私は寝る前に本を読まないとどうしても眠れない人で、その夜に読む本がないと本当に困るのです。旅行も軽い文庫本必携。それで眠るまで明かりをつけるので、できれば一人部屋で。
いつの頃からこうなったのかなあ。
20年以上前、自分の身内といろいろあって重度の不眠症になってからかな。あの頃は睡眠導入剤が手放せなかった。今でも、眠る前に一瞬、眠れるかなあと心配している。なるだけ込み入った話の本がいいので、今回はこちら。
私の能力では込み入ったと言ってもこの程度ですが。
本屋へ行く時間がなくて、左の本は近くの公民館で借りてくる。
知らない出版社、知らない著者。全然期待してなかったけど、とてもいい本でした。
石川達三から2020年の宇佐美りんまで、その時代をよく表した23の作品について、文芸評論家と日本文学研究家が対談している。
芥川賞の作品はその当時話題になることが多いけど、時代を経て見れば、より深くその時代が理解できるのだと思った。
また選考委員は新しい文学を世に出すために、自分の文学観を掛けて真剣に選んでいる。その論評については全部触れているわけではないけれど、選考委員もまた自分のレベルを後の世に査定されている。
村上春樹の「1973年のピンボール」は受賞を逸したけれど、大江健三郎と丸谷才一、他一名が評価し、世界文学の中で作品を位置付けているそうで、学識と教養のなせる業だろうと。
この辺りが読んでいて快感。この本にはこんな場面が度々出てきて面白い。
妊娠した姉にグレープフルーツを食べさせて、奇形の子を産ませる妹の悪意を書いた作品に、三浦哲郎が小説以前のこととして拒否反応を示したのが、記憶に残っている。
妊娠初期、染色体異常を引き起こした原爆の影響なども知っているけれど、こういう話は読むと辛くなる人もいるので、難しいところです。
「三匹の蟹」に不倫はよくない、真面目に外国暮らしをしている人もいるなんて言った選者がいたと記憶しているけど、今から考えると何とも。
と、私自身もその時々の読書体験を思い出した。最近のは読んでないですが。
借りた本なので返さないといけないけど、自分用に買うかも。
右は昨夜から読み始めた本。写真は一度に二冊取ると手間が省けるという横着ぶり。