入れる長箪笥などに
アルゴ船にまつわるエピソードが描かれたりしています。

Giasone_01
バルジェッロ美術館にある大理石像はフランカヴィッラの作品。
ジャンボローニャの右腕として長くフィレンツェで活躍した
マニエリスム期の彫刻家で、
本作品もルネッサンス後期およびマニエリスム初期のスタイル。
Giasone_02
ドラゴンを倒し黄金の羊毛皮を掲げる英雄として描かれています。