夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『メルシィ!人生』

2003年09月14日 | 映画(ま行)
『メルシィ!人生』(原題:Le Placard)
監督:フランシル・ヴェベール
出演:ダニエル・オートゥイユ,ジェラール・ドパルデュー,
   ディエリー・レルミット,ミシェール・ラロック他

ピニョンはコンドーム製造販売会社の経理部社員。
勤続20年になる。
別れた美人の妻と高校生の息子には見下されている。

ある日、自分がクビになりそうだという話を偶然耳にしてしまう。
落ち込むピニョンはマンションから身投げを図るが、
隣に越してきたばかりの老人に見とがめられる。

老人にこれまでの人生を打ち明けるピニョン。
すると、老人はクビを免れる方法があるという。
その方法とは、自分がゲイだとカミングアウトすることだった。
ゲイを解雇すると性差別だと訴えられるから、
決して君をクビにはできないはずだと。

元企業カウンセラーだったという老人は、
ピニョンが尻丸出しで男性と踊る姿を合成写真で作成し、
彼の勤務先に匿名で郵送する。

ゲイのふりなんかできないというピニョンに、老人は言う。
「ふりなんかしなくていい。気弱で平凡な君のままで。
君が変わるんじゃない。まわりが変わるんだ」。
実際、彼は何も変わっていないのに、
同僚は彼にちがう眼差しを向けるようになる。
前から仕草や歩き方がそれっぽいと思っていたなどと。

計画どおり、クビはつながる。
ゲイのパレードに山車を出すことになった会社は、
ピニョンを乗せることに決定。
しぶしぶ承諾した彼だが、テレビ中継を見ていた息子が電話してくる。
「お父さんのことをいままで退屈だと思ってたけど、かっこいいよ」。

影の薄かったピニョンが、ゲイだと嘘をつくことによってどんどん存在感を増し、
また、自分自身も変わってゆくことに成功します。
ピニョンの策略に気づいた辣腕女性経理部長や、
マッチョな広報部長がそろっておもしろい。
広報部長は名優ジェラール・ドパルデューが演じていますが、
ゲイ嫌いのはずが、差別主義者がクビになることを恐れ、
ピニョンの機嫌をとっているうちに
本当にピニョンを好きになってしまうところがなんとも言えず愛らしいです。

最後のピニョンの台詞もキマってます。
嘘に気づいた社長が「困った人だ」と言うのに対して。
「僕はいままで“透明人間”でした。
“困った人”というのは、僕にとっては昇進です」。

同監督の『奇人たちの晩餐会』(1998)もお薦め。
バカをあざ笑う人がいちばんバカだという、
こちらも良質のコメディです。

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