平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

N’s あおい SP

2006年12月31日 | 職業ドラマ
 録画で遅まきながら見た「N’s あおい」SP。

 ドラマの構造は「理屈」対「感情」だ。
 ドラマはこの対立に沿って展開される。

 「理屈」は夏目彬(石田ゆり子)。
 彼女は科学的根拠に基づいた医療を合理的にこなし、残業も一切しないアメリカ流を貫く。
 「感情」は美空あおい(石原さとみ)。
 彼女は患者の心を大事にする。
 心で接する。

 夏目の主張はこうだ。
 患者のひとりひとりの心にまで関わっていたら、いくら時間があっても足りない。その分、最新医療技術の研究や勉強に時間を費やした方がよほど患者のためになる。また情にとらわれて判断を誤ることもある。

 夏目の言うことはある意味正しい。
 あおいは、花村(織本順吉)の心・望むことを理解しようとして膨大な労力と時間を使う。仏壇をハムごはんと勘違いしたりして。
 暴れる花村のために15分に1回の巡回をしなくてはならない。拘束した方が楽なのに。
 そのためヘトヘトになるあおい。
 新人はその泥臭いやり方についていけない。
 
 しかし「感情」は時として「理屈」を突破する。
 ボツリヌス菌による集団食中毒。
 懸命に苦しむ患者を助けようとするあおいの姿にまわりは心動かされる。
 患者を助けることに理屈はいらない。
 そして病院を抜け出した花村。
 花村の願いは、妻の仏壇にごはんをあげること。
 あおいはその願いをやっと理解し、すぐに病院に連れて行こうとする夏目にこう言う。
 「先生は病気だけを見ていて患者さんを見ていません」
 花村を自宅に連れていくあおい。
 そして花村から「アリガトウ」のメッセージ。
 心が通い合う瞬間。
 「理屈」「理論」は病気を救えるかもしれないが、心は救えない。

 ラスト。
 この議論の結論は高樹(柳葉敏郎)の言葉によってこう描かれる。
「俺たちの仕事に100点満点はないんじゃないのか?」
 夏目のやり方をしていけば、花村ひとりに関わっているあおいより多くの人を救えるかもしれない。研究をして医療技術を生み出せば、より多くの人が救えるかもしれない。
 一方、あおいのやり方は花村をその心も含めて救うことが出来た。
 人は何かを得れば何かを失う。
 大勢の命を救おうと思えば、ひとりの心が失われる。
 ひとりの心を救おうと思えば大勢の命が失われる。
 それはどちらが正しいとは言えない。
 だから高樹は100点満点はないという。

 「理屈」対「感情」、この対立軸で作られた「あおい」SP。
 しかし、何と言っても心を打つのはあおいのひたむきな姿だ。

 食中毒の患者を助けようとする姿。
 花村のことを何とか理解しようとする姿。
 これが見る者の心を打つ。
 人は理屈ではなく感情で動くもの。
 理屈よりも感情の方が強いものであることがわかる。

 だから理屈のキャラクターが感情をみせるとほろりとしてしまう。
 今回は夏目がそうだ。
 情に流されて兄を失った悔恨。
 兄のことで母親に責められて会いにいけない弱さ。
 これらのことが語られた時に視聴者は夏目に感情移入する。

 今後、ドラマを見る時、ドラマのキャラクターを見る時、「理屈」と「感情」の両軸から見てみると面白いかもしれない。

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24 シーズンⅤ 第23・24話

2006年12月30日 | テレビドラマ(海外)
 第23話(5:00)のストーリーはこう。

「ビエルコはロシア潜水艦を乗っ取り、ミサイル12基を手中に収めた。空軍による迎撃がミサイル発射までに間に合わないと踏んだジャックは、艦内の唯一の生存者ルーニー軍曹に協力を求め、自らビエルコの阻止に立ち上がる。だが、ミサイルは既に発射までのカウントダウンを始めていた」(FOX・HPより)

 見どころはやはりミサイル発射阻止。
 いくつか枷がある。
 まずは時間。
 ミサイル発射までの限られた時間で阻止しなければならない。
 次にルーニー軍曹。
 ルーニーは技術屋で戦闘の訓練は受けていない。
 だが、ジャックたちを潜水艦の中に入れるためには敵を倒さなければならない。
 「24」にはたびたび民間人が出て来るが、自分の弱さと戦って敵を倒さなければならないというシチュエーションが多い。

 以上が枷。
 ルーニーは仕事を成し遂げ、ジャックたちは潜水艦での戦闘に入るが、勝敗は地の利。潜水艦の構造を知っているルーニーが反対側に陽動にまわり、ビエルコを倒した。
 そしてミサイル発射のプログラムも解除。
 ジャックはさらにこんな行動も取る。
 協力したら助けるという約束を破ってヘンダーソンを射殺するのだ。
 約束を破るという昔のヒーローなら許されない行動をジャックはとる。
 パーマーやトニーを殺された怒りがそうさせたのだ。
 ジャックは欺き合うのが当然の世界に生きている。
 騙してでも利用できるものは利用する世界。
 きれいごとを言っていては事件は解決しないし、自分がやられてしまう世界。
 そこには騎士の様な公明正大さもなければ、007の様な華麗さもない。
 この辺がジャックを新しいヒーローにしている。
 しかしジャックのしてきたことの報いはキムを失ったことや今回(シーズンⅤ)のラストのように報いを受けるのだが。
 その辺、「24」の作者はクールだ。

 第24話(6:00)はいよいよ最終話。

 大統領ローガンの罪を問う。
 協力者は補佐官のマイク、SSのアーロン、そして大統領夫人のマーサ。
 ジャックはパーマーの追悼式に向かうローガンのヘリコプターを奪い、ローガンを拷問、自供を迫るが、大統領は口を割らない。
 ジャックは逮捕されてしまう。
 真相はこのまま闇に葬られてしまうのか?

 パーマーの追悼式で哀悼の演説をするローガン。
 その言葉のひとつひとつが欺瞞に満ちていることが視聴者に伝わって来る。
 しかし、そこに大逆転のウルトラCが!
 ドラマにはやはり最高の舞台が必要だ。
 今回の場合は全国民が注目している追悼式。
 ローガンにとってはある意味晴れ舞台。
 そこがローガンの権力失墜の場所になる。
 これがジャックが拷問した印刷工場跡では絵にならない。

 さてラスト。
 事件はすべて解決してオードリーとキスをするジャック。
 そこにキムから電話が来て。

 シーズンⅥがはやく見たい。

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全日本フィギュアスケート選手権

2006年12月29日 | スポーツ
 フィギュアスケートというスポーツは面白い。
 対決でありながら、戦う者どうしが身体をぶつけ合ったりすることはない。
 したがって要求されるのは、それまでに積み上げてきた個人の技量と精神力だ。
 ドラマ「のだめカンタービレ」では音楽コンクールのシーンがあったが、競う形式はそれに似ている。
 芸術度・技を競うという点でも共通している。
 「のだめ」のプロデューサーは、こんなフィギュア人気からヒントを得て「のだめ」のドラマ化を考えたのではないか?(もちろん原作人気もすごいのだが)
 一方、「鉄板少女アカネ」が古くさかったのは、「料理の鉄人」をそのままドラマでやってしまったこと。「鉄人」は10年前のブームだった。
 この様に考えてみると、世の中で注目を集めているものには共通点があることがわかる。

 キャラクターという点でもそうだ。
 「のだめ」には多彩なキャラクターが登場するが、全日本フィギュアもそう。
 浅田真央、安藤美姫、村主章枝、恩田見栄、中野友加里、浅田舞。
 バレーボールもそうだったが、フジテレビはスポーツ選手をヒロイン、ヒーローに育てあげるのがうまい。
 そして全日本フィギュアのメイン・ヒロインと言えば、浅田真央か?
 彼女のあどけなさ、さわやかさはヒロインの素質十分。
 おまけに天才と来ている。
 そして完璧な天才なら自分からは程遠い人と視聴者は距離をおいてしまうが、思わず応援したくなってしまう不安定さも持ち合わせている。(そういえば、天才のだめはコンクールで精神を乱され、演奏がメチャクチャになったことがあったっけ)
 さらに安藤ら先輩たちや姉・舞とのドラマもある。
 この様に考えてみると、来年ドラマでやって人気を得るヒロインとは、浅田真央の様なヒロインか?


★追記1
 ショートプログラムでは演技の構成が決められている。
 選手たちは、この決められた構成に基づいて演技をして点を競う。
 これも面白い競技形式だと思った。
 見ている者にも選手それぞれの違いがわかりやすい。

★追記2
 解説者の人物配置も面白かった。
 どちらかというと甘いコメントの多い国分太一。
 それに対照的な八木沼純子の辛口のコメント。
 荒川静香は中立・客観的なコメント。
 まさに三者三様。

 荒川静香のコメントは、無駄がなくてきっちりしていて小気味いい。
 彼女はきっとそういう性格なのだろう。

 国分太一は少しかわいそうだ。
 ボケても誰も突っ込んでくれない。
「ショパンは真央ちゃんのために曲を作ったんですかね?」
 シーーン……。
 こんなシーンもドラマで見てみたい。

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3日で運がよくなる「そうじ力」

2006年12月28日 | エッセイ・評論
 年末、大掃除。
 今回は掃除の本を。「3日で運がよくなるそうじ力」(舛田光洋・著 王様文庫)

 基本的な考え方はこうだ。
「ゴミやガラクタ、不要品などはマイナスエネルギーを発する要因。
 マイナスを取り除き、プラスを引きよせよう」

 捨てる時に必要・不必要を決める判断基準は何か?
★元カレ・元カノにもらった思い出の品など過去に関わるもの。
 これで気分がハッピーになるならいいが、そうならない物は捨てる。
★読まない雑誌、使い古しの化粧品、食べ残しのお菓子、何年も見ていないビデオなど。
 いわゆる「もったいない」と思って捨てられないもの。
 いつのまにかたまった物は日々のパワーを奪っていく。
 食べ残しのお菓子を見て、元気になれるか?
 確かに新しく買ってきたお菓子の方がワクワクする。
★いつか使うもの。
 いつかとは未来。いつか使うものを目にすることで、現在に対してプレッシャーが。今を生きるためだけのものを残す。

 結局、「そこにあって自分のパワーを奪う物は捨てなさい」ということらしい。
 思い出の品でもパワーを与えてくれるものは残しなさいということらしい。
 なるほど。
 確かにマイナスの品に埋もれて、プラスの品が見失われているということもある。
 過去ではなく未来に生きた方がワクワクする。
 未来に関わるものを置けるスペースがある方がワクワクする。
 しかし、そうは言ってもなかなか捨てられないもの。
 そんな時にはこんな発想を持てという。

「ひとつ捨てるごとに、プラスがひとつたまっていくイメージを持つ」

 なるほど。
 その他にもこの本では、こんな発想が書かれている。
「掃除をすることで、結局は自分を好きになれる」
 確かにそうじの出来るきちんとした自分の方が、だらしない自分より好きになれる気がする。

 最後に本の整理について書かれていることを。
「情報は自分で使ってこそ意味があります。必要のないもの、役目の終わったものは排除して、新しく自分の栄養になる本でいっぱいにしましょう」
 整理のポイントについてはこう書かれている。
★スペースに合わせて保有する。
 本棚に置けない以上の本は持たない。
★定期的に本を動かす。
 こうすることにより何年も手をつけていない本がないようにする。

 さて、これから大掃除を始めます。

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死の接吻 アイラ・レヴィン

2006年12月27日 | 小説
 アイラ・レヴィンの「死の接吻」。
 1953年に出版されたサスペンス・ミステリーの古典だが、おしゃれな表現形式でグイグイ読ませていく。

 まず「彼」という表現形式。
 犯人は「彼」という形で描かれる。
 これは犯行を決心する時の描写。
「これは純然たる思惟の域を出ないものだった。もう少し細部の点を検討しようと思った。しかし、そのレストランを出て街を戻っていく時の彼の足取りはしっかりして、確信に満ちた不安のないものになっていた」
 思いつきだった殺人計画を実行する決心する彼。
 怖ろしいシーンだが、ここで特筆すべきは「彼」で表現されているため、読者には犯人が誰だかわからないということだ。
 作品中にはメインで3人の男性が出て来る。彼らは皆怪しい。
 読者は「彼」とは誰なのだろうと興味を引かれるわけだ。
 映像では出来ない面白い仕掛けだ。

 構成も気が利いている。
 物語は3ブロックに分かれている。
 「ドロシイ」「エレン」「マリオン」
 いずれも女性の名。しかも3姉妹の名だ。
 犯人は彼女らの父親の財産を狙い、三姉妹と結婚しようとしている。
 犯人はその目的のため三姉妹に近づくわけだが、ドロシイが妊娠したことから歯車が狂い出す。
 妊娠したドロシイはふしだらな娘として父親に勘当される。
 それでは財産が得られないため、彼はドロシイを殺すのだ。
 そしてエレン。
 彼女はドロシイの死に疑いを持ち、捜査を始めた。
 そして彼に迫る証拠を得たため、殺されてしまう。
 最後に残ったのはマリオンだ。
 犯人はドロシイ、エレンからマリオンの好みを聞き出していたから、マリオンは彼を自分の理解者だと思い、恋に落ちてしまう。
 そして……。
 「ドロシイ」「エレン」「マリオン」
 この事件、キャラクターによる構成はシンプルだが、それが逆に小気味いい。
 三幕劇の舞台を見ている様だ。

 そして文章。
 基本的には短い文章の積み重ねで書かれている作品だが、同じ意味のことを何度も言い換えている所に作家の筆力を感じる。
 以下はドロシイは犯人の渡した毒薬(ドロシイは別の薬だと思っている)を飲まずに学校にやって来たシーン。
 今頃は自室で死んでいるだろうと思っていた彼はドロシイを見て驚愕する。
「ショックが、溶岩の流れの様な熱気が。全身をつらぬいた。思わず腰をあげかけて、全身の血が顔に噴き上がり、胸がじいんと凍りついた。冷や汗が噴き出して何百万とも知れぬ毛虫のように這いまわった」
「ああ、畜生! こいつ、あの錠剤をのまなかったな! のめなかったんだ! 嘘をつきやがった! 畜生! 嘘つき牝犬め!」

 同じ意味の文章を積み重ねることで「彼」の混乱が伝わってくる。
 こんな描写もある。
 犯人探しをしているエレンが犯人候補のふたりに行き着いた時の描写だ。
「ふたりともブロンドだった。ふたりとも青い眼をしている。ふたりとも美貌だった」
 これは映画のカット割りを見ている様な文章。
 事実を積み重ねて描写していくことで、このふたりが犯人であると思えてくる。

 この様にアイラ・レヴィンの「死の接吻」は小説としての面白さと共に、様々な小説のテクニックを見てとれる。
 作家志望の方にはぜひご一読いただきたい作品だ。
 
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のだめカンタービレ 最終話

2006年12月26日 | その他ドラマ
 人は足りない所を互いに補い合うもの。

 千秋(玉木宏)は音楽には真摯に向き合えるが、人には向き合えない人間だった。「俺様」で人をいつも高みから見ている。心を開くということがない。
 のだめ(上野樹里)は人には真摯に向き合えるが、音楽には向き合えない人間だった。半ば勘違いで千秋の心にどんどん入ってくる。一方、音楽に関しては自分なんて大したことはないと思っている。子供時代のトラウマで真摯に向き合うことを拒絶している。

 こんなふたりが出会って変わっていった。

 千秋はのだめに心の扉をこじ開けられていき、様々な人に出会った。
 Sオケ、RSオケ……、人と出会い、鬱屈していた音楽への思いを表現する場を与えられた。
 人と出会い、様々なことを学んだ。
 それが最後のRS・クリスマス公演に結実する。
 オケのメンバーからは千秋に出会えたことを心から感謝している。

 のだめは千秋から音楽の素晴らしさを学んだ。
 音楽と楽譜と真摯に向き合うことで、こんなに音楽は素晴らしいものになる。
 人を感動させられる。
 自分もピアノでそんな素晴らしい音楽を表現してみたい。

 ふたりはお互いの足りない所を補い合って、成長していった。
 いいカップル、いいコンビである。
 こんなふたりが将来どんなピアノ協奏曲を紡ぎ出すか楽しみである。

 それにしてもタクシーでのすれ違いのシーンからのだめの家でのシーンまでの流れは楽しかった。
 ギャグのネタでしかなかった長距離タクシーが思わぬ小道具となって、おしゃれな出会いのシーンを作った。
「俺様を二度振るなんて許さない」
 千秋らしい告白?のせりふ。

 普通の恋愛ドラマではここで終わるわけだが、のだめは違う。
 そこにのだめの父親が船で通り過ぎる。
 次のシーンではのだめの家族はすっかり盛り上がって。
 弟は千秋のことを「お兄さん」と呼ぶ。
 ロマンチックで感動的なシーンは別の視点で見れば恥ずかしいもの。
 恐らくこの作者はとてもシャイなのだろう。
 その恥ずかしさを最大限にふくらませてギャグにした。
 このシャイな感覚がいい。

 音楽という素材。
 恋人どうしとも言えない微妙な関係。
 ロマンチックをギャグにする。
 そして人間成長の物語。
 「のだめカンタービレ」は、今後のドラマのあり方を示す新しい作品であったと思う。


※現在スパムTBが多く、TBを中止させていただいている状況です。すみません。

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24 シーズンⅤ 第21・22話

2006年12月25日 | テレビドラマ(海外)
 第21話(3:00)と第22話(4:00)のストーリーはこう。

 3:00
「機長の協力のもと、ジャックは録音データを奪還、空港へ着陸するよう手配する。だが、データが奪われたことを知ったグラハムは、VCI救難信号を偽装し、飛行機を撃墜するようローガン大統領に迫る。払うべき代償の大きさに一瞬たじろぎを見せるものの、大統領は保身のためにF-18戦闘機に撃墜の許可を出すが」(FOX・HPより)

 4:00
「マイルズの陰謀により、司法長官に聞かせる録音データの内容が消去されてしまった! 唯一の証拠を失い呆然とするジャックらのもとに、追い討ちをかけるようにビエルコ逃亡の知らせが入る。しかも新たなテロ攻撃を仕掛けてくる可能性があるというのだ。一方、勝利を確信したローガン大統領は、ピアースとジャックを始末するための手筈を整える」(FOX・HPより)

 見どころは次の3点。

★航空機撃墜
 VCI救難信号とは航空機がハイジャックされ、建物に激突する自爆テロが想定される場合、その航空機を撃墜していいという法律。
 ローガンは証拠を隠滅するため、VCI救難信号が出ているとしジャックの乗った航空機を撃墜させようとする。
 ここで面白いのは、ローガン、大統領補佐官のマイク、撃墜の指揮を執る空軍のグラハムの三人三様の描写だ。
 グラハムはVCI救難信号に基づき撃墜をローガンに進言する。
 一方、マイク。
 「ジャック・バウアーには建物に激突させるようなテロを行う理由がない」と反対する。
 ローガンは苦渋の選択の演技をして、撃墜を許可する。
 その情報を聞いたジャックは撃墜される前に航空機を着陸させようとする。
 飛行場では間に合わないので、外出禁止令で車のいないハイウェイを滑走路にして。
 タイムサスペンス。
 まさに手に汗握る攻防だ。
 そしてローガン、マイク、グラハム。
 ジャックがハイウェイに着陸しているのを把握したグラハムは前言を撤回。
 自爆テロの可能性がなくなったため、撃墜を中止する様に進言する。
 ローガンは中止されては困る。
 あくまで強行しようとするが、マイク、グラハムが語気を強くして反対する。
 そして仕方なく中止命令を出すローガン。

 「テロを未然に防ぐこと」「人命を守ること」、その職務に忠実なグラハムと別の思惑で航空機を撃墜したいと思っているローガンの対比が面白い。
 作者はグラハムだけではローガンに撃墜を押し切られてしまうと思ったのか、マイクも入れて2対1で命令中止を迫らせた。
 このマイクの立ち位置もいい。

★ローガンの自殺
 ジャックがCTUに証拠のテープを持ち込み、司法長官への提示が迫っている。
 裁判にかけられる大統領。
 ローガンは自殺を決意する。
 妻のマーサに別れを告げ、共に暗躍した仲間には今回の計画は国益のためにしたことで自分は間違っていないということを確認して、銃を自分の頭に向ける。
 悪の最期。
 しかし、ここで急展開。
 CTUのマイルズが寝返ったのだ。
 証拠のテープを自分が消去するというマイルズ。
 ローガンは出世を保証して自殺をやめる。
 思わぬ伏兵。
 出世という思わぬ人間ドラマから事件が展開する。
 これも「24」の魅力だ。

★ロシア潜水艦乗っ取り
 テロリスト・ビエルコに残された神経ガスは残り1個。
 これをどの様に使うか?
 ジャックはヘンダーソンをスパイに使い、情報ブローカーからビエルコに売った情報を得ようとする。(この情報ブローカーという存在、「24」では事件を動かす手段として、たびたび使われている)
 そしてこれもよく使われる方法だが、ブローカーのパソコンから情報を引き出す。
 そして得た情報とは?
 原子力潜水艦の乗っ取り。
 潜水艦のミサイルによる攻撃。
 なるほど、これであれば神経ガス1個で十分に成し遂げられる。
 アイデア。
 アクション作品には観客をあっと言わせるアイデアが必要だ。

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ジョン・レノン 「イマジン」

2006年12月24日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 ジョン・レノンのドキュメンタリー映画「イマジン」。

 冒頭はビートルズへの熱狂から始まる。
 観客たちは熱狂を通り越したトランス状態、気絶する女性多数。
 当時、ビートルズがどの様な存在であったかがうかがえる。
 物議をかもしたというジョンの発言「キリスト教は滅びるだろう。僕らはキリストより人気がある」もなるほどと思う。
 ビートルズはその様な存在だったから、その反動もすごかった。
 先程のキリスト教発言では、熱心なクリスチャンからレコードを割る抗議デモ、日本の公演では若者を堕落させるとして右翼が騒いだという。
 ジョンたちは自分たちに対する熱狂と反動の両方を引き受けた。
 普通の人間では耐えられないプレッシャー。
 それが出来るからスーパースターなのであるが、やはりジョンも弱音を吐いて「HELP」を作った。また「ドラッグ」に走った。

 そんなジョン・レノンが強くなったのは、オノ・ヨーコと出会ってからだ。
 世間の批判もヨーコといっしょなら耐えられる。
 ヨーコの思想に触発されて、ジョンは次々とメッセージを世界に向けて発信する。
 平和のベッドイン。
 ふたりのヌード写真。
 反ベトナム戦争。
 戦争ではなく愛。
 その過激なメッセージを伝える手段に当然、良識派からは非難を浴びる。(作品中ではベッドインしているふたりに保守派の漫画家が意見をしに来る。その議論がふたりへの世間の批判を象徴している)
 ジョンはヨーコとふたりでそれを引き受けて、メッセージを発し続けた。
 それでも世間はふたりをどんどん孤立させていき、ポール・マッカトニーまでが批判にまわる。
 ジョンは最後にはすべてを否定し、ポールには「君のしたことはイエスタデーだけだ」と言い、信じられるのは「自分とヨーコ」だけだと歌にする。

 時代と常に戦ってきたジョン。
 そのエネルギーは計り知れない。
 普通なら負けてしまう。(この辺は実際にベッドインの映像を見ると皮膚感覚で伝わってくる)
 それでも彼はヨーコと共に立ち向かった。
 彼は常に誰かが必要で、誰かに愛されていないと駄目な人間だった(「STAND BY ME」)が、傍らにヨーコがいて、彼女がいたから戦えた。
 「僕は反抗的な人間だが、誰からも愛されたい人間だ」とジョンは語っている。
 その辺の弱さもジョンの魅力だ。

 そしてジョンが発し続けたメッセージ。
 「愛」。
 彼は自分のこと、ヨーコのこと、息子のことなどプライベートなことをよく歌にしたが、そこで表現されているのも「愛」。
 彼の先妻がインタビューで語った様に「彼は素直に愛を表現した」。
 ベッドインもその表現のひとつ。
 彼の身体の中に「愛」が溢れていたから、すべての歌や行動に「愛」が表現されている。
 ここには表現者と作品の関係が如実に表れている。

 そんな愛に溢れたジョンが時代と格闘して搾り出した言葉が「イマジン」。
 だからこの曲には、大きな力がある。

 それにしてもジョンが格闘し続けた時代とは、どの様な時代なのだろう?
 「愛」という今では巷に溢れているメッセージを発し続けたジョンが非難された時代とはどの様なものだったのだろう?(キリストも愛を説いて迫害されたことを考えると興味深い)
 そして今の時代、私たちはどの様な言葉で時代と戦っていかなくてはならないのだろう?

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メッセージ・イン・ア・ボトル

2006年12月23日 | 洋画
「メッセージ・イン・ア・ボトル」物語はこう。

「シカゴの新聞社で調査員として働くテリーサ(ロビン・ライト・ペン)は、休暇中の海岸でビン入りの手紙を拾う。そこに書かれていたのは、いまは亡き妻に贈られた愛のメッセージ。さまざまな手がかりからビンを流したと思われる男性をつきとめたテリーサは、彼ギャレット(ケビン・コスナー)を訪ねてノースカロライナへ。手紙を見て来たことを切り出せないまま、ギャレットと愛を深めていく。しかし、ついにギャレットが手紙の件を知ってしまう日が来た……」(ALLCINEMA・ONLINEより)

 この作品、せりふがいい。

★ギャレットは無口。テリーサに親しみを感じるが、亡くした妻のキャサリンのことを今でも思い、心を閉ざしている彼はこんなことを言う。
「君と出会うまで誰かと親しくなるなんてこと考えなかった。でも。今でも彼女(キャサリン)を感じるんだ。君には正直でいたい」

★そんなギャレットにテリーサも悩む。
「彼の宝物を動かした。私には居場所がないのよ」
「どこも彼女(キャサリン)の面影だらけ。彼女は生きているのよ」

★そしてふたりともとても無器用だ。
 海の男のギャレットがそうなのはわかるが(彼はテリーサの嫌いなチョコレートをプレゼントする)、都会派のシカゴ・トリビューンの記者であるテリーサもそうなのが微笑ましい。
 シカゴに戻る時、テリーサはギャレットに言う。
「住むにはいい場所よね。あ、これは脅しじゃないのよ」
 住むにはいい場所、意味深だ。
 ギャレットがシカゴに来た時は、息子のジャイソンに鏡を見て言う。
「お母さん、きれい?」
 こんな会話もする。
テリーサ「あの子(息子)は明日友だちの家に泊まるの」
ギャレット「その意味は?」
テリーサ「もう、私の生活はロマンチックからは程遠いわね」

★ふたりが一歩踏み出す時はこんな会話をする。
テリーサ「質問。あれは一時のお楽しみ?それとも何かの始まり?」
ギャレット「今まで大切に思ったのはふたりだけだ。キャサリン、そして都会の女性。彼女はズケズケ物を言う」
 ギャレットもたまには気の利いたことを言う。

★そんなふたりを見守る周囲の人間がいい。
 ギャレットの父親ドッジ(ポール・ニューマン)はなかなか進展しないふたりの思いを応援する。
「喧嘩をしたのは、いい徴候だ」
「壁なんか打ち破れ。居場所を作れ」
「俺が150若かったら、彼女を放っておかなかったね」
 テリーサの新聞社にギャレットが遊びに来た時、同僚はメモを渡す。
 メモには「いい男ね」と書かれている。
 上司のチャーリーはテリーサのことを好きだったのだろうか、ギャレットを評してこう言う。
「彼はとても幸運な男だ」

★そして、いよいよクライマックス。
 ギャレットはキャサリンが夢見ていたヨットを自力で造り始める。
 自分の想いを込めて造った船。
 その進水式の時、ギャレットはこう挨拶する。
「キャサリン。彼女が共にいてくれることを。いつの日も」
 船の名はキャサリン。
 ギャレットは「彼女にいつも共にいてほしい」という意味を込めて、この船を造った。
 その挨拶を聞いてテレーサはやはり居場所がないと思ってしまう。
「自分と自分の帰るべき家を見失わないように」というメッセージを残して、シカゴに戻ってしまう。
 そしてテリーサが去り、ギャレットはこう決心する。
「思い出の中に生きようと思った。でも、心を開けば人生は再び始まることを知った。これから彼女(テリーサ)を捕まえにいく。たとえ失敗しても、ふたりを愛せたのだから、成功だ」

 以下、ネタバレになってしまうので、ふたりの恋の結末(大変哀しい)は書かないが、「メッセージ・イン・ア・ボトル」は無器用な男女の愛を描いた穏やかな作品である。


★追記
 この作品では死んだキャサリンが、ふたりの恋の橋渡しをする。
 キャサリンもビンにメッセージを込めて海に流していた。
 その書かれていたメッセージとは……。
「私たちの愛を知って、すべての人が癒されますように。怒りの気持ちがなくなりますように」

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24 シーズンⅤ 第19・20話

2006年12月22日 | テレビドラマ(海外)
 第19話(1:00)・第20話(2:00)

 ストーリーは次のとおり。
★第19話
「オードリーの命と引き換えに録音データがヘンダーソンの手に渡った。ジャックはCTUから逃亡したクロエの協力のもと、衛星を使ってヘンダーソンを追跡し拘束に成功する。だが、ヘラー長官を狙っているヘンダーソンの仲間から、解放しなければ長官を殺害すると脅迫される。状況を把握したヘラー長官は、究極の犠牲を払う決断をするが……」(FOX・HPより)
★第20話
「CTUでは逃亡したクロエの居所を察知、拘束チームが派遣される。大統領が陰謀へ関与していることを確信したカレンは、密かにクロエの逃亡を手助けし、ジャックを支援することを決意する。一方、録音データを追って外交用のチャーター機に乗り込んだジャックは、航空保安官を気絶させ、ヘンダーソンと接点のある搭乗者ハンス・マイヤーという男を尋問する」(FOX・HPより)

 「24」の魅力は、腹のさぐり合い・心理戦にある。
 これはどんなアクションシーンより物語を面白くする。
 今回は大統領のテロへの関与をめぐる側近たちの腹のさぐり合い。

 CTUの支部長カレン・ヘイズは大統領の命令に不信感を持っている。
 ヘンダーソンよりもジャックを拘束することを優先しろという命令。
 理由はパーマー暗殺にジャックが関わっているからだというが、その根拠が未だに示されない。
 彼女は様々な情報の断片を繋ぎ合わせていき、状況を把握しようとする。
 決定的だったのは分析官シェリーの言葉だ。
 逃げたクロエはシェリーに言った。
「今回のテロには大統領のローガンが関わっている」
 証拠が提示されるまでは信じないが、カレンは影で証拠を手に入れようとしているジャックたちを支援する決心をする。
 大統領補佐官のマイクも疑念を抱いている。
 大統領は何かを隠している。
 そう直感するが、何を隠しているのかわからない。
 しかし、大統領を中心に何かが動いている。
 そのもやもやとした状況をマイクは「気持ちの悪い夜」と表現する。
 そして、「私は主席補佐官だ。もし国の安全に関わる事態が起きているのなら、知る権利がある」と大統領に詰め寄る。

 このマイクやカレンが感じるもやもやは同時に視聴者のもやもやでもある。
 視聴者はこのもやもやの真相を知っているから、彼らに早く気づいてもらい、ジャックを助けてほしいと思っている。
 視聴者のもやもやを積み重ねていき、最後にクリアにすること。
 ここにドラマのカタルシスが生まれるのだが、「24」はこの作劇がうまい。

 心理戦と言えば、ヘンダーソンは巧みだ。
 人質になることを潔しとせず、車ごと湖に飛び込むヘラー国防長官。
 ヘンダーソンは娘のオードリーを誘惑する。
「車の中には酸素がある。今、軍や救急に連絡すれば、父親は助かるかもしれない」
 オードリーが携帯で連絡すれば、仲間が傍受して自分を助けに来る。
 それがヘンダーソンの作戦だが、オードリーもそのことを知っているから電話が出来ない。
 オードリーは激しく葛藤する。
 
 この様に巧みに描かれる「24」の心理戦。
 当然、カレンやマイクに気づかせないようにする敵の対応もあるし、上にゴマをすることしか頭になく邪魔をするカレンの部下マイルズの様な無意識の敵もいる。
 これらが複雑に絡み合って心理戦はどんどん面白くなる。


★追記
 今回は「24」では珍しいギャグシーンがあった。
 CTUに追われ、ホテルのロビーでジャックのサポートをすることにあったクロエ。
 そこでに一夜を共にしたい酔っぱらいの男が絡んでくる。
 うるさくてしょうがないクロエは、スタンガンで酔っぱらいを気絶させる。
 しかも酔っぱらいが目を覚ますともう一度。
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