平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

医龍2 カルテ8

2007年11月30日 | 職業ドラマ
 カルテ8

★物語の構造
 小高七海(大塚寧々)の物語。
 物語の構造は今までの松平幸太朗(佐藤二朗)、外山誠二(高橋一生)と同じだ。
 過去に負った心の傷からの解放。

 七海の場合は自分の子供。
 仕事にのめり込んだがために息子智樹(本郷奏多)を半身不随にしてしまった。
 智樹のぜんそくの発作。母親・七海は不在。起きて病院に運ばれたが、そこの麻酔医の腕が悪く低酸素脳症。
 それは七海にとっては間接的なことだが、夫は許さない。
 子・智樹(本郷奏多)も七海を拒絶している。
 自分があの時、仕事をせずに家に帰っていたら、緊急手術に応じなければこの様なことにはならなかったという想いが七海にはある。
 そして、そんな過去から解放されるのがこの作品の場合、手術だ。
 智樹の手術。
 七海は父親に拒絶されて手術から外されている。
 だが、その手術の麻酔医は未熟で朝田龍太郎(坂口憲二)のスピードについていけない。
 葛藤の末、やって来る七海。

 今回はそこでの元夫とのやりとりがいい。
 手術室に入ろうとする七海に夫は言う。
「智樹はお前を憎んでいる」
 それに対して
「憎んでいい。憎めるのは生きているから」

★感動の作り方
 手術後のやりとりがまたいい。
 夫は「オペに入るなとは言ったが、病室に入るなとは言ってないぞ」
 智樹とは「売店に売ってた。チョコ好きだよね。僕も好きなんだ。はい。お父さんにはないしょだよ」
 父親に内緒でチョコを食べたことを智樹も覚えていた。
 思い出として覚えていてくれた。
 思い出の共有。
 『思い出を共有して心を通わせる』
 これはドラマになる。感動を作る。

 智樹はさらに七海の心のツボをつく。
 それは七海が一番言ってほしいこと。
 「手術に来てくれたんだって。待ってたよ、母さん。ずっと待ってた。来てくれると思ってた」
 『待ってたよ、来てくれると思ってた』
 自分が一番言ってほしいことを人が言ってくれる。
 これは人生の至福の時。
 例えば恋愛ドラマでも主人公は「愛してる」と言われるために戦っている。

 このシーンの七海はかわいい。
 智樹の部屋に入って「退院前の問診です」・笑
 ツッぱってた彼女が思春期の若者の様に人にどう接していいかわからないでいる。
 そして大泣き。

★伏線
 今回は伏線が効果的だった。
 前回、レストランでプレゼントを持って七海が待っていた人物とは?
 七海がチョコレートに依存する理由とは?
 荒瀬門次(阿部サダヲ)との関係は?
 それらが一度に明らかになる。

★伊集院以外、全員集合
 ラストは「医龍」お馴染みのスローモーション。
 朝田が歩き、藤吉が、外山が松平が、MEの野村が、そして七海が合流する。
 「医龍」の見せ場。
 歌舞伎で言えば見栄を切るシーン。特撮戦隊物でもそう。
 次回はミキや荒瀬も合流するらしい。
 一方、伊集院(小池徹平)。
 才能ってあるのかな?
 ラストのクライマックスは伊集院のドラマになりそうだ。


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相棒 「この胸の高鳴りを」

2007年11月29日 | 推理・サスペンスドラマ
 第6話「この胸の高鳴りを」

 事件は人気ロックバンドのリーダーの絞殺。
 容疑者としてふたりの女性、夏生と可奈子が浮かぶ。

 今回はそんな事件を取り巻く4人の人間の心模様。
 それがきっちり描かれていていいドラマになっている。
 まずは……

★人気ロックバンドのリーダー・丹野(松田悟志)
 盗作。
 盗作したことで自分は人気者になったが、盗作されたかつての友人・福地(玉有洋一郎)は裏切られたショックで自殺。(事故?)
 丹野はその罪と作られた自分の虚像に悩み、女に溺れる。
 そんな荒んだ丹野を救ったのが女子大生の夏生(前田亜季)。
 夏生とつき合って丹野は変わった。
 ありのままの自分を知ってほいい。
 罪を背負ったままでは夏生と向き合えない。
 そう考えた彼は『盗作』そして、その他の曲もゴーストライターが書いていたことを発表しようとする。 

★福地の恋人・可奈子(大谷允保)
 自殺した福地の恋人・可奈子(大谷允保)は丹野のことが許せない。
 そして知った驚愕の事実。
 福地はドナー登録をしていて彼の心臓は今、夏生の中に。
 福地の心臓を持った夏生が丹野とつき合っている。
 加奈子は夏生に丹野の本当の姿を話し、つき合うのはやめろと言う。
 だが可奈子は信じられない。
 偶然、運命の悪戯とはいえ、加奈子にとっては衝撃であったろう。
 恋人の心臓を移植された女が憎むべき男の彼女。
 丹野はまたも自分の恋人の力(心臓)を使って幸せになろうとしている。
 これでは自殺した恋人が浮かばれない。
 悲痛。

★夏生(前田亜季)
 生きることが諦めだった彼女が心臓移植で希望に。
 恋人・丹野の出現で「世界は輝きだして」。
 しかし可奈子によって知らされる丹野の真実。

 丹野に惹かれたきっかけは丹野の歌う歌だった。
 その歌は心臓を与えてくれた福地の作った歌。
 夏生は可奈子に言われる。
「あなたが丹野の歌に惹かれたのは、あなたの中の福地の心臓が反応したから」

 引き裂かれる自己。
 自分の心臓が丹野への憎しみを叫んでいるように思える。
 丹野を愛する自分と憎むもうひとりの自分。
 面白い人物造型だ。

★そして犯人の心象

 以下、ネタバレ。

 犯人が丹野を殺した理由がひとつのドラマになっている。
 犯人は丹野のバンドの2作目以降を作っていたゴーストライター。
 夏生と出会って生まれ変わろうと思った丹野は自分の作品がすべて他人の作ったものであることを発表しようとした。
 ゴーストライターはそれが許せない。
 そんなことをしたらバンド人気はがた落ちだ。
 自分には華がないことがわかっているからゴーストライターをやっている。
 彼には丹野と共に頂点までのし上がろうと思っている。
 だから殺した。
 実にすっきりした動機だ。

★4本の絡まった糸をほぐしていく右京
 今回はこの様な4人の人間の心模様が交錯して生まれた事件。
 右京(水谷豊)はこれらの絡まった糸をほぐしていくのだが、糸の一本一本が見事なドラマになっている。


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14才の母 第5話

2007年11月28日 | ホームドラマ
 第5話 「バイバイ…初恋が死んだ日」

★自分と向き合うということ
 未希(志田未来)は自分と向き合い、子供を産むことにする。
 理由は会いたいから。
 自分の心が元気でいられる方法はこの子を産むことだから。
 『自分の心が元気でいられる』
 これはひとつの生き方の哲学だ。
 困難は少女を哲学者にする。
 われわれはお金や人の目を気にして、『自分の心が元気でいられる』ことをどんなにやっていないことか?
 しかし、そうした生き方を貫くには失う物もたくさんある。
 学校、友だち、DJになる夢。
 未希は休日に学校に来て放送する。
 「学校が大好きでした。DJになることが夢でした。でも赤ちゃんを産むことはそれと同じくらいに大事なことです」
 智志(三浦春馬)も失った。
 未希は智志に言う。
 「勉強してなりたいものになって。桐ちゃんが元気でいてくれればそれだけでがんばれる」
 子供への大きな愛は智志に対してもこの様なことを言わせてしまう。

 強い。

 たださすがの未紀も母親を失うことは嫌だった様だ。
 彼女は心の中で叫ぶ。
 「お母さんだけは見守っていてほしい」
 これが逆にせつない。

★母親
 母・加奈子(田中美佐子)も強い。
 「会いたい」というだけで子供を産もうとする娘の甘さを非難。
 非難されて泣く娘に
 「こんなことで泣くなんて。これからの現実はもっとつらいんだよ」
 真剣な叫び。
 この言葉は未希の心に響き、以後、未希は泣かない決心をする。
 そして加奈子はこう言いながら、一方でこう思う。
 「あなたがどこにいても見守っている。どんなに険しい道でも見守っている」

 強い。

 父・忠彦(生瀬勝久)が「今、大きな声を出さなくていつ出すんだ!?やめさせろ!」と叫ぶのとは対照的だ。
 加奈子は娘のために闘う。
 「智志は認知しない」という母・静香(室井滋)には、「娘はそんなことを望んでいません」ときっぱり言う。

 子供が出来るまでの未希も加奈子も平凡な人間だった。
 しかし困難はこんなにも人を強くする。
 結びつきを強くする。

 これが描かれるとドラマはどんどん感動的になる。

※追記
 未希は自分に何も言わない教師・香子(山口紗弥加)に「先生はどう思っているのか」と尋ねる。
 恵(北乃きい)らまわりの人間は非難を含めて自分に意見した。
 しかし香子は何も言わなかった。
 それは過去の出来事で香子が他人に対する言葉を失ったためだが、こういうキャラクター造型、立ち位置は面白い。


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ガリレオ その3

2007年11月27日 | 推理・サスペンスドラマ
★推理ドラマ、推理小説の構成要素
  1.トリック
  2.証拠
  3.動機

 第7話「予知る」

 トリックはER流体。
 普段は液体だが電流を通すと粘性が出るという液体。
 これを使って偽装首吊りを行った犯人。

 証拠は次の様なもの。
 余命あとひと月。
 もう一度ヨリを戻してくれたら全財産を譲ると言って首をくくろうとする元夫・菅原(塚地武雅)。
 財産がほしい元妻・静子(深田恭子)は菅原を助ける。
 電源コードを抜いてER流体を液体に戻して。
 しかし、その行為はER流体を仕込んでいることを知らなければ出来ないこと。
 これで静子が犯人であることが証明された。
 これが証拠。
 今回、湯川(福山雅治)は証拠を得るために罠をはめたのだ。

 そして動機。
 すべては菅原の財産を奪うため。
 静子は共謀して夫に愛人を作らせ、ER流体で自殺させた。
 愛人を作った上に自殺させた。
 このことの慰謝料で静子は菅原と別れ慰謝料をせしめたのだ。

★湯川のキャラクター
 ここで面白いのは湯川のキャラクターだ。
 彼はトリックの究明、証拠固め=証明には情熱を注ぐが、動機には一向に関心がない。
 ER流体のトリックを解明した後、湯川は薫(柴咲コウ)に言う。
 「動機を調べるのは君たちの仕事だ」
 後日、薫は静子の動機について報告するが、湯川は聞き流すだけ。

 彼は人間的なこと、心の問題には関心がないのだ。 
 その理由は明らかにされていないが、美しい矛盾のない物理の数式の中に生きることが彼には快適であるらしい。

 しかし、そんな彼も心の片鱗を見せる時がある。
 静子が逮捕されて菅原に「酒でも飲みに行きませんか」と言う湯川。
 静子にはこう諭す。
 「あなたは科学者に向いていない。金に執着する人間には無理です」

 彼は決して物理の中のみに生きる変人ではない。
 オモテには出さないが、心の奥底には人間的なものが流れている。
 しかし、それら人間的なものに関心を持たないようにしている。
 この点を城ノ内桜子(真矢みき)は「ミステリアス」と言っているのだ。
 薫はまだ若くてそんな湯川の心の奥底がわからない様だ。

※追記
 深キョンが悪女!
 「金に執着する人間に科学者は無理です」と言われて「そうだったら私には無理ね」という時の顔などは魔性を感じる。
 新境地開拓だ。


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世界の果てまでイッテQ! 珍獣ハンターイモト 

2007年11月26日 | バラエティ・報道
 「風林火山」を見終わって何となく日テレを見たら……。

 コモドドラゴン!!

 インドネシア・コモド島に生息する全長3mを超える世界最大のトカゲ。
 性格は極めて凶暴。
 そして信じられない速さで走るという。

 ヤギをまるごとのみ込む映像があって腹がパンパンに膨れている。
 お腹が満たされれば、1ヶ月間、何も食べずに生きられるそうだ。

 そして恐怖の唾液。
 50以上のバクテリアがいて、噛みつかれて唾液が体内に入ると、感染症を起こして獲物は死んでしまうという。

 感動ドラマもいいけれど、たまにはこういうのもいいですなぁ。
 神秘、不思議……、そして今回は怖ろしい珍獣。
 退屈な日常から我々を解き放ってくれる。
 ヤギが丸ごと食べられてしまう映像なんて非日常。
 おまけに殺人バクテリアを持つ唾液!?

 しかも怖ろしいのは日本のテレビ。
 『巨体を揺らして猛スピードで走る』姿を映像に撮るため、イモトというセーラー服芸人の腰に肉のついたロープを着け、コモドドラゴンと駆けっこをさせるという。
 イモトは鳥取県大会100m走でベスト8の実績を持つ俊足の持ち主らしいが、もし転んだりしたらドラゴンに噛まれて殺人バクテリアが……。
 そしてノタノタやって来るコモドドラゴン。
 肉を見つけてイモトを追う。駆けっこ。
 さすがに人間の方が早いが、イモトは途中でコケてしまう。
 しかしイモトは恐怖のためか転んでから0.6秒で立ち上がる。
 ここでナレーション。
「だが、我々はこのレースで更に驚くべき珍獣の生態を目撃した。それは恐怖に怯える人間が発揮する信じられない能力。イモト転んでから立ち上がるまでわずか0,6秒!」
 コケたことも笑いにしてしまう貪欲さ。
 日本のテレビはある意味、コモドドラゴンより怖ろしいかもしれない。

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冬のソナタ 第16・17・18話

2007年11月25日 | テレビドラマ(海外)
★第16・17話
 記憶も戻り、サンヒョク(パク・ヨンハ)も祝福して、ふたりはそのままゴールイン、ハッピーエンドと思いつつ、さらなる試練が……。
 チュンサン(ペ・ヨンジュン)出生の秘密。
 ふたりは兄妹?
 第1・2話で作者が仕込んでおいた爆弾がここに来て爆発した感じだ。
 チュンサンの自分探しはさらに続いていたとも言える。
 
 チュンサンは自分の出生を知るに連れて悩む。
 反対されても結婚しようとユジン(チェ・ジウ)に持ちかける。
 一方、ユジンはそんなチュンサンの悩みを知らない。
 強引だとは思いつつチュンサンの言うことに従う。
 そんな関係図式で物語は進行していく。

 それにしても他人が幸せなシーンを見せられるというのは……。
 17話、雪で戯れるふたり。
 チュンサン、そんな大きな雪の塊をぶつけて、いくら何でもひどいだろうとツッコミを入れたくなってしまう。
 まあ幸せなふたりというのは大きな雪の塊を頭から落とされても幸せなんですね。
 その他にもツッコミ。
 おいおいふたりとも社会人なんだから仕事しろよ。
 おいおいユジン、ウエディングドレスにコート羽織ってくるか?
 幸せなシーンというのはほどほどにしてほしい・笑

★第18話
 18話はシナリオとして優れている。
 最初の海にやって来たふたり。
 チュンサンにとっては最後の海だとも思っている。
 ユジンは希望溢れる未来の予感に大はしゃぎしている。
 そのすれ違いがいい。

 例えばカメラ。
 「自分を思い出させるような物は残したくない」と考えるチュンサンにユジンは「たくさん思い出作りましょう」と言って簡易カメラ。
 チュンサンは自分は撮らずユジンばかり撮ろうとする。
 カメラを向けられて笑わない。(ちなみに韓国では写真を撮る時「キムチ」と言うらしい)

 例えば両面オモテのコイン。
 いつもオモテが出るから「運命なんて怖くないわ」というユジン。
 しかしふたりは運命の悪戯に引き離されようとしている。

 例えばポラリスのネックレス。
 落として星の部分が取れてしまった。
 チュンサンには明日去らねばならない暗示の様に見える。
 自分の思い出に繋がるようなものは残したくないという想いから「修理するから自分に返してほしい」と言う。

 例えばケンカ。
 たい焼きを買っている隙にはぐれてしまうふたり。
 チュンサンが本気になって怒るシーンが彼の真剣な気持ちを物語る。
 それに応えてユジン。
 「はぐれても大丈夫。あなたが見つけてくれるから」
 この言葉にチュンサンはどんな想いがしただろう?

 そして別れの晩。
 チュンサンは諭す。
 「君はそそっかしいから注意しないと。考え事をしながら歩いてはダメ。断ることも覚えなきゃダメ。断った方が相手のためになることもある」
 ユジンにより良く生きてもらいたいというチュンサンのメッセージ。
 「私に長所はないの?」と怒るユジンと「ないよ」と答えるチュンサンの関係は高校時代を見ている様で微笑ましい。

 そして夜の海のチュンサン。
 彼は両面オモテのコインを海に投げる。
 次にカメラを投げる。
 最後にためらいながらネックレスを投げる。
 せりふにしなくてもチュンサンの気持ちが伝わってくる名シーンだ。

※追記
 それにしてもユジンは幸せ者だ。
 チュンサンもサンヒョクもユジンが傷つくと思って本当のことを言わない。
 チュンサンは「親不孝をするわけにはいかないからユジンと別れる」という伝言を残して去っていく。
 サンヒョクも「ユジンと別れなければよかった。そうすれば僕が恨まれるだけで済んだ」。
 ふたりとも自分が悪者になってユジンを悲しませまいとする。
 本当のことを言わないことが彼女にとって幸せかどうかは議論の分かれる所だが。


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オトコの子育て

2007年11月24日 | ホームドラマ
 「結婚できない男」そして「オトコの子育て」、脚本家・尾崎将也ワールド。
 共通しているのはまわりと異質なオトコが巻き起こす摩擦とドラマだ。

 「結婚できない男」の桑野信介(阿部寛)はひとりが大好きな中年おたく。
 「オトコの子育て」の矢野篤(高橋克典)はいい加減オトコ。自分には資格がないとして子供は放任。子供のすることに「まあいいんじゃないの」で済ませる。マスターの大平万作(加藤茶)は「心の奥には深い傷があってヘラヘラしてるだけじゃないの?」と言うが、本当にヘラヘラしてるだけらしい。

 こんな篤だからまわりとの摩擦は絶えない。
 凛子(夏居瑠奈)、そして弥生(国仲涼子)がそうだ。
 凛子は拒絶。
 弥生は篤のすることにいちいち突っこむ。
 ニセ育毛剤のセールスをすることに心を痛めていたという篤に「一応、痛むんだ」。
 でも販売実績はよかったという篤に「結局(会社に)いたんじゃない」。

 これは「結婚できない男」で信介にまわりが怒り出すのと同じ図式だ。
 これが尾崎ワールド。

 さてこうしたキャラクター、人間関係の中で描かれるドラマとテーマだが、説得力がある様に描ききるのはなかなか難しい。
 理由は篤がいい加減キャラで、金八先生の様にストレートに暑苦しく問題に向き合わないからだ。
 篤は問題が起こると「まあいいんじゃない」でかわす。解決するために積極的に関わらない。
 事の推移を見守っていて最後にメッセージを送る。

 第4話では「男は見た目じゃねえってわかっただろう? これで男を見る目が出来ただろう?」「いずれ本当にお前のことを愛してくれる男が現れるさ。楽しみだな」
 第5話では「夢なんて他人と比べるもんじゃないだろう?自分にとって大切なものが夢だろう」「とりあえず持つなら大きな夢をみようや」

 篤は事件を体験したキャラが心に抱えているもやもやとしたものを言葉にしてあげるだけ。
 言っていることは「なるほど」と思うのだが、主人公が問題に積極的に関わっていくドラマを期待している人には物足りないだろう。
 なかなか難しい作劇だ。

 どうしても比較してしまうが、ドラマとしては「結婚できない男」の方がよく出来ている。
 信介の言動を通して、『ひとりでいること』『家族を持つこと』の意味をいい悪いでなく、考えさせられてしまう。

※追記
 付箋を貼った凛子のなりたい職業への篤のコメント。
・キャビンアテンダント……「大変な仕事だ。空の上で立ちっぱなし、いやな客もいるだろう。でも男にモテるし、いいか」
・建築家……「収入がいいな。5000万の家を建てるとして手数料は10%の500万。これに事務所の経費とアシスタントの給料を差し引いて。でも年に建てられるのはそんなに多くはないから割りのいい仕事じゃないな」

 これは、本の力を借り他人と同じ様な夢をみようとする凛子への篤の指導であろうか? それとも思ったことを言っただけだろうか?

 
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医龍2 カルテ7

2007年11月23日 | 職業ドラマ
 カルテ7

★松平幸太朗(佐藤二朗)の過去
 松平は消化器外科のエースだった。
 教授にも認められて大学病院での助教授の椅子が。
 だがそのことが彼を狂わせた。自分を見失わせた。
 治療が患者ではなく教授の顔色、出世に向くようになった。
 教授の期待に応えるため、点数のあがる手術ばかりを行い、論文を改ざんした。
 後は転落。
 医療ミスを表向きの理由にされて大学を追われ北洋へ。
 酒浸りの毎日。
 自分を頼りにしている紀枝(高橋ひとみ)には「医者に過剰に期待しないで下さい」

★松平の葛藤
 ドラマは葛藤である。
 今回は松平の葛藤。
 患者に向き合うか?逃げるか?
 朝田龍太郎(坂口憲二)は言う。
「あの患者は戦っている。敗戦処理?誰が負けたと決めた」
「この患者はあいつの患者だ。必ず戻ってくる。あいつが医者である限り」
 松平がこの言葉に応えられるか否かがドラマの焦点になる。

 その葛藤の描かれ方は次のとおり。
・緊急手術。手術画面が映し出されたテレビを消しまくる松平。
・ぬいぐるみを握りしめて祈る紀枝の子、香奈(川島海荷)。
・手術する朝田。藤吉圭介(佐々木蔵之介)が叫ぶ。
「松平はまだか」「まだか松平は」
・ふるえている松平。
・香奈の「先生は神様、スーパードクター」という言葉(回想)。
・酒をコップに注ぐ松平。あふれるウイスキー。
 松平がそれに口をつけるかつけないか?
 飲んでしまえば手術はできなくなる。
・走ってくる藤吉。
 デスクに松平はいない。
 デスクの上には口のつけていないコップと香奈の描いた絵。
 ※これで松平が手術に向かったことがわかる。
・歩いてくる松平。
 ※「医龍」ならではの登場の美学。葛藤の末の見せ場でもある。
 香奈に言う。
「先生、戦うから。お母さんといっしょに」
・手術室に入ってくる松平。
「ここからは俺の仕事だ」
 それに応えて朝田。
「術野は確保できている」
 荒瀬門次(阿部サダヲ)も。
「つき合うぜ、大将」
 かっこいい。
 その前の葛藤シーンがあるからこれらのシーンが活きてくる。
 
 葛藤から行動へ。
 これがドラマの基本だ。

※追記
 今回のもうひとりの主役は荒瀬門次(阿部サダヲ)。
 機材がなくて麻酔がかけられない。
 小高七海(大塚寧々)は帰っていない。呼び出していたのでは間に合わない。
 そこへ登場したのは荒瀬。
「彼女は俺の患者でもあるんだ。彼女の子供に世話になった」
 外山誠二(高橋一生)が「できるのか、お前に?」と問うと
「誰に言ってるんだ? 61キロ」

 ここも「医龍」ならではの登場シーンの美学。
 来てほしい時に来てほしい人が登場してくれる。

 手術後、明真での荒瀬の言葉も利いている。
「面白れえよ、むこうは。わけのわからないヤツがばかりで。俺に向いてるのかもしれねえな」


 
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相棒 「裸婦は語る」 

2007年11月22日 | 推理・サスペンスドラマ
 第5話「裸婦は語る」

★5分で事件解決!?
 今回は開始5分で事件の全貌が明らかになる。
 画家の立花(長谷川初範)のアトリエで、絵のモデルの妙子(秋山実希)の遺体が発見された。死因は階段から転落死。
 立花は落ちたことに気づかなかったという。
 右京(水谷豊)が気になったのは妙子の右腕にあった切り傷。
 階段から落ちたことではできない傷。
 どうやってできたのか?
 右京はすぐに見破る。
 遺体の側にあった甲冑。
 妙子は階段から落ちた時、甲冑を倒して傷をつけたのだ。
 そこで疑問。
 甲冑が倒れた時はとんでもない音がする。
 立花が気がつかなかったのはおかしい。

 立花が自白。
 妙子とギャラの件でもめていて階段でもみ合って転落した。
 罪は立花の過失致死。
 これで5分。

★しかし……。二転三転する事件
 しかし事件の真実はそうではなかった。

1.立花と妙子は愛人関係にあり、そのもつれから争いになり階段から落ちた。
 これを右京は妙子の手帳から導き出した。
 手帳に書かれた「G100」の文字。
 ギャラ100万円。この金額でもめるはずはない。

 しかし真実はそうではなかった。

2.立花は妙子が転落死した時、アトリエにいなかった。いなかったのは絵を盗むため。
 ある喫茶店に掲げられた裸婦の絵。
 これは5年前、立花のアトリエから盗まれた絵だった。
 絵は自分が描いたもので、ブラックマーケットを経てこの喫茶店に流れてきた。
 喫茶店の店主はお金で譲ってくれないと言う。 
 どうしても絵を取り戻したくて盗みに入ったというわけだ。
 そして妙子。立花が盗みに入った時、アトリエにいた彼女は偶然階段から落ちた。
 立花が倒れた甲冑の音を聞こえなかったのも当然だ。なぜならその時、彼はアトリエにいなかったのだから。
 妙子が死んだ時、立花はいなかった。
 盗みに入っていた。
 右京はこのことを妙子のメールと現場に落ちていたボタンから発見する。

 以上が事件の真実。
 次々に明らかにされる真実、変わっていく事件の様相。
 実にスリリングだ。

 しかし、ここは「相棒」。
 これだけでは終わらない。
 さらに隠された真実があった。

 以下、ネタバレ。


 それは立花が盗んだ絵に関わる秘密。
 なぜ立花はそんなに絵に執着したのか?
 それは……。
 そのモデルを立花が殺したからだ。
 モデルの胸の上にあった傷。これを立花は描いた。
 しかしモデルはそれを描かれることを嫌がって口論。
 絵を守りたくて立花はモデルを……。
 立花はモデルを山中に埋めたが、事件の発覚を怖れて絵を取り戻そうとしたのだ。

 この衝撃の真実が描かれるところが「相棒」の魅力だ。
 物語の舞台はほとんどがアトリエの階段で、そのやりとりは舞台を見ているようだが、内容は詰まっている。
 派手なアクションはないが、次々と提示される真実は実にスリリング。
 脚本の力。
 実に見事。

※追記
 ラストもひとひねり。
 「自分が盗みに入ったことに気づいたのはいつか?」と聞いた立花。
 右京はランドリーに青いシャツがあった時だと言う。
 立花は白いシャツしか持っていなかった。
 それなのに青いシャツが1着ある。
 盗みに入る時、白いシャツでは目立ってしまうからだ。
 白いシャツ、青いシャツにそんな意味があったとは!
 実に見事。


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ガリレオ その2

2007年11月21日 | 推理・サスペンスドラマ
★湯川学というキャラクター
 第6話では湯川(福山雅治)のキャラクターが掘り下げられる。
 言うまでもなく湯川は理性、理論の人。
 それに対して内海薫(柴咲コウ)は言う。
「人の気持ちは物理みたいに割り切れるものじゃない。人にはバカげていると思いながらどうにかしてあげたいと思う時がある」
 湯川批判。
 それに対して湯川。
「心の問題なら僕の守備範囲じゃない」
 湯川らしいリアクションだ。

 しかし一方でこんなことも言う。
 船の中に閉じこめられた時のことだ。
「物理学者は数字や記号と向き合うのが仕事、単調な実験を何度も繰り返す。そんな物理学者でも喜びの瞬間がある。数式を解いた瞬間、この瞬間に物理学者は人と繋がる。物理学者は決して人間嫌いじゃない」

 彼は物理という世界での引きこもりだったんですね。
 物理を媒介にして世界と繋がっている。
 物理を通じてコミュニケーションをしている。
 直接、人と触れ合うことがなく、自分の心に他人が入ってくればハリネズミの様に針を立てる。
 先程の「心の問題なら僕の守備範囲じゃない」のせりふもそうだ。
 ラストの合コンは「相対性理論について話せる女性なら」というせりふもそうだ。

★薫との関係
 そしてさらに一考。
 湯川は薫に自分にないものを見ている。
 薫は心で動く人間。
 湯川はおバカだけれど、心で動くアナログの人間・薫のことが気になっている。
 惹かれている?
 なぜなら彼は薫になら心を開けるからだ。
 そんな湯川の想いは次のようなやりとりから感じる。
 「本気で誰かのためにがんばったことないでしょう?」と問う薫。
 湯川は何も答えないが、客観的に見てみると彼は薫のためにがんばって事件を解決している。
 物理的関心ということで薫に誤魔化しているが、彼が事件に関わる理由には薫だからというのもある。
 そんな湯川の想いに気がつかない鈍感さも薫らしくていい。
 
 このふたり、今後どうなって行くのだろう?
 やはりドラマは(推理ドラマでも)人間関係が近くなったり遠くなったりするのがいい。

※追記
 引きこもりと言えば「リモート」の引きこもり刑事を思い出す。
 女刑事との関係や壁に何かを書いて解決する所など、よく似ている。


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