著者は今年1月、95歳で亡くなった作家。
子供のころ大連で過ごし、その時のことを住んでいたものにしか分からないことを軸として、後から調べたことで補強しつつ書いたもの。僅か三年前の本なので、90歳を超えての記憶力、文章力にただただ脱帽である。
一言でいえば、戦前の大連は日本人にとっては豊かで自由な土地。また大陸の入り口なので人の往来も多く、国際色豊かな美しい街。そこでの暮らしが楽しく回顧されている。
著者の一家は敗戦前に東京に引き上げ、著者は同人雑誌を足がかりに、満州のことが書ける作家として世に出る。出版社の肝いりで内蒙古やロシア国境近くまで女一人で旅行したときの様子も面白い。
戦局はとうに不利になっているのに、満州の日本人の間ではそう逼迫した感じもなく、著者は大した危険も感じずに旅をしている。中国大陸は広い。前線はどこか遠い所にあり、大連に住む日本人は最後まで、大丈夫とたかをくくっていたのではないだろうか。
この中では甘粕正彦元大尉と船に同乗したり、川島芳子を何度も大連の町で見かけたと、歴史の生き証人のような話も面白かった。
ただ一つ不満を言えば、戦後、満洲国成立のいきさつや、無理な戦線拡大がわかり、また民間人が苦労して引き揚げてきたことなどもあったはずなのに、著者はどう感じたのかの記載が一切なかったこと。
人はいろいろな考えをしていいわけだから、是とするか否とするかは個人の自由。そこのところを正直に書いてもらえば、この本も時間の奥行きが感じられたと思う。残念。
豊かな生活も他国人の犠牲の上に成り立っていたのであれば長く続くはずがない。日露戦争から日本の敗戦まで僅か40年。大連は、遅れて世界デビューした日本帝国主義の仇花とあえて言っておこう。
今になって観光資源としての日本統治時代の遺跡、建物の数々。激安ツアーで結局は中国の旅行会社にぼったくられるのは先人の罪滅ぼしかもしれません。トホホホ。逞しき中国人のぼったくりの数々についてはいずれまた。
子供のころ大連で過ごし、その時のことを住んでいたものにしか分からないことを軸として、後から調べたことで補強しつつ書いたもの。僅か三年前の本なので、90歳を超えての記憶力、文章力にただただ脱帽である。
一言でいえば、戦前の大連は日本人にとっては豊かで自由な土地。また大陸の入り口なので人の往来も多く、国際色豊かな美しい街。そこでの暮らしが楽しく回顧されている。
著者の一家は敗戦前に東京に引き上げ、著者は同人雑誌を足がかりに、満州のことが書ける作家として世に出る。出版社の肝いりで内蒙古やロシア国境近くまで女一人で旅行したときの様子も面白い。
戦局はとうに不利になっているのに、満州の日本人の間ではそう逼迫した感じもなく、著者は大した危険も感じずに旅をしている。中国大陸は広い。前線はどこか遠い所にあり、大連に住む日本人は最後まで、大丈夫とたかをくくっていたのではないだろうか。
この中では甘粕正彦元大尉と船に同乗したり、川島芳子を何度も大連の町で見かけたと、歴史の生き証人のような話も面白かった。
ただ一つ不満を言えば、戦後、満洲国成立のいきさつや、無理な戦線拡大がわかり、また民間人が苦労して引き揚げてきたことなどもあったはずなのに、著者はどう感じたのかの記載が一切なかったこと。
人はいろいろな考えをしていいわけだから、是とするか否とするかは個人の自由。そこのところを正直に書いてもらえば、この本も時間の奥行きが感じられたと思う。残念。
豊かな生活も他国人の犠牲の上に成り立っていたのであれば長く続くはずがない。日露戦争から日本の敗戦まで僅か40年。大連は、遅れて世界デビューした日本帝国主義の仇花とあえて言っておこう。
今になって観光資源としての日本統治時代の遺跡、建物の数々。激安ツアーで結局は中国の旅行会社にぼったくられるのは先人の罪滅ぼしかもしれません。トホホホ。逞しき中国人のぼったくりの数々についてはいずれまた。