平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

冗談じゃない!

2007年04月30日 | 研究レポート
 「冗談じゃない!」に見る喜劇の作り方。

 まずは完全な「振りまわされ型」。
 圭太(織田裕二)は様々なものに振りまわされ「冗談じゃない!」と叫ぶ。
 彼を振りまわし困らせるのは次の様な人と事柄。
★理衣(大竹しのぶ)
 かつての恋人。夫が不倫したとかで日本にやって来る。 かつての恋人であることがバレると困るというカセ。
 圭太に対しても積極的?次々と増えていく通販グッズも困りものだ。
★絵恋(上野樹里)
 20歳離れた妻という年齢ギャップもさることながら、理衣同様、行動・発想が突飛なのが特徴。第3話ではお金を稼ぐのに「ドリームレンジャー」になった。両親の離婚の危機を解決するため、フランスに行く行動力も(それが4話以降、圭太と理衣が同じ屋根の下、ふたりきりなるという状況も作った=キャラが動いてストーリーが展開したいい例)。
 ともかく「振りまわされ型」の喜劇の場合、主人公だけがまとも、まわりの人間はみんな変人でなければならない。
 その他にも変人、困ったちゃんはいる。
★冴子(飯島直子)
 ハンカチ王子(親父?)として憧れだったが、圭太に絵恋(えこい)がいることがわかって、圭太を苦しめる存在に。
 この手のひらを返した様なキャラの変わりようが喜劇キャラになっている。
★友田 聡(田中 圭)
 絵恋と両想いだと想っていた勘違い男。今後も絡んできそう。カレーのスプーンを使って、絵恋たちの会話を盗み見るといった行動ディティルも面白い。
★山田元雄(田口浩正)
 圭太の大学の同級生。理衣のことを圭太の元カノと思い出す危険性あり。山田が絵恋たちといっしょにいるだけで、圭太にはヒヤヒヤもの。亡くなった妻のことを思い出して泣くのも特徴。
 なお、息子の朗(荒井健太郎)、圭太のまわりの人物で唯一まともかもしれない。圭太が朗に説教されるところが楽しい。
 その他にも、来週以降、理衣の夫・広瀬壮平(草刈正雄)らが日本にやって来て、どんどん圭太を振りまわすキャラが増幅していきそう。
 主人公を取り巻く人物がどんどん絡み合って複雑な状況を作り出し、さらに主人公を苦しめる。この人物どうしが絡み合うという喜劇手法が面白い。
 また人物以外に主人公を困らせるものもある。
 リストラ、コンピューターのSEでなくファミレスの副店長として勤めなくてはならない状況。これは作者が主人公をさらに困らせるために作り出した状況だが、結婚して絵恋を守り養わなくてはならない圭太の状況や冴子との絡みなど、うまく機能している。
 また、圭太の高いプライドというのも、彼を困らせる状況に一役買っている。主人公の性格もカセや障害になるのだ。

 さて、この様な振りまわされ型の喜劇だが、ほろりとさせる場面も用意している。
 第1話では絵恋が「圭太が気にしている様だから、パパ、ママに結婚することをしっかり言おう」というシーン。
 第3話では絵恋が「置物じゃいやだ。圭太を助けるパートナーになりたい」というシーン。
 ぶっ飛んでいるヒロインであっても、ヒロインにはやはり観客に感情移入させる部分が必要。
 それにしても上野樹里さん、「のだめ」をきっかけにどんどんぶっ壊れ女優になっていく感じ。あの壊れ方が地でなく演技だとしたら大した女優さんだ。
 第3話の飯島直子さんの高笑いもよかった。

★追記
 ヒロイン・絵恋(えれん)の名前。
 映画「卒業」のヒロイン・エレンから来ているに違いない。
 「卒業」も母親、ヒロインと主人公の三角関係の話だった。


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おおきく振りかぶって ひぐちアサ

2007年04月29日 | コミック・アニメ・特撮
 自信がなくてキョロキョロオドオド。
 でも意味もなくプライドが高く我を張ることもあって(ピッチャー気質)。
 そんな三橋廉が主人公。
 今までこんなキャラクターが主人公になることはなかった。現代、不安の時代が生んだ主人公であるとも言える。

 物語の構造は、そんな廉が自分のいい所をキャッチャーの阿部隆也や女性監督らから見出され、エース投手の顔になっていくというもの。
 これも現代人の抱いている願望だ。
 自分を理解してくれる他人を求め、世の中に力強く羽ばたきたいと思っている。

 さて、単行本第1巻の廉の成長過程はこう。
★名門・三星学園の投手だった廉。高校進学を機に西浦高校に。
★見学のつもりで来た廉だが、無理やり新設の野球部へ。新設ゆえに投手がいなくて廉は投手に。(この辺の過程はかなり強引)
★キャッチャー・阿部隆也との出会い。
 遅いが特異な球筋を持つストレートと抜群のコントロール、そして4つの変化球を持っていることがわかる阿部。阿部の好リードで花井を打ち取る。阿部は花井を打ち取ることで廉に自信をつけさせようとしていた。
★合宿
 監督の百枝は廉のコントロールがいいのは全力で投げていないからだと指摘。体全体を使って投げることを指示。体全体で投げる廉。コントロールは失われたが、ビリビリと毛細血管が切れる様な手の感覚を覚える。(こういう感覚表現がある所がこの作品の優れているところ)
 一方、全力投球で投げることは廉の良さを消してしまうことだ、と阿部は反論。
★共感
 阿部は廉の手のタコでこんなことを思う。
「シュートのタコ、スライダーのタコ、……こいつはこのタコをつくるまで、あのコントロールをつけるまで、一体何球投げたんだろう。こいつはこんなに努力してんのに、中学のヤツらがこいつから自信を根こそぎとっていったんだ。こんなに努力をしている男をチームから追い出したんだ」
 こうした心を通わせるシーンは大事だ。
★三星学園との練習試合
 かつてのチームメイトとの対戦。それを廉に自信をつけさせるための百枝監督の試練。阿部の巧みなリードで2回までを押さえ、廉は阿部に言う。
「オレ、ピッチャー楽しい。マウンドが楽しい。また、登りたい」
 小さなコマで語られるせりふだが、実に感動的。
 野球だけでなく、がんばっている人はこんな瞬間を味わうために努力している。


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LOST 第36~40話

2007年04月28日 | テレビドラマ(海外)
 「LOST」の物語の構造は次の3つになる。

★愛へのとらわれ
 登場人物たちはみんな愛する人を何らかの形で失っている。
 ジャックは妻と離婚し、ケイトは自分のせいでかつての恋人を死なせてしまった。サイードもそう。
 そしてチャーリーのクレアに対する気持ちの様にみんな、愛し愛されることを求めている。しかし、それがなかなかうまくいかない。
 第37話「天使の言葉」、チャーリーはクレアに拒絶される。チャーリーは家族を求めていた。だからクレアと息子のアーロンと家族になれることを望んだ。しかし、弱さゆえに持っていたマリア像のクスリのためにクレアの信頼を失って拒絶されて。彼の心の歯車が狂い始める。
 愛を求めて満たされない主人公たち。
 だからローズ夫婦の再会やジンとサン、クレアの出産といったエピソードが温かく感動的になる。
 また一方で愛する者を得ることは苦しみも伴う。
 第36話「境界線」、マイケルは息子のウォルトを連れ戻すために敵地に向かう。
 第40話「記憶の扉」、クレアは息子アーロンが伝染病にかかったと思い、ジャングルを狂気にとらわれてさまよう。彼らは自分の思いにとらわれて、他人の意見に耳を貸さない。彼らに心の平安はない。愛の苦しみだ。

★過去へのとらわれ
 登場人物たちは自分の犯した過去にとらわれている。
 第38話「詐欺の手口」、ソーヤは詐欺師。自分を愛し信じてくれた女性を裏切ってその財産を奪った。彼は心の底では優しいナイーブな性格だから、騙したことに罪の意識を抱いている。結果、彼はワルを装い、人(ケイト)に愛されると拒絶して逃げてしまう。
 第39話「捕らえられた男」のサイードもそう。イラクの共和国防衛隊の兵士だった彼は米軍に利用され騙されて、仲間に拷問を行う。彼はまわりがすべてウソの世界に生きてきた。みんなが自分を利用して騙そうとしている。人を信じて裏切られる。だから「他の者たち」と思われる男を拷問して言う。「どうしてウソをつくんだ?どうしてウソばかりなんだ?」それは悲痛な叫び。
 みんな過去にとらわれて、新しい自分に踏み出せない。

★島の謎
 現状では島の謎はその断片が示されるだけで明らかにされていない。
 ダーマ・イニシアチブ。他の者たち。さらわれる子供。108分の数字入力。運命。黒い煙の様な物体。
 かれらの断片が繋がってどんな絵が描かれるのだろう。
 それは「愛にとらわれること」「過去にとらわれること」と無関係ではないような気がする。


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わたしたちの教科書 第3話

2007年04月27日 | 学園・青春ドラマ
 第3話。描かれるのは学校と生徒の現状。
 精神科医によって語られる「子供は大人と戦争をしている」という現実。
 大人の言うことなど信じられなくて、戦争をしているという現実。

 山藤拓巳は加地耕平(伊藤淳史)に心を開いたふりをして裏切る。
 早紀(真木よう子)の不倫写真のメール送付。
 おとなたちへの戦争。
 耕平はコスプレをした山田加寿子とホテルに入ろうとしている写真を撮られる。
 これは宣戦布告。
 もし自分たちの世界に立ち入るようなら容赦はしないぞという意思表示。
 この姿の見えない不気味さ。(「生徒諸君!」では謎の3TDという形でそれを表現していた)。

 そんな現状の中で珠子(菅野美穂)だけが戦争を行う。
 裁判所を使い、自らもピアニストだと偽って生徒・仁科朋美に近づく。
 そこにはアンケートなどという安易な方法で真相と解決をしようとする耕平の甘さなど微塵もない。
 それにしても耕平は青臭い。「ぶつかれば生徒は心を開いてくれるんです」と信じている。自分の授業を聞いていない生徒を注意しない早紀には「何のために授業をしているのか?」「何のために学校はあるのか?」と問う。もはや耕平が考えている答えなど意味がないくらいに学校は疲弊しているのに。
 耕平はまだ現実を見ていない。理想だけに生きている。
 迷いながらも誠実さで戦おうとする耕平と手段を選ばない戦争で戦おうとする珠子。
 「理想」と「現実」、「耕平のやり方」と「珠子のやり方」。
 作者はどういった形で決着をつけるのか?

 学校の現状についてその他描かれたのは、いじめの実体。
 明日香と朋美は無視をされた。「見えない」「聞こえない」存在。「透明人間」。
 そして親の存在。
 参考書で頭を軽く叩いた耕平に抗議する。理科の授業で受験科目の勉強をして注意したら、「どうして受験勉強したらいけないのか?」「これは子供の自主性だ」「受験に失敗したらどう責任をとるつもりか?」と詰め寄る。

 最後に朋美がいじめのことを話し、珠子と抱き合うシーンは見事。
 珠子は「あなたを守る」と言いながら、目は遠くをみている。今後の戦いで朋美を利用してやろうという感じがうかがえる。一方、朋美も珠子のウソに気づいて、握りしめていた手を緩める。
 目と手だけで表現する感情。
 こういうシーンも怖い。


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スラムダンク 湘北×陵南

2007年04月26日 | コミック・アニメ・特撮
 「スラムダンク」陵南高校との練習試合にみるキャラの立て方。

 主人公・桜木花道はこう描かれる。
★ギャグ
 試合に出られない花道イライライライラ。
 陵南に屈辱を味あわされ燃えた流川の活躍にイライライライラ。
 花道は「秘密兵器」だと言われた安西先生にあたり、敵の監督・田岡にもカンチョー。敵の作戦会議にもスパイとして参加する。
 実に人間っぽい。わかりやすい。
★真打ち登場
 そんな花道だが、赤木が怪我で倒れ、試合に出場することになる。
 ここで作者は簡単に主人公・花道を活躍させることはしない。
 「桜木ビジョン」……緊張のあまり視界が著しく狭くなってしまう。「何も見えねえ」「何も聞こえねえ」
 これでミスの連続。しかし、陵南の魚住や田岡監督に突っ込んで鼻血を流させるという貢献?も。そんな花道だが、ライバル流川に気合いを入れられて元に戻る。
★抜群の身体能力
 シロウト花道の優れた点のひとつ。
 フンフンディフェンスで魚住からボールを奪う。
 花道は「さあ、オレの足を引っ張るなよ」と調子に乗っている。陵南も動揺する。センターの動きでない花道に田岡はシロウトだと思うが、メガネくんへの巧みなパス。実は流川に活躍させたくないからそうしただけなのだが、流川中心でゲームを組み立てて来ると思った田岡はこう感想を漏らす。「ヤツは切れる。相当キレる」
★リバウンド
 シロウトの花道が持っている武器は前日、赤木から習ったリバウンド。
 花道はこれを披露する。
 ここで作者が巧みな所は、リバウンドの大切さを花道に気づかせる所だ。
 流川らがリバウンドをとって活躍するのを見て、花道は気づく。そして習ったリバウンドを使ってみる。花道の性格だと人に言われてやるということはなかなかしない。だから気づかせる。テクニックの重要さを。
 キャラとマッチしたドラマづくりだ。見事なキャラの立て方だ。
 結果、スクリーンアウトのテクニックも駆使して、花道に与えられる称号は「リバウンド王」。
★闘う目的・動機
 花道が試合で戦う動機は晴子だ。
 しかし、それが次第に変化していく。流川に負けたくない→仙道に負けたくない→試合に負けたくない。
 ひとつの試合の間に動機がこれだけ変化して行っている。
 これが物語を豊かにする。
 そして、試合に負けたくないという思いが、安西先生の作戦・仙道への花道と流川による『ダブルディフェンス』に繋がる。普段の花道なら流川との共闘など絶対嫌だろうが、花道は承服する。
「オレの足ひっぱるんじゃねーぞ!ルカワ」「よそ見してんじゃねえ!初心者」
「とれもしねえのにむやみに飛びつくな、どあほう!腰を落とせ!足を動かせ!相手の目を見ろ!」「珍しくよくしゃべるじゃねーか、ルカワ。天才の力を借りたくなったか」「負けるよりはマシだ」
 このやりとりの格好良さ。
★レイアップシュート
 花道のもうひとつの武器は、晴子と練習した庶民のシュート・レイアップシュート。
 これがラストを盛り上げる。
 敵の強力ディフェンスに阻まれ、花道にパスしてしまう流川。
 ナイスアシスト!花道はゴールに突進していく。スラムダンクで格好良くシュートを決めればヒーローだ。しかし、ここで「無茶はよせ!」という赤木の声と「桜木君!」という晴子の声を聞き、レイアップシュートに切り替える。
 この試合で「勝ちたいという意思」と「テクニックの大切さ」を知った花道ならではのアクションだ。
 それは以前の花道とは大きく違っている。大きく成長している。
 こうして成長するから、花道は主人公。
 そしてドラマとなる。
 試合は、その後、湘北の選手が一瞬気を抜いたため負けてしまうが、花道は最後の数十秒も気を抜けないということを学んだはずだ。

 最後に穴の開いた花道の体育館シューズ。
 この試合で奮闘した花道とバスケットの素晴らしさを知りバスケットマンとして歩み出した花道を象徴的に語っている。


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花嫁とパパ 第3回

2007年04月25日 | ホームドラマ
 恋愛ドラマは男女がなかなかくっつかないようにするのが基本。
 ふたりの間に様々な障害が立ちはだかる。
 「花嫁とパパ」の場合はお父さん賢太郎(時任三郎)。

 この障害に対し、どうリアクションするかで人物のキャラクターが出て来るのだが、娘・宇崎愛子(石原さとみ)の場合は反発。「自分の道を歩きたいの。お父さんから卒業したいの」
 一方、結婚を前提におつき合いを宣言をした三浦誠二(田口淳之介)は『誠実』。
 賢太郎の考え方を第一に考える。
 理由は賢太郎が愛子のことをすごく愛していることを知っているからだ。
 愛子も反発しているが、父親のことをすごく愛している。
 だから自分が入ることで、ふたりの関係を壊したくないと思っている。
 いい立ち位置だ。
 三浦はちゃんと話して了解をもらおうといい、愛子の母親の墓前で挨拶する。父親とケンカする愛子を叱った。
 そんな三浦だから頑固な賢太郎を動かした。障害を乗り越えた。
 「交際5カ条」を破ってしまって、また一波乱というラストだったが、誠実な三浦のキャラクターが物語を動かした。
 ストーリーに沿ってキャラクターが動くのではなく、キャラクターがストーリーを動かしているいい見本だ。三浦のキャラクターが違っていたら、愛子と三浦は食事に行って門限を大きく破り、別の物語展開になったはずだ。

 さて、ふたりの間に立ち塞がる障害。
 賢太郎と「交際5カ条」は障害として健在だが、室長・鳴海駿一(小泉孝太郎)や槙原環(白石美帆)、広報室の先輩らも三角関係・四角関係になって、障害になりそう。今回、鳴海は「ださいと言われても捨てられない物」という点で愛子と共通点を見出した。還は愛子に嫉妬モード。先輩たちは三浦に。
 障害がどんどん大きくなっていくというのはコメディの王道だ。


★追記
 愛子は単に父親に反発しているキャラではない。
 賢太郎に「新しい世界に触れて浮かれているだけだ」と言われて「浮かれてどこが悪いのよ。好きだったら浮かれて当然でしょう?」と反論するが、一方の目で、自分が浮かれていることを把握している。愛子は三浦に言う。「確かに浮かれていて、自分が三浦さんのことをどの位好きなのかわからない」
 反発だけでない、こういうメリハリが人物を魅力的にする。

★追記
 犬飼美奈子(和久井映見)の立ち位置も面白い。
 ラスト、ちゅう未遂現場を見てしまって怒り心頭の賢太郎。
 そこへ美奈子がやってきて「交際5カ条」のメモを愛子らに見せて、賢太郎の手から渡せと言う。悪気のないボケ役。
 このシーンが単に「未遂現場を見てしまって怒り心頭の賢太郎」だけだったら、当たり前すぎてあまり面白くない。美奈子が間に入るから膨らんで面白くなる。

★追記
 せりふも面白い。
 告白した三浦をめぐり、翌朝ふたりは会話。
「寝耳に水」「棚からぼた餅」。
「自分たちのことは棚にあげて」「恋愛は棚に手が届くようになってからしろ」。 これも普通の会話だったら、面白さは半減する。
 テンポ、スピード感も大事だ。 

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プロポーズ大作戦 第2回

2007年04月24日 | 恋愛ドラマ
 第2話にはふたつのモチーフがある。
★岩瀬健(山下智久)はコーヒー牛乳を手に入れられるか?
★健は吉田礼(長澤まさみ)が投げかけたサイン(CDの中身と誕生日プレゼント)に気づいて、応えられるか?

 最初のコーヒー牛乳に関してはギャグタッチ。
 コーヒー牛乳を買うお金がなかったり(「よくこんなんで俺、生活できてるな」)、コーヒー牛乳を飲む教師に「間接キス」を求められていると勘違いされたり、6年後に走ることになる外国人マラソン選手に奪われたり、銭湯に入ったり。
 同時に礼たちのリアクションを挟むことで、『健が一途であること』『健のすることはどこかズレている』ことを描いた。わりと鈍い健のキャラクターを描いた。
 視聴者はそんな懸命な健を見て応援すると同時に、礼が求めているものはコーヒー牛乳ではないことを知っている。だから尚更ハラハラする。「早くCDの中身に気づけよ」とドキドキする。
 そして礼のサイン(CDの中身)。
 健は下駄箱でこれでいいのか?と思い留まり、CDを鶴見尚 (濱田岳)に貸そうとした時、礼が示した過剰な反応に思い至る。そしてCDを開けてみると『645か~645せ』のメモ。健は礼が図書室で借りていた本の背表紙を思い出して、図書室へ。そこにあったものは?
 この流れはちょっとミステリー仕立て。前半に提示された図書室の本などのいくつかの情報が繋がって、健を図書室に向かわせる。
 青春ドラマの中にこんな『ライトミステリー』が入れられているなんて、なかなかおしゃれだ。
 『青春』『スポーツ(野球)』『ファンタジー(妖精)』、そして今回の『ミステリー』。
 様々なジャンルの要素が盛り込まれているのが、この作品の魅力。
 実に楽しい。

★ふたつのモチーフが同時進行して見る者をハラハラさせること。
★様々なジャンルの要素が盛り込むこと。
 これを作劇のテクニックとして覚えておきたい。

 そして今回、健はかなりがんばった。
 点数で言えば、80点ぐらい?
 まず礼の出したサインに気づかずに「誕生日プレゼントちょうだい」と言った6年前の健は40点。
 がんばってコーヒー牛乳を探して、結局渡すことはできなかったけれど「礼の不機嫌な顔を全部笑顔に変えたい」と思い、「結果は結果だ」と言って謝ったところは60点。
 その後、礼が「気持ちだけもらっておくよ」と言った笑顔に有頂天にならず、その後の暗い顔に気づいたところは70点。
 さらにCDの中身に気づき、『バースからのハッピー”バース”デー』を見つけた所は80点。
 黒板に書いた告白(『隣の人に大事な人がいた』)が礼に読まれていれば、100点満点だったのだが、運命は厳しい。礼の夫となる多田哲也(藤木直人)に消されてしまった。

 このドラマの主人公・健の目的は「過去に戻っていかに礼の心をとらえるか?」だが、作家は60点の解決方法を描くだけでなく、70点、80点、そして100点となる解決方法までも用意している。
 それがこの作品を面白いものにしている。
 そしてこれはこれから物語を作ろうとしている人には参考になる。
 つまり『主人公の目的を解決するために、作家は60点、80点、100点の解決方法を用意する』ということ。
 全部描くか描かないかは別として、これをすることで作品が豊かになる。


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ライアーゲーム 第1・2話

2007年04月23日 | その他ドラマ
 互いにウソをつきあってお金を奪い合うライアーゲーム。
 まず面白いのは、主人公にそんなライアーゲームには全く不似合いな“バカ正直のナオ”神崎直(戸田恵梨香)を設定したことだ。なにしろ直は100円の落とし物を届け、いたずらのデートで待つこと5時間、落とし穴に落ちること数十回のバカ正直。
 そんな彼女がなすことがトラブルになって事件や傷口がどんどん大きくなっていく所がいい。第1話では中学時代の担任教師の藤沢和雄(北村総一朗)だった。藤沢の元へ向かった直は藤沢の預かるという言葉を信じて1億円を預けることに。第2話では藤沢にお金を返したこと(直は「人間を信じないなんて、そんな哀しいことを言わないでください」と言ってお金を返す)で5000万を払っての棄権ができなくなり、警官の谷村光男(渡辺いっけい)に騙されて2回戦への参戦することになってしまう。
 ストーリーがキャラクターを動かすのではなく、キャラがストーリーを動かしている感じだ。
 天才詐欺師・秋山深一(松田翔太)の立ち位置もいい。
 直を助ける王子様の役回り。
 視聴者は窮地に陥る直にハラハラして感情移入する分、秋山の緻密に計算されたお金を奪う方法に驚かされる。秋山がヒーローに見える。
 主人公が暴れ、脇役が助けてフォローする。
 そんなキャラクターの図式がこの作品にはある。

 さて第1・2話のドラマの焦点は藤沢の1億と直から騙し取った1億をいかに奪うかということ。2億円の在処といかに金庫を開けさせるかが焦点になる。
 それはまさに心理戦。
 自分は有利で絶対に2億円を守りきれると考える藤沢と絶対に奪えると言い切る秋山の「認知的不協和」を利用した心理戦。
 以前あったクイズ番組「ザ・チーター」や今の形ではない「ヘキサゴン」などは駆け引き・心理戦のクイズ番組だったが、この「ライアーゲーム」はそのドラマ版と言える。
 恋愛ドラマ、刑事ドラマ、ホームドラマなどとはまったく異質な新しいジャンルのドラマであるとも言える。
 今後も同様のドラマが作られていくのではあるまいか?
 また、秋山の打つ手に二の手・三の手があったり、ゲームの期間というタイムサスペンスもある点は、この作品をハラハラドキドキのエンタテインメントにしている。

 そして第2回戦。
 2回戦は1回戦を勝ち抜いた22人に拠る負け抜けゲーム。
 1話とは違ったゲームでしかも敵も一癖も二癖もありそうな連中というのが工夫してある。より強い敵を主人公と闘わせるというのは少年ジャンプの作劇手法だが、ヤングジャンプ連載のこの作品でもそれは活かされている。
 また第2回戦への持って行き方がうまい。
 直の様な子なら二度と「ライアーゲーム」に参加しようとは思わない。
 ではどうやって2回戦に参加させるか?
 ひとつは棄権料5000万円というカセ。
 もうひとつは警官に騙されるという罠。
 実に巧みでうまい。

★追記
 時間経過を現す方法として、第1話では熱帯魚が使われた。
 最初、秋山は「熱帯魚の飼い方」という本を読んでいる。しかし、別の日には水槽に水を入れ、また別の日には熱帯魚に餌をあげている。


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生徒諸君!

2007年04月22日 | 学園・青春ドラマ
 学園ドラマのパターンというのがある。
 熱血教師が生徒たちにぶつかっていって、生徒たちが少しずつ心を開いていって……。
 このドラマはまさにそれ。
 熱血教師に対立するのは生徒だけでなく、まわりの教師もというのもパターン。
 おまけに生徒たちが大人を信じなくなった出来事があったというのは「GTO」。
 教師が「不良あがり」や「ヤクザのひとり娘」の変化球でなく、ストレート・直球の熱血教師というのが特徴だが、今の時代にどう受け入れられるか?
 またストレート・直球なのはいいが、扱われている素材がカツアゲなど浅いのが気になる。金八先生では「性同一障害」や「中学生の妊娠」など、もっと深い、突っ込んだテーマを扱っていた。カツアゲは今の学校の現実なのかもしれないが、一般人でも思いつくような事件というのはちょっと。
 カツアゲの解決の仕方も、相手の学校に乗り込んでいって、カツアゲをした生徒を呼び出して、証拠を見せろと言われれば安易に音声録音が出て来てと結構軽い。録音機を踏みつぶされまいとして手を出し、結果怪我をして生徒と心を通わせるというのも安易な解決。
 ちょっとひねってあるのは、心を開いたと思ったカツアゲされ少年・渡辺くんがドッジボールのシーンで発言を翻すところだが、その後すぐに謝るのは安易。「怪我をしているのは左手」と嘘をつくのは少し工夫しているが。
 ということで結構、安易な作りをしているこの作品。
 パターンに乗っかって描かれるのは安心して見ていられていいのだが、もう少しがんばってほしい。
 内山さんも堀北さんもがんばっているのだから。
 
 以下、パターンの実例。

★熱血教師
「わたし、諦めるって言葉が一番嫌いなんです」(これも度が過ぎると今はウザいになる)
「顔と名前を全部覚えてきた」(こういうせりふを本人が自分で言ってはいけない)
「先生と呼んでくれて嬉しい」(これも新任の教師が言いそうなせりふ)
「3TDへの依頼、わたしが引き受ける」(問題に自分の体でぶつかっていくのが熱血教師。しかし3TDって、こういう所がマンガチック。F4みたい)
「苦しんでいる理由がわからなければ、あの子たちの心は開けない」
「言いたいことを言ったんだから、それでいい」(渡辺くんに言ったせりふ。確かに言いたいことをずっと胸の中にしまっておくから鬱屈していくのだが)
「反感・反抗にエネルギーを使わないで前向きなことにエネルギーを使おうよ」(いい言葉だとは思うが、これを曲がってしまった生徒にストレートにぶつけるのはどうだろう?逆に反発しか生まないのでは?)

★サラリーマン教師
「生徒はお客様。教育はサービス」(「わたしたちの教科書」にも同じせりふあり)
「どれだけ有名高校に入れられるかが教師の評価」
「教師は出世してなんぼ」
「あたし、今日は合コンなんです」(上原美佐さんってこんな役ばかり。可哀想)

★反発する生徒たち
「このクラスに教師はいらない」
「大人はかばい合い、平気でウソをつく。信じられない」


  
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ホテリアー 第1話

2007年04月21日 | 職業ドラマ
 まず主人公の小田桐杏子(上戸彩)の人物造型がいい。
 公式HPから引用すると……
「東京オーシャンホテルのフロントアシスタントマネージャー。出生の秘密を知って自暴自棄になり荒れた生活を送っていたが、偶然出会った緒方の助けで、東京オーシャンホテルで働くようになった。実の娘のようにかわいがってくれるホテルの北野社長夫妻の愛情に応えようと、懸命に働いている。正義感が強く仕事熱心なあまり、時に熱くなり過ぎることも」
 杏子にとってはオーシャンホテルの人たちは家族。
 その家族を守るために働き、闘う。
 実にわかりやすい。

 このドラマの目的も明確だ。
 緒方耕平(田辺誠一)が友人シン・ドンヒョク(ペ・ヨンジュン)に語った夢。
「杏子がホテルウーマンとして成長していくのを見守っていきたい。杏子といっしょにオーシャンホテルを世界一のホテルにしていきたい」
 つまりこのドラマは ★杏子の成長物語 ★世界一のホテルにする物語。
 実にわかりやすい。

 杏子を取り巻く人物たちもわかりやすい。
 味方は新社長のみつ子(片平なぎさ)、料理長の黒岩輝夫(塩見三省)など。
 敵は『東京オーシャンホテル』の買収を企む大日東開発・森本会長(竹中直人)。総支配人の座を狙う岩間武彦(東幹久)は緒方との関係で敵になりそう。
 面白いのは味方になるのか、敵になるのかわからない人物がいることで、「貴方に会うためにここに来ました」と言う水沢圭吾(及川光博)、森本の娘(サエコ)。みつ子の息子・洋介(佐藤祐基)なども面白い存在になりそう。

 作劇テクニックで面白いのは、ヨン様のシン・ドンヒョク。
 杏子と緒方の間を繋ぐ。
 杏子には緒方が語っていた夢を語り、緒方には杏子の必死な思いを告げた。
 結果、緒方はオーシャンホテルに戻ることに。
 こういう役割のキャラがいると物語がスムーズに展開する。

 偶然の使い方もこうすると不自然でなくなる。
 緒方を捜す杏子。
 なかなか緒方は勤めを辞め、住んでいた所を追い出され居所がわからない。
 では杏子をどの様に緒方に会わせるか。
 作家はこんな方法を使った。
・奪われる杏子のバッグ。
・窃盗犯を追う杏子。
・窃盗犯を追いかけるために杏子、水沢の車に。
・車の窓から緒方を発見。
 これくらいの手順を踏むと偶然も偶然に見えない。
 いろいろ応用できるテクニックだ。


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