平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

キングギドラ、モスラの造形デザインって画期的だよな!

2024年05月12日 | コミック・アニメ・特撮
 着ぐるみを着て巨大生物を描くというのは、おそらく『キングコング』が発祥なのだろう。
 一方、これを発展させて『ゴジラ』という人気怪獣を作ったのが本多猪四郎氏と円谷英二氏と東宝。

 先日Huluで『三大怪獣 地球最大の決戦』というゴジラ映画を観た。
 これを観て再認識したのが「キングギドラ」のデザインの素晴らしさ!

 

 見て下さい、このフォルム!
 三つ首の竜という発想が秀逸!
 羽根のバランスもいい!
 怪獣造形の傑作だ。

 鳴き声もパラパララみたいな電子音なんですね。
 この時代に電子音を持って来るとは、画期的だ。
 ゴジラの鳴き声は一度聞いたら忘れないし、この時代の効果音は素晴しい。
 そう言えば、『エヴァ』や『シンゴジラ』の庵野秀明氏は
 『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲の発射音をすごいと言っていたが、確かに。
 あれも耳に残る。

 怪獣造形と言えば「モスラ」も素晴しい。

 

 一般的に「蛾」と言えば、幼虫含めて嫌われる傾向が強い。
 実際「モスラ」の姿もそうだ。
 だが東宝スタッフはそんな「モスラ」を人間の味方にしてしまった。
 逆転の発想だ。
 この結果、「モスラ」がどこか可愛く見えて来る。
 日本には蚕(かいこ)を「お蚕様」と大事にする文化があるから「モスラ」が誕生したのかも
 しれない。

「幼虫→成虫」という二段階進化、今風に言うと『第二形態』を考案したのも画期的だ。

 それから怪獣同士を戦わせるという発想。
 前述の『三大怪獣』では、ゴジラとラドンのケンカにモスラが仲裁に入り、
 ゴジラ、ラドン、モスラが力を合わせて金星怪獣キングギドラと戦うという展開になったが、
 この発想も面白い。
 まあ、怪獣が人間っぽくなると怖さがなくなるというマイナスがあるのだが。

 さて、まとめ。
 昭和のクリエイターはオリジナリティの塊だ。
 このオリジナリティが70年後の令和の現在も生きていて、世界で活躍している。


※関連動画
 『三大怪獣 地球最大の決戦』 | 予告編 (YouTube)
 無国籍! 拳銃の撃ち合いをしている! 星由里子さん、若林映子さんきれい!
 刑事部屋、ホテルなど室内はすべてセット!

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「スラムダンク」の凄い動画を見つけた!~熱くなるのはダサい。そんな80年代のコミックを否定して昇華した作品

2024年04月18日 | コミック・アニメ・特撮
『スラムダンク』の凄い動画を見つけた!

 

 湘北 VS 山王工業戦
 これを井上雄彦先生のコミックで再現しているのだ。

 凄い構図だ。
 肉体が躍動している。
 漫画家の山田玲司さんに拠ると、この玉のように流れる怒濤の汗は
 井上雄彦さんが始めたことらしい。
 ……………………………………………………………………

 80年代に入って、コミックは熱さを失った。
・ラブコメ
・パロディ
・オタク化
・鳥山明先生、江口寿史先生のようなスタイリッシュな絵柄の作品
 熱くなるのはカッコ悪い。
 涙や汗を流すのはダサい。
 そんな作品が多かった。
 熱さはたまにヤンキー作品で表現されたが、その主人公はナンパなキャラが多かった。

 そんな中、登場したのが『スラムダンク』だ。
 くすぶっていた不良だった桜木花道や三井寿。
 そんな彼らがバスケを始めるエピソードが象徴的だ。
 ヤンキー漫画の熱さは『スラムダンク』に引き継がれたのだ。

 バスケットボールはストリートでスタイリッシュなスポーツだが、
 そんな所も時代にマッチした。

 流川楓のような天才肌のチートなキャラが登場したのは80年代を経た結果だろう。

 晴子さんとの恋愛など、ラブコメ要素もあるが、
『スラムダンク』がメインで描くのは、あくまで男と男のぶつかり合いだ。

『スラムダンク』は80年代コミックを否定し、昇華した作品と言えるだろう。
 ……………………………………………………………

 さて山王工業戦
 動画を見ていただければわかるが、熱い言葉がいっぱいだ。

「オヤジの栄光の時代はいつだよ? オレは今なんだよ!」
「バスケットは……好きですか?」「大好きです!」
「目障りなんだよ、そんなとこにボーッと立ってやがるとよ。出るなら出ろ」
「優勝するだろ、ゴリ!! 通過点じゃねえのかよ、あいつらなんか!!」
「来いや、山王!!」

※動画はこちら
 スラムダンク Slam Dunk - 世界が終るまでは…(YouTube)
 試合の残り1秒、流川がパスを出した相手は──!

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「薬屋のひとりごと」~後宮と妓楼を舞台にしたミステリー。わたしが言えるのはここまです。もうわたしには関係ない。

2024年04月11日 | コミック・アニメ・特撮
 アニメ『薬屋のひとりごと』をイッキ見した。
 実に魅力的な主人公だ。
 後宮と妓楼──この特異なふたつの世界で物語が成立してしまう所がすごい。

 猫猫(マオマオ・悠木碧)はひとりごとを言う。
 つまり彼女の頭の中にはさまざまな言葉がうずまいている。
 でも、猫猫は多くを語らない。
「わたしが言えるのはここまでです」
「わかった所で面倒なだけだ。もうわたしには関係ない」
 と突き放す。
 実に醒めている。クールだ。

 感情もあらわにしない。
 あらわにするのは毒味する時、めずらしい薬草が手に入った時、お酒を飲む時。
 このギャップが猫猫を魅力的に見せている。

 そんな猫猫だが、壬氏(ジンシ・大塚剛央)や玉葉(ギョクヨウ・種﨑敦美)など、
 後宮や妓楼の人々から信頼され好かれている。人気者だと言ってもいい。
 その理由は薬屋としての腕が確かであったり、抜群の推理力・洞察力を持っているからだが、
 一番の理由は、他者に対する理解力・共感力が高いからだろう。

 シャーロック・ホームズは猫猫と同じように抜群の推理力、洞察力を持っているが、
 他者から変人として扱われ、あまり好かれていない。

 では猫猫とホームズの違いは何なのか?
 ネタバレになるので詳しく書かないが、猫猫の複雑な生い立ちにある。
 特に母親のこと。
 猫猫は母親を通して、生命の揺らめきや人が生きることの哀しさを理解している。
 だから猫猫のベースには他者に対する共感力ややさしさがある。
 ホームズのように他者を挑むべき謎を提供してくれる犯罪者・好敵手として見ることがない。

 アニメの世界にまたひとり魅力的なキャラクターが登場した。


※関連動画
 TVアニメ『薬屋のひとりごと』プロジェクトPV(YouTube)

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「あしたのジョー」~カーロス・リベラ、ホセ・メンドーサー、かつて梶原一騎の熱い時代があった!

2024年04月09日 | コミック・アニメ・特撮
 X(ツイッター)のタイムラインに流れて来たのだが、実に懐かしかった。

 さて、この人物は誰でしょう?

 

『あしたのジョー』に登場するボクサー、カーロス・リベラだ。
 異名は「南米の黒豹」「無冠の帝王」。
 この陽気な南米の男は矢吹ジョーと歴史に残るケンカ試合をおこなった。

 だが、今は見る影もない。
 パンチを浴びすぎて重度のパンチドランカーになってしまったのだ。

「ファイト、ファイトネ! フフ、タノシイネ……」
「ヘイ、ジョ~、ヤブ~キ。ユアベリィベリィストロングボクサ~」

 廃人になってしまったカーロスはジョーにジャブを放つ。
 しかし、遅くて弱々しい。
 これを見てジョーはつぶやく。
「何てこった……。あの稲妻みてぇだったジャブがこんなになっちまって……。
 こんな、こんなみる影もねぇほどにボロボロによ……」

 カーロスがいると聞いてやって来た白木葉子にジョーはこんな反応。

 

 かつてのライバルで、友情で結ばれていたカーロスの無惨な姿を葉子に見せたくなかったのだ。
・力石徹
・カーロス・リベラ
 ジョーはふたりが葉子のおもちゃにされたと考えている。

 カーロスがパンチドランカーになったのは当初『ジョーとの試合が原因』と言われていた。
 だが、違っていた。
 原因は世界チャンピオン ホセ・メンドーサーの『コーク・スクリューパンチ』に拠るものだった。
 頭蓋を砕き、相手を廃人にする恐るべきパンチ。
 これでホセ・メンドーサーの怖ろしさが伝わって来る。

 折しもジョーには「パンチドランカー」の兆候が現れ始めている。
 手が震えてカーロスのシャツのボタンをはめられないのだ。
 もしメンドーサーと闘えば、ジョーは「パンチドランカー」になってしまうかもしれない……!

 この作劇はさすが梶原一騎!
 いや、正確に言えば、高森朝雄。

 メンドーサー戦で、ジョーは今まで闘って来たライバルたちの戦法を駆使して闘う。
 最後はホセ・メンドーサーに「スクリューパンチ」をのめり込ませる!
 このシーンは激アツ!

 かつて梶原一騎の時代があった。
 時代はすっかり変わってしまったが、一周まわって
 今、『あしたのジョー』『巨人の星』『タイガーマスク』などをやったらウケる気がする。
 ヘヴィで熱い時代よ、ふたたび!

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「響け! ユーフォニアム」~高校の吹奏楽部を描いた青春群像! 名作である!

2024年03月15日 | コミック・アニメ・特撮
 名作である。
 テレビシリーズ1・2、劇場版、スピンオフ『リズと青い鳥』を一気に見てしまった。
『劇場版~アンサンブルコンテスト』はサブスクにないので、まだ見ていないのですが。
 制作は京都アニメーション。

 高校の吹奏楽部の物語である。

 主人公は黄前 久美子(CV黒沢ともよ)。
 楽器はユーフォニアム。
 ユーフォーニアムは低音の管楽器で、主旋律を担うトランペットのような派手さはない。
 どちらかというと演奏を下支えする楽器だ。
 同じような楽器としてあるのが、チューバ、コントラバス。

 そんなユーフォニアムのように久美子は、くせ者揃いの吹奏楽部を下から支える。
 だから先輩から「黄前ちゃんはユーフォニアムのような子だねえ」と言われてしまう。

 テレビシリーズの前半。
 久美子はおおむね吹奏楽部で起こる出来事の目撃者だ。
 さまざまな人間模様を目撃して悩むが、どうやって解決していいか、わからない。
 首を突っ込むが、何もしないので、
「黄前ちゃんはずるい」
「性格が悪い」
 と言われてしまう。
 実際、久美子は一歩踏み込むのが怖いのだ。
 踏み込んでキレられたり、拒絶されたりするのを恐れている。
 ただ感じる力はある。
 他人の痛みや思いを感じる力があるから首を突っ込み、悩んでしまう。

 そんな久美子が少しずつ変わっていく。
 目の前の出来事に対して自分の意見をはっきり言う。
 返り血を浴びるのを恐れず、自分の思いをしっかり伝える。
 結果、周囲との絆が強くなり、ユーフォニアムの演奏も良いものになっていく。
 そして最後には、
「全国大会に絶対行こう!」
「わたしはユーフォニアムが好きです!」
 と言えるようになる。

 劇場版では、久美子は高校二年生になる。
 二年生になって、今度は一年生の面倒を見る立場に。
 一年生の頃のように先輩が事件を解決してくれることはない。
 一応、三年生の 夏紀(CV藤村鼓乃美)や優子(CV山岡ゆり)といった先輩はいるのだが、
 二年生という立場上、自分で動かなくてはならないことが多くなる。
 このリアリティが素晴しい。
 ………………………………………………………………………………………

 その他、この作品では、
・吹奏楽コンクール&スポ根のような練習
・恋
・友情
・百合的要素
・先輩と後輩
・劣等感
・進学、将来の悩み
 などが描かれる。
 つまり「青春」のすべてが詰まっている。
 これを見て、おっさんはかつての青春を思い出して、きゅんきゅんしてしまうのだ。

 そして!!
 今年(2024年)4月 『響け!ユーフォニアム』のシーズン3がテレビ放映される!
 主人公の久美子は三年生になって部長に!
 コンクールの全国大会・金賞を目指して奮闘することになる!
 こんな激アツな展開はない!

 こういう大好きな作品をいくつも持っていることは幸せなことだと思う。


※関連映像
 TVアニメ『響け!ユーフォニアム』ノンクレジットオープニング映像(YouTube)

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「葬送のフリーレン」~かけがえのない愛おしい時間! 上質の短編小説を読んでいるようなファンタジー作品! 

2024年02月23日 | コミック・アニメ・特撮
『葬送のフリーレン』昨日ネトフリで23話を見てやっと追いついた。

 エルフは1000年以上生きる。
 人間の寿命は長くて100年。
 だから時間の感覚が違っている。
 エルフの時間感覚は人間よりも希薄なのだ。

 そんな時間感覚の中、エルフのフリーレン(CV種﨑敦美)は人間のヒンメル (CV岡本信彦)、
 ハイター (CV東地宏樹)、ドワーフのアイゼン (上田燿司)と魔王討伐の旅をした。
 それはフリーレンにとってかけがえのない濃密な時間だった。
 しかし現在、ヒンメルとハイターは亡くなって、この世にいない。
 フリーレンは旅をしながら彼らと過ごした時間を思い出す。
 ヒンメルたちが語った言葉の意味を理解する。
 それは愛であったり、やさしさであったり、弱さであったり、誠実であったり。
 あるいはボケとツッコミであったり。

 そして現在、フリーレンは新たな仲間と旅をしている。
 フェルン (CV市ノ瀬加那)はハイターが育てた戦災孤児だ。
 死を覚ったハイターはフリーレンにフェルンを託す。
 シュタルク (CV小林千晃)戦士アイゼンの弟子だ。
 フェルンたちと旅をすることでフリーレンはふたたび濃密な時間を過ごす。
 今過ごしている時間がとんでもなく愛おしい時間であることを少しずつ理解していく。
 ………………………………………………………

 上質なファンタジー作品だ。

 大きなバトルは『断頭台のアウラ』と現在おこなわれている『一級魔法使い選抜試験』以外、
 ほとんどない。
 あとは旅をするフリーレンたちの日常が淡々と描かれる。
 それは誕生日プレゼントであったり、魔導書探しであったり、口喧嘩であったり、
 花を咲かせるとか銅像を磨くとかのクエストであったり。
 エピソードの中にはAパート、Bパート、10分程度で終わるものもある。
 そんな中、見事にオチをつけてくれるから上質な短編小説を読んでいる感じになる。

 たとえば世界の至る所にあるヒンメルの銅像。
 フリーレンはヒンメルの自己顕示欲と理解していたが、別の意味もあった。
 ヒンメルは自分が死んでも、銅像を見ればフリーレンがいっしょに過ごした旅を思い出してくれると
 考えて銅像を建てていた。
 あの旅のことを思い出せば、フリーレンはひとりぼっちでなくなると思っていた。

 ハイターに託されたフェルンが可愛い。
 クソ真面目。
 しっかり者。
 でも怒らせると怖い。
 機嫌がなかなか直らないので面倒くさい。
 でもフリーレンの教えを受けた魔法使いなのでメチャクチャ強い。
 使う魔法は基本技なのだが、魔力の保有量は多く、特殊な魔法を使う相手にも勝てる。
 実に見事なキャラ造形だ。
 キャラクターボイスは市ノ瀬加那さん。
 聞いたことのある声だと思ったら
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のスレッタ・マーキュリーだった!

 フリーレンの種﨑敦美さんは相変わらずすごいな。
『スパイファミリー』のアーニャ、『プリコネ』のクロエ。
 よくもまあ、こんなに引き出しがあるものだ!


※関連動画
 YOASOBI「勇者」 /『葬送のフリーレン』オープニングテーマ(YouTube)

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「セクシー田中さん」の脚本・相沢友子さんがコメントを発表。さて、今度は日テレの番だ。

2024年02月10日 | コミック・アニメ・特撮
『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子先生が映像化の問題で命を自ら断たれたことに関し、ドラマの脚本を手掛けた相沢友子さんが次のようなコメントを発表した。
 ネットでは相沢さんの不用意なインスタグラムでの投稿が芦原妃名子先生の死の一因になったのではないかと言われている。

「このたびは芦原妃名子先生の訃報を聞き、大きな衝撃を受け、未だ深い悲しみに暮れています。心よりお悔やみ申し上げます。
 芦原先生がブログに書かれていた経緯は、私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました。
 いったい何が事実なのか、何を信じればいいのか、どうしたらいいのか、動揺しているうちに数日が過ぎ、訃報を受けた時には頭が真っ白になりました。
 そして今もなお混乱の中にいます。
 SNSで発信してしまったことについては、もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています。
 もし私が本当のことを知っていたら、という思いがずっと頭から離れません。
 あまりにも悲しいです。
 事実が分からない中、今私が言えるのはこれだけですが、今後このようなことが繰り返されないよう、切に願います。
 今回もこの場への投稿となることを、どうかご容赦ください。
 お悔やみの言葉が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。
 芦原妃名子先生のご冥福をお祈りいたします。
 2024年2月8日相沢友子
 これを最後に、このアカウントは削除させていただきます」


 このコメントをどう解釈すべきだろう?

 額面どおりに捉えれば、
 脚本・相沢友子さんは芦原妃名子先生の不満・憤り・悲嘆を把握していなかったことになる。

 相沢友子さんの視点に立てば、
・自分の脚本を修正されて面白くなかったことだろう。
 プライドを持って仕事をしていればこう思うのは当然だ。
・9話・10話を原作者が書くことになって理不尽を感じていたことだろう。
 それらが積もり積もって、あのインスタグラムの投稿に繋がった。
 ただ、それは軽率で大人げなかった。
 そのことは相沢さんも認めていて、今回のコメントで、
『SNSで発信してしまったことについては、もっと慎重になるべきだったと深く後悔、反省しています』
 と書いている。

 僕の立場は、以前書いたとおり、
 今回の件は『脚本家と原作者の間に入った日テレと小学館の責任だ』と考えている。

 本来、コミックと映像は違うものである。
 コミックは漫画家と編集者の間で完結するが、
 ドラマは役者・監督・現場・スポンサーなどさまざまな思惑が絡み合って製作されている。
「恋愛要素を入れて」と言われれば入れなくてはならないし、
 長い台詞のやりとりを続けていたら、たちまちチャンネルを変えられてしまう。
 芦原先生がこだわった「避妊ピル」のテーマもドラマの流れを停めてしまうので、製作側は敬遠したかった所だろう。
 文体も違う。
 コミックが1ページで説明する内容を映像は何分もかけて描かねばならないこともある。
 映像化はコミックのコマとコマの間の余白を埋めて形にする作業だ。

 だから日テレと小学館は
『コミックと映像は違うもので、必ずしも原作どおりにならないこと』を原作者に伝えるべきだった。
 原作者を裏切るような安易な契約を結ぶべきではなかった。

 さて、脚本の相沢さんは自らの見解を語った。
 小学館の編集部は「原作者の意向を伝えていた」とコメントを出した。
 となると、残るは日テレである。
 日テレは脚本家に原作者の意向をどう伝えていたのか?
 原作者の修正稿が来た時、脚本家にどう説明していたのか?

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「セクシー田中さん」原作・芦原妃名子さんが死去~原作の映像化について考える。コミックと映像の文体は違う。

2024年01月30日 | コミック・アニメ・特撮
『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子先生が亡くなった。
 心からのお悔やみとご冥福をお祈りいたします。

 原作の映像化は難しい。
「小説・コミックの文体」と「映像の文体」が違うからだ。

 特にテレビドラマは60分の尺に収めなければならない。
 だから寄り道をしている暇がないし、監督の現場判断でカットされることもある。
『推しの子』でも描かれていたが、
 事務所との関係で下手な役者を使わなくてはならないこともあるし、
 事務所のプッシュで役者の出番を増やさなければならないこともある。
『セクシー田中さん』の場合、うるさい事務所や役者さんはいなさそうですけどね。

 だから自分の作品にこだわりをもつ作家さんは映像化を許諾しない方がいい。
「映像と原作は別物だから映像スタッフにお任せします」と割り切るくらいの方がいい。

 原作は「カルピスの原液」だ。
 作家の個性によって「オレンジカルピス」や「カルピスソーダ」になったりする。
 たとえば『ゴジラ』。
 庵野秀明さんも山崎貴さんも『ゴジラ』という設定を使って自分の世界を作っている。
『クレヨンしんちゃん』『ルパン三世』もそうだろう。
 一方、通常のテレビドラマは「カルピスの原液」を水で薄めたものと言える。
「カルピスの原液」は一般人には飲みにくい。だから水で薄めて飲みやすくする。
 だが原作ファンはそれでは物足りない。

 原作の映像化で成功した作品で思い浮かぶのは──
 映画『砂の器』
 映画『STAND BY ME ドラえもん』
 アニメ『うる星やつら ビューティフルドリーマー』
 アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』
 いずれも橋本忍、野村芳太郎、山崎貴、押井守、宮崎駿といった一流の人たちだ。

 一方、下手なクリエイターに映像化された場合は悲惨なものになる。
 ……………………………………………………………………………………

 さて、今回の一番の問題はどこにあるのだろう?

 日テレにあると思う。
「コミックと映像はまったく別なものであること」を説明せず、映像化権を取るために原作者に期待を抱かせるような契約を結んだことがまずい。
 もししっかり説明していたら芦原先生は許諾しなかっただろう。
 あるいは、
 制作の過程で日テレが原作側とコミュニケーションを尽くさなかったことも悪い。

 そもそもこの日曜22時30分の日テレドラマ枠はトラブルが多い。
『城塚翡翠』でも原作者と揉めて、確か原作者が後半のシナリオを書いていた。
 現在放送中の『厨房のありす』は設定と演出がパク・ウンビンさんの某韓流ドラマに似ている。
 僕は門脇麦さんもパク・ウンビンさんも好きだから残念だ。

 もっともこの枠、『ブラッシュアップライフ』や『3年A組』のような名作もあるのだが……。

『セクシー田中さん』の脚本・相沢友子さんは挑発的なインスタの投稿はまずかった。
 聞く所に拠ると相沢さんと芦原先生は一度も会って話をしていないらしい。
 間に入っていたのは日テレのプロデューサー。
 相沢さんにしてみれば自分の脚本が直されて、9話10話を奪われたことは面白くなかっただろう。
 脚本家として理不尽を感じていただろうし、芦原先生も原作者として同様であったはず。
 ふたりがしっかり話をしていれば、今回のようなことは起きなかったかもしれない。

『セクシー田中さん』は好きな作品だっただけに残念だ。


※関連記事
 「セクシー田中さん」作者・芦原妃名子さん急死。脚本めぐりトラブルか(サンスポ)

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「二千年…若しくは…二万年後の君へ」~「進撃の巨人」の最終話の曲は壮大な叙事詩だ!

2023年11月17日 | コミック・アニメ・特撮
「進撃の巨人」最終話で流れた曲「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」
 ひとつの壮大な叙事詩になっている。

 曲は4部構成

1.ミカサとエレンの物語
 エレンを殺して生きる意味を失ったミカサ。
「いってらっしゃい、エレン」と見送って覚悟したのに後悔は絶えない。
 最後の口づけを赤く染めたのは私……という歌詞が胸を打つ。
 だがその時、鳥が飛んできてミカサのスカーフを巻く。
 エレンは自由に空を飛べる鳥になったのか?
 メソメソするな、強く生きろ、とミカサを励ましに来たのか?

2.ミカサの死
 エレンの墓参りに来る仲間たち。
 季節はめぐり年月は経ち、問題のこのシーン。

 

 ファンの間では、子供を連れてエレンの墓参りに来ているふたりはミカサとジャンではないか
 と言われている。
 髪の色が同じだからだ。
 ということは、ミカサはジャンと結婚して子供を得た?
 いや、ガビだよ、とミカサの純愛を信じるファンはガビ説を唱える。

 でも、ミカサも大人。
 エレンを思いつつも、誰かを求めることはある。
 ジャンも、ミカサのエレンへの思いも含めてミカサを愛したのだろう。
 こんな想像をさせてしまう所が上手い。
 ファンはここでさまざまな物語を想像してしまう。
 予定調和を壊して、ファンの心をざわざわさせる所は意地悪だ。

 そしてレクイエム……。
 レクイエム、レクイエム……と哀しく歌うLinked Horizon。
 ここは「進撃」ファンなら涙なしに見られない。

3.戦争、そして無
 3つめのパートになると世界は大きく変わる。
 人類はふたたび戦争を始めるのだ。
「記憶」は「進撃の巨人」のテーマのひとつだが、人はすぐに忘れる。
 どんなに悲惨な目に遭っても、世代が変わり記憶が薄れれば同じ愚行を繰り返す。
「投げ返す石を捨てられない臆病な人間たち」って言葉は今、すごく胸に突き刺さる。
 そして愚行を繰り返した結果、世界は「無」になる。

4.二万年後の世界
 犬を連れた少年がエレンの巨木の洞を訪れる。
 かつてユミルが巨木の洞を訪れたように歴史は繰り返すのだ。

 この「犬を連れた少年」には考察がなされていて、
 タロットカードの「愚者」ではないか、と言われている。
 タロットカードの「愚者」
 正位置では「すべての始まり」「無限の可能性」「自由」を意味し、
 逆位置では「無謀」「不安定」「衝動的」など、「愚者」を意味する。
 実に象徴的だ。


※壮大な叙事詩「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」はこちら
「二千年…若しくは…ニ万年後の君へ…」Linked Horizon(YouTube)

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本日、アニメ『進撃の巨人』最終回!~エレンは憎悪と宿命から解き放たれて自由な世界へ行けるのか?

2023年11月04日 | コミック・アニメ・特撮
 本日、アニメ『進撃の巨人』の最終回がオンエアされる。
 11月4日 24時 NHK総合。85分。
 第1話放送から10年。
 こんなに待ちに待った最終回があるだろうか。
「俺たちが夢見た巨人のいない世界はあきれるほどおめでたい理想の世界だったはずだ」
「ここは絶対に通さねえ!」
「わたしは強い……ので、いくらかかって来ようと!」
「本当に地獄が好きなんだな、エレン。いいよ、最後まで戦ってやるよ!」
「いってらっしゃい、エレン」
 これはリアタイするしかないですね。

 ぶつかり合う登場人物たち。
 その背後には憎悪、愛、怒り、哀しみ、祈り、許しなど、さまざまな感情がある。
 随所に張り巡らされた伏線。
 何気ないワンカットが後の伏線になっていたりして見逃せない。
 そして登場人物たちの共感。
 最終回は共感に向かって進んで行くのだろう。
 それは同時に憎悪から解き放たれた自由な世界。
 そして心の静寂──
 
 前回マーレの指揮官は迫り来る「進撃の巨人」を見て、こう語った。
「憎悪があの巨人を生んだ。われわれが与えた憎悪をあの巨人は返しに来た」

 このせりふで思い出されるのは、
 現在おこなわれているイスラエルとガザの悲惨な戦闘だ。
 エレンたちエルディア人はその迫害の歴史からユダヤの人々に例えられる。
 一方、壁に閉じ込められているガザのパレスチナの人々であるとも言える。
 こんなふうにさまざまに解釈できるのがフィクションの力だ。
「進撃の巨人」のテーマが普遍的である証拠でもある。
 いずれにしても憎しみは憎しみを呼び、憎悪は増幅する。
 これがエレンだ。
 進撃の巨人だ。

 事前告知に拠ると原作の諫山創先生は今回のアニメ最終回のためにラストのネームを変えたらしい。
 さて、どのように変わるのか?

 今回の最終回はnetfliexなどで世界同時配信されるらしい。
 YouTubeの「進撃の巨人」最終回PVにはすでに世界中からコメントが寄せられている。
 これで「憎しみの連鎖を停めよう」という声が世界中からあがるといいのだけれど。


※関連映像はこちらを選びました。
 1期~完結編前編までを『心臓を捧げよ!』で振り返る【進撃の巨人】(YouTube)
『進撃の巨人』愛にあふれた動画だ。
 苦悩するリヴァイをバックにサシャら今まで死んでいった仲間たちの姿が……!
 ラストの間奏パートでは第1話~87話までのサブタイトルが……!
 そしてハンジさんの死から「心臓を捧げよ」←ここでファンはノックアウトされる!

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