不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Coniglio nell'Arte

2009-09-22 07:32:42 | アート・文化

絵画作品の中に描かれる動物も
それぞれ象徴学的な意味合いを持っています。
その多産性から、
古くからヴィーナス(Venere) と
結び付けられるのがウサギ。

地下にいくつもの通り道(Cunicoli)を掘ることから
ラテン語ではCuniculusと呼ばれる
Coniglio(ウサギ)は、繁殖力の旺盛なところから
特にルネッサンス期以降は
快楽の象徴として扱われることも多くなり、
恋人や愛人などとともに描かれることもあります。
宗教的イコノグラフィーとしては
より肯定的な意味合いを持ち
特に聖母マリアとともに描かれる白いウサギは
貞節・純潔もしくは苦悩の克服を表します。
また中世の時代には、
ウサギが特に上り坂なども楽々と駆け上り、
追っ手を振り払って逃げる
足の速さをもっていることから
悪魔的誘惑と闘いそれを振り払い、
神に身を捧げる
人間の姿とも重ねられることもあります。
特に荒野で修行を続ける聖人などと
ともに描かれた場合は
彼らが打ち勝たねばならない快楽の意味合いと
それを断ち切って信仰の道に生きる聖人の
あるべき姿の
両方の意味を含みもつことがほとんどです。

ベルリン国立絵画館(Gemaldegalerie)収蔵の
Piero di Cosimo(ピエロ・ディ・コジモ)の
「Venere, Marte e Cupido」でも
ヴィーナスの脇にキューピッドと寄り添うように
ウサギが描かれています。
Venere_marte_amore

全体的な構図として
ヴィーナスがマースに対峙して描かれ
戦いの神であるマースが象徴している戦いの暴力性にも
ヴィーナスが象徴する愛の力が勝つことを示しています。

ヴィーナスを示すシンボルはいくつもありますが、
そのうちの一つがウサギで、
豊穣や繁栄を意味しています。
ヴィーナスの後ろには
Mirto(ギンバイカ)が描かれていますが、
この常緑低木の植物も
古代からヴィーナスの象徴とされているもので
ルネッサンス時代以降は
その常緑性から永遠の愛も象徴し
結婚にまつわる絵画作品などにも好んで描かれます。

一方、転寝するマースの手前には鎧の一部が描かれ
彼が闘いの神マースであることを
容易に認識できるようになっています。