平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第17回「平氏の棟梁」~わが一門の者たちを何よりも大事に思うておりまする

2012年04月30日 | 大河ドラマ・時代劇
 平氏の棟梁となった清盛(松山ケンイチ)。
 さすがにプレッシャーと焦りがあったようである。
 だからイライラして、妻・時子(深田恭子)に当たってしまう。
 まあ、当たってしまうというのは、それだけ時子を信頼しているからなんですけどね。
 イライラの感情を赤の他人にはぶつけられないですし、時子なら受けとめてくれると考えていた。子供が母親に甘えるように。
 何しろ時子は「春の陽だまりのごときおなご」なのだから。
 亡くなった先妻・明子(加藤あい)のことを出したのはまずかったですけどね。

 しかし、この感情をストレートにぶつけることこそが清盛。

 清盛お披露目のための歌会。
 清盛が歌ったのは、<何よりも子供たちや妻や一門を大事にする>という歌。
 清盛としては、歌会のことに気を取られていて家族を顧みていなかった反省の歌だったのだが、それが期せずして、同じ一族・血縁の中で争いを繰り広げる宮廷へのアンチテーゼになってしまった。
 この点、人物の描き方として実に上手い。

 ドラマとしても<家族もの>になっている。
 時子が琵琶を弾かなくなった理由。
 それは「亡くなった明子の琵琶の音を忘れたくない」という清盛の言葉を尊重していたからだった。
 この間、時子がどんな思いで過ごしてきたかを想像すると泣ける。
 時子は、<清盛の中に今でも明子がいること><明子にはかなわない>みたいなことを考えていたに違いない。
 こんな明子の思いに想像が至らない清盛はまだまだ子供。
 しかし、今回の出来事が家族の絆を強くした。
 重盛と基盛は、時子が自分たちの母親であることをきっぱり言ったし、清盛も「明子の琵琶の音も時子の琵琶の音も忘れない」と宣言した。
 人は時として間違うが、その間違いが、今回の清盛一家のようにお互いの関係を強くすることもある。
 すべてを腹にとどめて我慢していることも必要だが、それが逆効果になることもある。

 一方、義朝(玉木宏)と父・為義(小日向文世)。
 このふたりには、清盛たちとは対照的に亀裂が入ってしまった。
 能力もあり血気盛んな義朝は、父親のことを理解できない。
 情けない男だと思っていて、父親や源氏一門のために自分が何とかしなければならないと考えていた。
 しかし、それが為義のプライドを傷つけてしまった。
 <オイディプスの神話>では、男の子は父親を乗り越えて成長していく。
 清盛の場合は、うまい具合に父親越えが出来た。
 しかし義朝の場合は、乗り越えるべき父親があまりにも小さな存在だったから、不幸が生まれた。

 清盛と義朝。
 このふたりを見ていると、本当に人間関係は難しいと感じる。
 ほんのささいなことが、絆を強くすることもあれば、亀裂となることもある。


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GANTZ~SFヒーローもののパロディですね

2012年04月27日 | 邦画
 <SFアクションヒーローもの>なんですけど、うまく外している。
 何しろ戦うのが、ネギ星人、田中星人、おこりんぼう星人、大仏星人……。
 出撃の時の音楽は、ラジオ体操のテーマ。
 出撃の命令は「行って下ちい」
 そして、星人を倒した時は人々から拍手喝采されることはなく、ただ点数がつけられるのみで、『存在感なし』『乳揺れすぎ』『岸本見過ぎ』といった論評が加えられる。

 玄野計(二宮和也)たちが戦う目的も定かでない。
 GANTZは「地球侵略を企む宇宙人を退治するため」と言っているが、それが本当かどうかわからない。
 GANTZの作り出すゲーム世界・物語世界で遊ばされているような感じさえ受ける。
 玄野たちは何のために自分たちが戦っているのかを知らず、ただ<生き残るため><星人を倒して得られる点数を得るため>だけに戦っている。
 そして合計獲得点数が100点になると、<記憶を消されて解放される>か<好きな人を生き返らせる>ことが出来るらしい。それもGANTZが言っているだけで本当かどうかわからないが……。

 このように『GANTZ』は<SFヒーローアクションもの>のパロディである。
 戦う理由がわからないというのは最近、正統派ヒーローアクションものでも見られるようになったが、ヒーローの戦いぶりに点数がつけられたり、論評が加えられたりすることはない。
 ましてネギ星人、田中星人って……、全然カッコよくない。

 <ファンタジーもの>のパロディでもある。
 ファンタジーものでは、現実の人間が異世界にやって来て悪と戦うというのが常道だが、玄野たちもGANTZに導かれて異世界に連れてこられたような感じだ。

 また、この作品、<力を持ってしまった人間がどのように変貌するか>も描かれている。
 特殊スーツの力で抜群の戦闘能力を持ってしまった玄野。
 彼は「自分には果たすべき役割がある」「ヒーローになるのは自分しかない」「みんなを救い、導くのは自分だ」と自惚れ、過信する。
 現実において無力で、存在感の希薄な人間が力を持った時、どのような心理状態になるかのいい例だが、これもまた従来のヒーロー像へのパロディである。
 ヒーローアクションもの、ファンタジーものの主人公たちは、特殊な力を持った時、玄野と同じように「自分こそが世界を救うヒーローだ」と確信する。スパイダーマンしかり、「ナルニア物語」や「ネバーエンディングストーリー」の主人公しかり。
 しかし玄野の姿を見ていると、正義のために戦おうとしている主人公たちって単に「自分の力に酔って自惚れているだけじゃん」と思えてくる。

 さて本日、続編「GANTZ PERFECT ANSWER」がオンエアされるが、どのような真実が明らかになるのだろう。
 いずれにしてもエンターテインメントは、「ウルトラマン」や「月光仮面」のような単純明快さには戻れないようだ。


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笑っていいとも!~ローラ、ザキヤマ、太田光……破壊力のある人が面白い!

2012年04月26日 | バラエティ・報道
 「笑っていいとも!」で、面白いのは、火曜日・水曜日・木曜日ですかね。
 火曜日にはローラさんがいる。
 水曜日には爆笑問題の太田光さんがいる。
 木曜日にはザキヤマ(山崎弘也)さんがいる。
 いずれも<破壊力>のあるタレントさんたちだ。

 爆笑問題・太田さんのギャグは、一方的で唐突すぎてあまり好きではなかったが、相方の田中さんが月曜レギュラーに移って新鮮になった。
 今までは太田さんの暴走を田中さんが押さえていたのだが、今度は水曜日レギュラー陣の中で唯一のツッコミであるタカ&トシのトシさんがやらなくてはならなくなった。
 これが面白い。
 太田さんの暴走を押さえきれなくて、トシさんが「この人、どう扱ったらいいの? 田中さん、戻ってきて~!」と困り果てる。
 これに乗じて、タモリさんもタカさんもボケて、トシさんを困らせる。
 結果、大爆笑!
 太田さんと田中さんを分離した「いいとも!」スタッフのすばらしい作戦。まさにアイデアの勝利ですね!

 火曜日のローラさんも暴れまくっている。
 <とったことないアンケート>というローラさんがMCをするコーナーがあるのだが、全然MCになっていない。
 段取りは間違えるし、解答に対する司会者としてのコメントもハチャメチャだし、竹内友佳アナウンサーと世間話を始めるし、さすがの中居正広さんもさまぁ~ずさんも対応できない。
 ローラさん、最初は物珍しさだけで終わると思っていましたが、予測不能で破壊力は抜群! 案外イケますね。
 ローラさんに司会という大役を任せた「いいとも!」スタッフの作戦にも拍手!

 そして木曜日のザキヤマさん。
 この人については言うまでもありませんが、ボケのセンスといい、場の盛り上げ方といい、ともかく秀逸!
 ピース綾部さんとのやりとりも楽しい。
 水曜日、トシさんが太田さんに振りまわされるように、ザキヤマさんに翻弄されている。
 特に木曜日はタモリさんもエンジンがかかってきて大暴れするから、綾部さんは押さえるのが大変。
 金曜日から木曜日に移っていたベッキーさんは「木曜日は活気があるんですね」と感想を漏らしていた。

 というわけで、バラエティを盛り上げるのは、<抜群の破壊力>を持つ人たち。
 彼らの暴走を押さえるツッコミ役がいて、困れば困るほど面白くなる。

 「いいとも!」の金曜日は、この点を反省したのか、<まったく行列ができない人生相談所>というコーナーで、ブスと仕事が嫌いな俳優の坂上忍さんと散弾銃を持つ作家・岩井志麻子先生といった毒のある方々を投入して、活性化を図っている。

 バラエティには<破壊力のある人><何をするかわからない人><毒のある人>が必要なのである。
 そしてエンタテインメントすべてに言えることだが、<予定調和>はつまらない。


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乃木坂46VS指原莉乃! 5月2日は対決の時!

2012年04月25日 | アイドル
 指原莉乃VS乃木坂46、対決の時が迫っている。
 ご存じない方のために申し上げると、来週の水曜日の5月2日、指原さんのデビューシングル「それでも好きだよ」と乃木坂46の「おいでシャンプー」が同日発売される。
 両者が、オリコン1位獲得を目指して戦うというアイドルバトルだ。
 これまで秋元康さんがプロデュースする<48グループ>では、同日発売ということがなかった。
 <48グループ>には、現在AKB48を始めとして、SKE48、NMB48、派生ユニットのノースリーブス、not yet、フレンチキス、DIVAなどがあるが、いずれも同日発売はなく、発売日をズラしていた。
 なぜなら、ひとつしかないオリコン1位の座を<48グループ>内で、奪い合う必要はないから。

 ところが今回は同日発売。
 乃木坂46は同じ秋元康さんがプロデュースするアイドルグループだが、位置づけはAKB48の公式ライバル。
 AKB48と戦うことを宿命づけられたグループ。
 だから、まずは指原莉乃さんとの戦い。
 指原さんを倒して、将来的には、AKBの牙城を次々と切り崩していくという物語。

 面白い仕掛けですね。
 実にアニメ的、あるいはプロレス的。
 それぞれのファンは、もちろん応援する側に勝ってほしいと思うからCDを買う。
 スポーツ新聞なども取り上げる。
 単に<CDをリリースしました>では、誰も注目してくれないから、敢えて<対決図式>を作り出して話題をつくり、ファンを熱くする。

 もちろんファンは、これが<秋元さんの仕掛け>で、<セールス・プロモーションの一貫>であることを知っているが、敢えてこの仕掛けに乗る。
 お祭りは遠くで見ているより参加した方が楽しいからだ。

 これまでの両者の対決は以下のとおり。
★乃木坂46が特典映像として、<メンバー33人との疑似デート映像>を付けると、指原さんも<指原さんとの33種類の疑似デート映像>を付ける。
★乃木坂46のメイン7人を<乃木坂七福神>というが、これに対抗して指原さんも<指原セブン>という7人のグループをAKBのメンバーの中からセレクトして結成。
 番組内(「有吉AKB共和国」)で、両者にさまざまな対決をさせる。
 次回放送は、2012年5月1日(火)25:55~26:25 TBS系「有吉AKB共和国」。
★乃木坂46が、指原さんの出身地・大分県でプロモーション活動。
 「おいでシャンプー」のリリース情報を印刷したシャンプーを配布。
 この模様の放送は、4月29日(日)深夜0:00~0:30 テレビ東京系「乃木坂って、どこ?」。
★指原さんが、女性アイドル合同イベント「ゆび祭り~アイドル臨時総会~」(6月25日に東京・日本武道館)をプロデュース。
 参加するアイドルグループは、アイドリング!!!、私立恵比寿中学、SUPER☆GiRLS、東京女子流、ぱすぽ☆、渡り廊下走り隊7。
 そして指原さん自身が、そのライブ会場に乱入して参加要請をした、ももいろクローバーZ。←これもプロレス的!
 このイベントに参加方法はこれから提示されるようだが、<指原さんのデビューシングル封入の応募券での抽せん>という方法もあるらしく、これも「それでも好きだよ」の売り上げに貢献しそう。
★また、指原さんの「それでも好きだよ」のカップリング曲は、これもある意味掟破りだが、松浦亜弥さんの大ヒット曲「Yeah!めっちゃホリディ」になるらしい。
★一方、乃木坂46は「おいでシャンプー」の振り付けで話題づくり?
 それはインターネットの記事から引用すれば、こんな感じ。

『セカンドシングル「おいでシャンプー」での“スカートめくり”が話題の乃木坂46が16日、同曲の振り付けを変更することを発表した。これに先立つ15日夜に、プロデューサーの秋元康は「振り付けのあの部分、不評だろ? だから、会議の時に言ったじゃないか! あれは、やりすぎだよ。ミュージックビデオの撮り方もよくなかった」とGoogle+で苦言を呈していた。
 話題となったのは「おいでシャンプー」の間奏部分、スカートを自ら持ち上げて踊るところの振り付けだ。実際にはペチコートが見えるだけなのだが、ネット上では批判の声が続出。15日夜には、プロデューサーの秋元康がソニー・ミュージックエンタテインメントの担当者に「これから収録の音楽番組等は、全部、その部分の振り付けを直してください」と勧告する事態にまで至った。
 そして16日に、乃木坂46 運営委員会は「インターネットなどでいただいたご意見を受けて、5月2日発売のセカンドシングル『おいでシャンプー』の間奏部分の振り付けを変更いたします。今後のテレビ収録やライブなどにおきましては、新しい振り付けでのパフォーマンスとさせていただきます」とオフィシャルサイトで発表した。
 秋元は、この件については振付師の責任ではないと擁護。「本当はとってもキュートな振り付けなんだけど、乃木坂46のコンセプトには合わない。制作チームが乃木坂46のコンセプトを理解していないからだと思う」とコメントし、「人の意見を聞くというのは難しいことだ。でも、人の意見を聞かないと限界が来る」とプロデューサーとしての心得を明かすなど、制作チームにアドバイスしている』

 秋元さんが、このダメ出しをどのような意図でやったかはわからないが、これで話題づくりが出来たのも事実。
 新しい振り付けを含めて、どんな振り付けなのか見たくなりますからね。

 というわけで、5月2日は決戦の時なのであります。
 ちなみに私は<乃木坂46>のファンとして、このお祭りに参加いたします!!


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電力会社・政府・原子力推進派の皆さん、いい加減にして下さいよ。

2012年04月24日 | 事件・出来事
 電力各社がこの夏の電力需要供給試算を発表。
 一昨年なみの猛暑として
・東京電力は4.5%のプラス~つまり4.5%分供給が需要を上回り、電力が足りているってこと。
・九州電力は3.7%のマイナス~3.7%分の電力不足
・北海道電力は3.1%のマイナス~3.7%分の電力不足
 そして関西電力。
・16.3%のマイナス!!

 この16.3%という数字。
 いくら関西電力の原発依存度が高いと言っても、他と比べて極端過ぎでしょう!
 他は皆、3~4%ですよ!
 検証委員のひとりが「関西電力以外の電力会社の試算が甘すぎるのか、関西電力圏の消費者の節電意識が低すぎるか」と指摘していたが、この数字は、福井県の大飯原発を再稼働させるために作った方便の数字としか思えない。
 関西電力の担当者は、住民の方にアンケートをとって出した数字だと言い訳していたが、アンケート結果なんて質問のされ方によって、いくらでも変わりうる。

 昨日の『報道ステーション』では、こんな数字を出していた。

 この夏の関西電力の電力供給量は、2535万kw。
 一方、消費者が使う電力需要予測は、3030万kw。
 約500万kw足りない。

 この不足分を関西電力は原発で補おうとしているわけだが、報道ステーションでは原発に頼らずにこの不足分を補う試算を出していた。
 まずは消費者の節電。
 昨年、東京電力圏内での節電実績は、<一般家庭で11%><商店・オフィスで21%>の節電。
 これと同じ節電を、関西電力圏内で行った場合、電力不足量は320万kwになるらしい。

 では、この不足分をどう補うか。
 ひとつは、中部電力や中国電力などの電気が余っている電力会社から電気をまわしてもらう方法。
 ふたつめは、企業などが取り組んでいる自家発電などで補う方法。←この電力埋蔵量は正確に把握されていないらしい。
 みっつめは、揚水発電。
 よっつめは、工場など大量に電力を消費する分野での節電。←ちなみに昨年の東京電力圏内での節電実績は18%。
 これらで十分、不足分は補えると報道ステーションは試算している。

 この試算では、関西圏の一般家庭が10%の節電を、商店・オフィスが20%の節電を行うことが前提になっているが、関東の人間に出来て、関西の人間に出来ないわけがない。
 もし関西電力が出来ないと考えているとすれば、関西の住民をバカにしている。

 まあ、百歩譲って、この試算は『報道ステーション』というテレビニュース番組が作ったものだから、すべてを鵜呑みにするのは危ないとしてもいい。
 言いたいのは、<関西電力や政府が、この様な試算を行う努力をしたのか>ということである。
 こんな試算や検討もせずに、<足りないから原発を動かさなくてはならない>と単純に考えていたのではないか。
 あるいは巷で言われているように、
 <原発なしで、この夏を乗り切れたら、一気に原発不要論が高まってしまう>
 そうすると
 <現在ある原発は永遠に停止になり、無用な鉄くずになってしまう>
 だから
 <電力不足が起きると恐怖心を煽って、原発を動かすようにしなければならない>
 と電力会社や政府は考えているのではないか。

 電力会社・政府・原子力推進派の皆さん、いい加減にして下さいよ。
 いったん事故が起こったら、福島のようなことが起きるんです。
 そのことに対して、あなたたちは何も責任を取れないでしょう?
 責任は、会社を辞めたり、大臣をやめたりすることだけで取り切れるものではありません。
 乱暴かもしれませんが、被害に遭った人達から石を投げつけられて罵倒される覚悟はおありですか?

 原発を棄てて、新しい未来を模索する方向に歩み出しませんか?


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平清盛 第16話「さらば父上」~謹んで、お受けいたしとうございまする。

2012年04月23日 | 大河ドラマ・時代劇
 忠盛(中井貴一)は答えを出せないでいる。
 「なぜ武士が今の世に生きているのか?」「なぜ太刀をふるうのか?」
 それを清盛(松山ケンイチ)が教えてくれた。
 忠通(堀部圭亮)と頼長(山本耕史)の確執。その裏にある王家のドロドロ。
 平氏は荷担するように言われるが、清盛は太刀を握りしめてきっぱりと断る。
 「この太刀をふるうのは、下らない小競り合いに巻き込まれるためではない。こいつはそんなことをするために生まれてきたのではない」
 この言葉を受けて、忠盛は永年の答えを見出した。
 そして宣言する。
 「武士の世を作るために。われわれはそのために太刀をふるってきた。そのために武士は今の世に生きているのだ」

 清盛に教えられた忠盛。
 この瞬間、清盛は忠盛を越えた。
 まだまだ人間としては足りない部分はあるが、ブレない<心の軸>においては清盛は上だった。

 忠盛は老いたのである。
 亡くなった舞子は「夢中に生きていれば」答えを見出せると言ったが、夢中の度合いは忠盛より清盛の方がはるかに上であった。
 若さの持っているエネルギー、世間のおそろしさを知らないがゆえの自由さ。
 これらが、清盛を夢中にさせる。
 たとえば現代を例に出してみると、ワールドカップで日本が勝った時、渋谷で騒ぐ若者たち。
 年寄りにはこれが出来ない。勝ったことは嬉しくても、テレビ画面を通して見ているだけ。
 安芸から戻った清盛は実にイキイキとしていた。
 「やりますよ、父上! 野良犬の声がこの面白くない世の中を変える。そんな時が近づいております!」
 忠盛に喜びを語る清盛。
 一方、忠盛はそれを目を細めて聞いているのみ。
 ここで世代交代が起きたのである。

 清盛は今まで忠盛が築いてきたものを引き継ぐ。
 家臣、財力、武力、朝廷でのある程度の発言力……。
 忠盛はこれらを清盛に託す。
 自分は花を開かせることが出来なかったが、清盛なら成し遂げてくれるはず、と信じて。

 世代交代は源氏でも同じだった。
 貴族に迎合する父・為義(小日向文世)に反抗する義朝(玉木宏)。
 若い義朝には「地を這ってでも生き残ってやる。これがわしの誇りだ」と語る為義の真意はまだ理解出来ないが、反・貴族社会、武士の世を作るという点では、清盛と同じだ。

 そして、ふたたび平氏。
 忠盛は「これより、平氏の棟梁を清盛と定める」と一族の前で宣言する。
 清盛はこう答える。

 「謹んで、お受けいたしとうございまする」

 シンプルだが、実に重く深いせりふ。
 このせりふを語る清盛の中には、亡くなった弟・家盛や母親とのことなど、今までの出来事の様々な思いが込められていただろう。
 今まで16話を費やしてきた集大成のせりふであるとも言える。

 いよいよ清盛の快進撃が始まる。


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パパドル!~『秘密の関ジャニちゃん』ができるかもしれない?

2012年04月20日 | 恋愛ドラマ
 ジャニーズファンの方にはたまらない作品でしょうね。
 関ジャニ∞が出て来れば、嵐も出てくる。
 物語の設定から関ジャニ∞が出てくるのは予測できたが、まさか嵐の櫻井くん、大野くんまで出てくるとは!
 何という豪華!
 しかもTBS放送のドラマなのに、「大野くん、月9サイコー!」「櫻井くん、ニュースいいよ!」なんて局を越えたせりふが出てくる。
 あるいは、関ジャニ∞と嵐はライバル関係にあるらしく、マネージャーの間宮義春(八嶋智人)から「嵐なんかにへり下るな」「番組のっとってやれ。『秘密の関ジャニちゃん』だ」なんてせりふも。
 花村家の佳奈(谷花音)は、嵐の櫻井くんのファンらしい。
 錦戸亮くんを前に「何だ、翔くんじゃないのか」と残念がり、誠意を見せるために櫻井くんのサインをねだり、錦戸くんはウソをついて女性をダマそうとするが、「櫻井くんはウソをつかない。瞳が澄んでいるから」と語る。(笑)

 こうしたアイドル実名ドラマでは、前クール、AKB48の渡辺麻友さんが主演した『さばドル』(テレビ東京)があった。
 これは、渡辺麻友さんは実年齢38歳で、21歳も年齢をさばを読み、しかも学校教師とアイドルの二股をかけているというとんでもない内容だった。
 当然、劇中にAKB48のメンバーも登場する。

 こうした『パパドル!』や『さばドル』のような作品が出て来る現象。
 やはりこれは現在のドラマが行きづまっている証拠でしょうね。
 この『パパドル!』も、主人公の設定が<錦戸亮>じゃなくて、架空の名前の人物だったら、そんなに新しさを感じませんから。
 ドラマ的には王道ですし。基本は『ロミオとジュリエット』ですし。

 ドラマ的には、遥(優香)のキャラクターが面白い。
 茶碗でお弁当のご飯を食べさせ、「おいしいもの食べてる? ちゃんと食べないとダメよ」と遥が、母親のように亮くんを諭す。
 この母親のように諭されたことが、亮くんの心をとらえたんでしょうね。
 きっとアイドル<錦戸亮>にそんなことを言う女性はいなかったでしょうから。
 あるいは遥の二面性。
 フォークリフトを自在に扱うカッコイイ女性でありながら、自転車の鍵がついているのに探してしまうボケぶり。
 こういう所に亮くんは惹かれたのでしょう。

 また、ふたりの恋をさらに燃え上がらせたのは障害。
 『ロミオとジュリエット』がそうであるように、ふたりの間に高い障害が立ち塞がれば立ち塞がるほど、恋人たちの恋は熱くなる。

 そしてメディアミックス。
 この虚実皮膜のドラマを通して、関ジャニ∞の新曲やドームツアーを宣伝するつもりですね。

 今季は野心的な作品が多いが、ドラマ新時代を迎えているのかもしれない。


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クレオパトラな女たち~主人公・峯太郎は何に悩んでいるのだろう?

2012年04月19日 | 職業ドラマ
 何だろう、この作品は?
 岸峯太郎(佐藤隆太)が何に悩んでいるのかがわからない。
 だって、『美容整形は患者さんのモチベーションを上げるためのものです』という主張の方が断然正しい。
 短い人生、ウジウジ悩んでいるよりは、モチベーションを上げて前向きに生きた方が絶対にいい。
 そのきっかけが<美容整形>なら、それはそれでいいではないか。
 『健康な体を傷つけるべきではない』なんて価値観を押しつける峯太郎の方がおかしい。

 峯太郎は、親の借金のせいで「何で自分はこんな目に遭うんだろう」と悩んでばかりいるが、要するに自分のことばかりに悩んでいて、他人の痛みがわからないのだ。

 <美容整形>に高額なお金を払うことにも峯太郎は違和感があるようだが、市井睦(稲森いずみ)らの技術はアートなのである。
 これを否定するなら、絵画や宝石、あるいはブランド品にお金を払うことも否定されなければならない。
 お金を払う人は納得しているわけだし、払うことで<安心>を得て、<満足>を感じているのだから。
 一方、高額なお金をいただく市井睦らも、それに見合うプロの技術を提供する。決してぼったくりではない。
 これこそプロフェッショナル。

 整形後の患者の人生に関わるべきでない、という姿勢もプロとして正しい。
 美容整形を受けると決心するのも個人の自由なら、その後、どう生きようと個人の自由なのだ。
 整形の結果、若い愛人ができて離婚することになっても、それは本人が選んだこと。
 その選択は、幸せをもらたすかもしれないし、不幸をもたらすかもしれない。
 だが、その結果は誰も予測することができない。
 第一、何を幸せに思い、不幸せに思うかは、本人次第だし。
 だから医者が関わることでない。
 整形後の患者の人生に関わろうとすること自体が傲慢だ。
 仮に峯太郎が、ホクロ女性の手術をやめさせられたとして、その女性がずっと不幸だったら峯太郎は彼女に対して責任をとれるのか?

 この作品はおそらく峯太郎が変わっていく話なのだろう。
 『37歳で医者になった僕』とは逆のパターンの話。
 『37歳』の祐太(草剛)が周囲の医者たちを変えていくのに対し、この作品では峯太郎が変わっていく。
 美容整形を受けた患者さんがそうであるように、峯太郎自身も世界との調和を取り戻していく。

 最終回にはそんな結末と結論が描かれるのだろうけど、脚本は大石静さんだし、別の結末が用意されているのか?


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リーガル・ハイ ~口が達者で性格の悪いニューヒーローの登場!

2012年04月18日 | 推理・サスペンスドラマ
 面白い!
 古美門研介(堺雅人)のキャラクターが最高!

 まず口が達者!
 冒頭の老人に席を譲るシーンではこんな弁舌。
「若いから体力があり、お年をめしてるから体力がないと一様に断じてしまっていいものでしょうか? 彼は見た目は60代だが、スポーツクラブに通っており、バッグの年季の入り具合からかなりのベテランであることが推察される。重厚な大胸筋、引き締まった腹背筋、下腿三頭筋の張り具合は着衣の上からでも充分感じ取れる。貧弱な私よりもはるかに見事な肉体をしていらっしゃる。そしてそのスポーツクラブはこの駅の駅前にある。わずか2分ほどの一駅区間ならば席を譲る必要もないどころか立ち座りの動作を余計に強いるのみと判断し、申し出なかったまで。以上。何か反論は?」
 黒いものを白に言いくるめるのが、弁護士だとすると、この弁舌はまさにそれ!
 老人に席を譲らない理由を語るために、<腹背筋>や<下腿三頭筋>まで出してくるとは!

 性格も悪い。
 浅い正義感をふりかざす黛真知子(新垣結衣)を一刀両断!
「思い出したよ。その下品ながに股で。判例集を読んでいたからまさかとは思ったが、思慮が浅いくせに独善的な正義感を得意げに人に押し付けてくるバカ女が弁護士とは世も末だ」
 また、返す刀で真知子の弁護士としての無能も「自白を強要されてるのに負けること自体が信じられない」とバッサリ斬る。

 仕事も出来る?
 坪倉裕一(中村蒼)の無罪を勝ち取るためのあの手、この手。
 取り調べた刑事の悪行を調べ、それをマスコミにリーク。人権団体も動かして、<不当な取り調べ>のキャンペーンを張る。
 判決は世論が作るのだ。
 また、アリバイを証明するキイパーソンのコーヒー店員の斎藤を見事に「あの日、公園に坪倉はいた」と言わせる証人にする。
 その方法は、<人間の記憶力>についての解説や<もし証言すれば妻や娘のヒーローになれる>という甘い誘惑まで。
 法廷での弁論もあざやか?
 坪倉が「殺してやる!」と発言を「そんなことは日常生活で誰でも言うことだ」と、街の人の実例を使って、証明してみせる。
 まあ、この古美門のやり方を見ていくと、われわれの日常って、どうしようもない曖昧さに立脚して成り立っていることがわかりますね。
 まわりの空気に左右され、曖昧な記憶に頼り、事実はどうとでも解釈できし、言いくるめられる。

 そして、古美門は結構、子供!
 裁判に負けそうになると、子供のように泣いて走り出し、酔っ払う。

 いやあ、すごいキャラクターが現れたものです!
 弁舌巧みで、ハチャメチャで、性格が悪い。
 このくらいのキャラクターが登場しないと、作品はたちまちどこかに既視感のあるマンネリな作品になってしまう。
 あれこれ悩まないのも古美門の特徴。
 ドラマの主人公は悩みますからね。
 主人公の<葛藤>を描くのが既存のドラマだと思いますが、古美門に関してはそれがない。
「やっていようがやっていまいが、私には関係ないし、何の興味もない。検察の証拠は不十分だった。だから彼は無罪になった。それが法だ」
「うぬぼれるな。われわれは神ではない。ただの弁護士だ。真実が何かなんて分かるはずがない」
 と実にクール。
 そして、これが弁護士<古美門研介>のバックボーンなんですね。
 彼の行動基準は<法に照らし合わせて正しいか、正しくないか>。
 確か、古美門のせりふに「ゲーム」という言葉があったが、彼の行動は勝つか負けるかの<ゲーム>でしかない。

 ただし、今回、古美門には負けがありましたね。
 顧問会社の専務の問題。
 専務は家庭を捨てて愛人とくっつき、社長もそれを認めて結局専務を後継者にしてしまった。
 こういう何をするかわからない人間の非合理な行動には、古美門は対応できないようだ。


 古美門研介は、<法というルールのもとでプレイをするゲーマー>である。


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ATARU~どん兵衛を食べない中居くん! こんなこと、やっていいのか!

2012年04月17日 | 推理・サスペンスドラマ
 『ATARU』って、すごく新しいドラマである。

 今までの刑事ドラマをぶち壊していると言ってもいい。
 なぜなら、探偵役のチョコザイ(中居正広)は万能。
 詳しい設定はわからないが、超能力みたいなものを持っている。
 探偵役が超能力みたいなものを持ってしまったら、これは不公平で、犯人と知恵比べをするミステリーではなくなってしまう。
 ミステリーでは、特殊能力を持った探偵が出て来る作品もまれにあるが、通常、探偵役は普通の人間でなくてはならない。
 そして蝦名舞子(栗山千明)。
 彼女は、チョコザイの発する言葉から事件の真相に迫っていくわけだが、ここには『相棒』の右京さんがするような<推理>はない。
 ただ、チョコザイの発する言葉を追いかけているだけ。

 というわけで、この作品は<非ミステリー>な刑事ドラマなのだ。

 ドラマとしても<非ドラマ>だ。
 真相にたどりつくことが正しいのか、正しくないのか、に悩む舞子。
 真相が自殺だったということになれば、労災は下りず、残された妻と子の生活は成り立たなくなる。
 だから舞子は悩む。 
 そして、ここが今回の一番盛り上がるドラマポイントなのだが、この作品はあっさりと裏切る。
 何と、悩む舞子に、若手刑事が「結婚して下さい」とプロポーズするのだ!
 理由は、女性を口説くには弱っている時が一番いいから。
 こんなドラマの定石を破った作品、見たことない。
 普通は、ここで舞子が「それでも真相を追求する!」と宣言して盛り上がるのが定石だが、この作品ではそれをせず、ギャグに逃げる。
 これは新しい!

 あとは楽屋落ち。
 舞子の家のテレビで放送されているドラマは『パパはニュースキャスター』。
 これって、裏で放送している『家族の××』(フジテレビ)の盗作騒ぎになった作品ですよね。
 TBSさん、えげつないことをしますな~。
 それに中居くんは、<どん兵衛のカレー味>をなかなか食べないし(←中居くんって<どん兵衛>のCMやってましたよね)、bとdの音の区別が出来ないようだし(←つまり音痴ってこと?)、こんな過激なことをしてもいいのか?

 というわけで、この『ATARU』という作品、今までのテレビドラマのジョーシキをぶち壊している。
 そして、視聴率は19.9%だったとか。

 現在はこういう作品が求められているのかもしれませんね。


コメント (2)
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